東京からほど近い蕎麦の里で味わう土地の蕎麦『手打蕎麦 ぐらの』@埼玉県鶴瀬
優秀な蕎麦産地として、多くの蕎麦店主から熱い眼差しを受けている埼玉県・三芳町。ここでは90年代から突如として蕎麦の栽培が始まった。とある農家が在来の蕎麦を育て始め、試行錯誤を繰り返して旨いと言われるまでになったのだ。
『ぐらの』はその三芳町からすぐの場所にある。店主の福原篤さんは蕎麦屋の2代目で、店を継いだ2002年に石臼挽き自家製粉、手打ちに変えた。そして「地元にこんなにおいしい蕎麦があることをもっと広めたい」と、主に三芳町産蕎麦を使う。
田舎せいろ 1122円
「色も香りもよく、何より粘りがあってコシが強い」と三芳在来の魅力を教えてくれた。福原さんは畑の手伝いにも出かけ、その魅力を引き出そうと研究を重ねてきた。近くの畑を見に行ってみると、青空の下にワイルドな蕎麦畑が広がっていた。「一列に撒いているので、風が抜けていい蕎麦に育ちます」と福原さん。
がっしりとした太打ちの「田舎せいろ」は挽きぐるみの二八だ。本節のカツオが香るやさしいツユが蕎麦の甘みをグッと引き立てる。プロが愛する三芳在来の畑を眺め、蕎麦を手繰る。これ、蕎麦好きにはたまらないプチ旅だ。
[住所]埼玉県ふじみ野市大井816-4
[電話]049-264-0337
[営業時間]11時~15時(14時半LO)
[休日]火・水
[交通]東武東上線鶴瀬駅またはふじみ野駅から車で9分
撮影/貝塚隆、取材/岡本ジュン
隠れた蕎麦処にのど越し抜群の田舎蕎麦あり『そば福』@奥秩父
ハードルが高いほど燃えるものである。秩父の山奥で見つけたこの蕎麦屋はまさに険しいハードルの向こうのご褒美だ。西武池袋駅から特急ラビューに乗ること約1時間20分。流れる景色の合間に目に入る川が透き通ってきたらもうそこは秩父だ。そこからさらに秩父の奥へ奥へと行くと、山に囲まれた小さな平家に辿り着く。
こんな辺鄙なところになぜ蕎麦屋がと思われるかもしれないが、周辺では昔から蕎麦の実が採れ、家庭で蕎麦を打っていたのだそう。同店の蕎麦は昔ながらの製法を引き継ぎ、手打で少し不揃い。そしてざらりとした食感のある六四の田舎蕎麦で提供する。なのに、のど越しのなんとなめらかなこと!
くるみ天ざる 1450円
しなやかなコシを歯に伝えながらつるりと腹に滑り落ちる。聞けば、粉を練る際に沸騰したお湯を使うことで粉と水分がよく馴染み、なめらかな蕎麦に仕上がるのだという。
東京の和食店で修業を積んだ店主が揚げる天ぷらだって負けてない。薄めの衣を短時間でさっくり揚げるので食感が軽く、7種もあるのに気付けば完食。はるばる来たのだからもっと味わえばよかった!とは思いつつ、次もまた、あっという間に食べてしまうんだろうなぁ。
[住所]埼玉県秩父市荒川贄川1311
[電話]0494-54-1473
[営業時間]火~木:11時半~15時(売り切れ次第終了)金・土:11時半~15時、17時~21時、日・祝:17時~21時(予約がある場合のみ)
[休日]月
[交通]秩父鉄道三峰口駅からタクシーで6分、もしくは小鹿町町営バス三峰口駅から古池下車で徒歩9分
撮影/鵜澤昭彦、取材/藤沢緑彩