世界No.1シェフが手掛ける美食レストラン『CYCLE』がオープン!今話題の循環型レストランとは?

『CYCLE』「ビーツのカルパッチョ」(画像提供/グラナダ)

2500年前の埋もれ木を使用したサステナブルなインテリア シェフの愛する自然の雄大さと日本の伝統を融合させた店内の要となるのは、「神代木」と呼ばれる、何千年もの時を経て掘り出された木材だ。山形・秋田両県にまたがる鳥海山(…

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2019年にミシュランの3つ星を獲得し、同年に料理界のアカデミー賞ともいわれる「世界のベストレストラン50」で第1位に輝いたフランス『ミラズール』のシェフ、マウロ・コラグレコ氏がプロデュースする美食レストランが東京・大手町にある。2023年10月27日にオープンしたばかりのこの『CYCLE(スィークル)』は、近年話題の“循環型レストラン”。世界中を食べ歩く食通が「世界最高峰」と称するレストランの遺伝子を受け継いだ同店は、早くも話題の一軒となっている。

アフターコロナで注目を浴びる「循環型レストラン」が日本にも

『CYCLE』という店名は「循環」を意味するが、最近、この「循環型レストラン」が世界的に注目されているのをご存知だろうか。

「廃棄・汚染を出さない」「ローカルでオーガニックな食材を利用し続ける」「フードロスの削減に取り組む」など、社会へのネガティブ要素をできるだけ「ゼロ」に近づけ、環境に配慮しているレストランのことだ。

この環境対策で世界をリードするのは北欧諸国だが、日本でも“循環”を意識した店が続々と増えている。見た目の問題で売れ残る食材を使ったコースを提供する大阪の『Funachef(フナシェフ)』や、食べ残しを畑の堆肥にする岡山の『トラットリア ケナル』などがその一例と言える。

農園を併設し、シェフ自ら畑で野菜を育てる『PLANT(プラント)』(板橋区蓮根)など東京でもその動きは広まりつつある。ミシュラン3つ星の銀座の名店『L’OSIER(ロオジエ)』も、提携する生産者に環境再生型の農業を提案している。

『CYCLE(スィークル)』では、樹齢300年を超えるオリーブの木が、入口で出迎えてくれる

ユネスコ親善大使のシェフが抱える重要な役割

「土壌と生物多様性の保全」という目標を掲げて活動するコラグレコ氏は、2022年末に生物多様性のためのユネスコ親善大使に初めて指名されたシェフでもあり、「循環型レストラン」の担い手としてアイコン的な存在だ。

『CYCLE』においても関東近郊の食材や、スーパーなどの流通に乗りづらい古来種野菜(伝統野菜や在来種の総称)を利用し、ローカルでオーガニックな食材と、失われつつある食材の利用に努めている。

千葉県にあるオーガニック農場「苗目」と提携し、月に1回はCYCLEのヘッドシェフの宮本悠平氏自ら農園に入り、化学肥料や農薬を避けた自然農法でハーブや野菜などを栽培しているそうだ。

さらに、ストローやマドラー、ラップなど、自然分解されずに半永久的に残ってしまうプラスチックを使わないことで、環境への影響を最小限に抑えるよう心掛けている。

左から『CYCLE』のヘッドシェフ宮本悠平氏、マウロ・コラグレコ氏(画像提供/グラナダ)

2500年前の埋もれ木を使用したサステナブルなインテリア

シェフの愛する自然の雄大さと日本の伝統を融合させた店内の要となるのは、「神代木」と呼ばれる、何千年もの時を経て掘り出された木材だ。山形・秋田両県にまたがる鳥海山(ちょうかいさん)で 2500 年前に山体崩壊が起きた際の埋れ木をオブジェやテーブルに使用することで、インテリアにおいてもサステナブルなレストランであることを体現している。

鳥海山で 2500 年前に山体崩壊した際の埋れ木をオブジェやテーブルに使用した店内 (画像提供/グラナダ)

自然へのリスペクトと、循環するエネルギーを芸術的な料理で再現

月の満ち欠けに合わせて作物を栽培する「バイオダイナミック農法」の野菜を採用した同店では、この農法の4つの要素「根、葉、花、果実」をテーマに料理を展開。

タパス、料理5皿、デザート2皿、小菓子の「Symbiose」(26,400円)と、料理6皿の「Inspiration」(35,200円)の2つのコースを通して、自然への敬意と循環するエネルギーを芸術的な料理で表現していく。

「Inspiration」の料理の一例

食品ロスを再解釈した料理からコースがスタート

例えば、コースの初めに登場する「ウェルカムブイヨン」は、その日の料理に使用する野菜の皮や葉、茎から出る出汁で作られたもの。食品ロスを見直し、生命の種に変えるという試みを実践することで『CYCLE』の哲学を体現した一皿だ。金木犀や柚子の豊かな香りと、野菜本来の風味を生かした滋味深い味わいに、思わずほっとさせられる。

廃棄されるはずだった茎や根を生かした「ウェルカムブイヨン」

「根」「葉」「花」「果実」と名付けられた「種」のサイクルを実感できる4種のタパスにもぜひ注目してみてほしい。コクのあるオニオンピューレやアンチョビをチューブ状の生地に詰めた「根」は、植物の「誕生」を再現。新鮮な牡蠣にエストラゴンを合わせたカレー風味のコロッケは、「葉」と名付けられ、植物の「成長」を想起させる。

炙りシメ鯖にりんごやエシャロットクリーム、菊の花のピクルスをあしらった「花」は、その生き生きとした佇まいが「再生」を感じさせ、栗のはちみつを使ったフィナンシェが「果実」として「再誕生」をイメージさせてくれる。

「種」のサイクルを表現した、ユニークな4皿のタパス

大胆な表現で感動を呼んだ「ビーツのカルパッチョ」

そして、同店を語るうえで外せないのが『ミラズール』を象徴する看板料理の「ビーツのカルパッチョ」だ。ビーツ、クリーム、キャビアのみを使用したメニューは食材の種類だけでなく、調理方法も至ってシンプル。塩竈焼きすることでうま味がぎゅっと凝縮されたビーツに、ミルキーなクリームと芳醇な味わいのオシトラエキャビアを合わせ、食材そのもののよさを大胆に引き出している。

複雑な調理方法で勝負する料理も多い中、シンプルなアプローチでビーツの価値を高め、フランスで大きな感動を生んだ一皿。肉の大量消費社会へのアンチテーゼとも言える革新的な作品だ。

『ミラズール』のシグネチャーとして人気を誇る「ビーツのカルパッチョ」

「薔薇」と名づけられたメインディッシュは、同店と結びつきの強い、着色料・香料無添加の食用薔薇を販売する「奥出雲薔薇園」(島根県太田市)の香りからインスピレーションを得て作られた。

北海道の蝦夷鹿にリンゴと薔薇の香りを合わせたこちらは、通常はクラシックな重いソースで食べることの多い鹿に、酸味と甘みを兼ね備えたリンゴのソースや花の高貴な香りを組み合わせることで、最後まで軽やかに締めくくれる逸品となっている。

メインディッシュの「薔薇」(画像提供/グラナダ)

最後にコラグレコ氏からヘッドシェフに任命された宮本シェフに今後の展望を聞くと、『ミラズール』のことを引きながら次のように説明してくれた。『ミラズール』は、地中海に面した風光明媚な南仏の町「マントン」にある。

「食品の無駄を出さないレシピの開発、使い捨てのプラスチック製品の排除、店の消耗品は環境に配慮したものを選ぶなど、すでに取り組んでいることをこれからも継続していきたいですね。そして、フランスの『ミラズール』ではいつも自家農園から料理が始まっていました。日々変わる野菜の状況からメニューを考えるので、僕たちは野菜を起点に肉や魚などのメニューを考えるようにしているところが特徴的だと思っています。『CYCLE』でも農園を設けたので、今後も自ら畑に入り、変化を見ながら季節に寄り添った料理を提供していきたいです」

「セリのエマルジョン」

「肉」の大量消費は環境に大きな負担をかけることで知られている。そんな「肉」に重きを置くのではなく、自ら畑に身を置き、「野菜」を中心に料理を考えていく『CYCLE』のシェフたち。先進的な循環型レストランが示す姿は、変化し続ける今後のレストランシーンに大きな影響を与えていくに違いない。

文・写真/中村友美

【CYCLE(スィークル)】

[公式ホームページ]cyclerestaurant.com
[住所]東京都千代田区大手町1-2-1
[電話]03-6551-2885
[営業時間]17時~23時 (ラストオーダー20時)、週末・祝日11時半~15時(同13時)、18時~23時(同20時)
[休日]月曜日
[交通]地下鉄千代田線・丸ノ内線・半蔵門線・東西線・都営地下鉄三田線「大手町」駅C4、C5出口から直結

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