『ほていや』@三軒茶屋
ラーメン(550円)
スッキリしつつコクがあり、ほんのりダシの風味があるスープをまずはすすって。麺がよく絡み全体にやさしい味
三茶で愛され続ける ほっこり感抜群の味
大正14年創業で現ご主人は三代目。3人の娘さんがチームワークも抜群に働くという何ともアットホームな雰囲気がいい。
創業当時からあるというラーメンは、まずスープが秀逸。鶏ガラで取るスープで焼豚も煮るゆえ豚肉からもエキスが。蕎麦屋の和風ダシも加わっている。きれいにしてほどよいコク。
ここに細めの縮れ麺がいい感じに絡む。ズズズっとやれば直球が投げ込まれた感じ。中華そばっていいなあってほっこりする。
「昔はストレート麺。和ダシも入れてなかったんだけどね」
という話で、徐々に改良された完成形がこの味だ。ぜひしみじみと味わっていただきたい。
カツカレーライス(950円)
こちらも大人気メニュー。肉たっぷり。実はここにもスープが使われ、旨みとスパイシーさのバランスが抜群。バクバクいけてしまうこと必至
左から、渡辺友子さん、原由美子さん、原直子さん
「心を込めてお迎えして心を込めて作ってます!」
[電話]03-3413-5701
[営業時間]11時45分~15時(14時半LO)、17時半~20時半(20時15分LO)
[休日]火、第4火・水
[交通]東急田園都市線三軒茶屋駅北口から徒歩7分
『朝日屋』@代々木上原
タンメン(800円)
ほどよくコクのあるスープの中に野菜やコマ肉の旨みが溶け出して一体化。麺の喉越しもいい。さっぱりめなホッとする味が愛されている。野菜はキャベツの代わりに白菜のことも
スープと馴染んだ野菜がたっぷり
創業は大正8年。「ラーメンは昔からあって、みそラーメンは僕が中学のころから」と語るのは現ご主人。出前先で先生がリクエストしたのがきっかけ。地元に根ざした店なのだ。
タンメンもまたそれと前後して生まれた。豚ガラと鶏ガラを使って取ったスープがコクを感じさせつつ、さっぱりしていて人気だ。
タンメンの野菜は炒めたりせず、このスープでそのまま煮て塩・胡椒で調味する。ほどいい弾力のストレートの中華麺。これも昔からの自家製だ。野菜もたっぷり。
逆に麺をうどんや蕎麦に変えてオーダーする人もいるくらい。そんな気持ちがよくわかるやさしい味だ。
生姜焼(900円)
定食はご飯なしの注文もOK。人気の生姜焼きは生姜がよく効いて、たっぷりのバラ肉の旨さが口の中に広がる
店主・吉田雅裕さん(左)、佳子さん(右)、小熊千恵美さん(中)
昔からの家族経営でみんなでやってます
[電話]03-3466-0336
[営業時間]11時~20時
[休日]土
[交通]地下鉄千代田線ほか代々木上原駅北口2出口から徒歩7分
『そば処 更科』@新宿御苑
ラーメン(648円)
自家製の麺とスープに、メンマと青菜、焼豚、ネギがのる。デフォルトともいうべきシンプルさにして言うことないバランス。魚介は使わないが、店内に漂う蕎麦の香りが鼻をくすぐり、隠れたアクセントに
シンプルにして抜群の完成度 戦後すぐから変わらぬ旨さ
昔ながらの町の蕎麦屋然とした佇まいもいいのだが、蕎麦よりもラーメンの注文が多いというくらいの人気の店がこちら。
創業は昭和10年、そしてラーメンは戦後すぐに誕生したという。「蕎麦が支給で手に入らず、荻窪の闇市で小麦粉を買って麺を打ったのが始まり」だそうで、以来、麺もスープも焼豚もすべて自家製だ。
スープの材料は鶏ガラ、豚骨、ネギのみとシンプル。豚骨が前に出すぎることはなく、いい塩梅のコクがある、きれいな醬油味。
「まず麺から食べてほしい」という麺は、のびがよくつるりと食感がいい。麺といいスープといい、余計なものはなくして抜群のバランス、完成度なのだ。
思わず懐かしい、変わらぬ旨さがここにある。
もつ煮込み(540円)
やわらかくとろけるように煮込まれたもつは、コクのある味噌味。ラーメンの前にこれで1杯も悪くない
三代目・髙橋 正さん、敦子さん
「期待を裏切らない普通を大事に。愛情が勝負です」
[電話]03-3351-2951
[営業時間]11時半~15時、17時半~20時半
[休日]土・日・祝
[交通]地下鉄丸ノ内線新宿御苑前駅2番出口から徒歩3分
『そば処 池乃屋』@氷川台
チャーシューメン(750円)
スープに馴染んだ肉々しい焼豚のルックスに、ひと目で食欲をそそられる。濁らないように丁寧に仕込まれたスープは、しっかり輪郭のある醬油味。ナルト、メンマ、カイワレものる
透き通ったコクありスープに縮れ麺、焼豚の旨さが秀逸
庶民的な小さな商店街の一角。昭和32年創業の店は、町の食堂として親しまれている。ラーメンは創業当時からあり、ワンタン、味噌、辛味ちゃんぽんなどもあって種類が多いのも特徴だ。
自家製の肉々しく大きな焼豚が入ったチャーシューメンは、「いつもコレ」というお客さんもいる人気メニュー。
鶏ガラとゲンコツ、ネギを使い、チャーシューの煮汁も半分戻すというスープは見た目はスッキリ。醬油味の向こうに旨みとコクがある。
そしてやはり自家製の縮れ麺の具合がいい。細めでコシがありスープとよく絡む。水から丁寧に煮込まれた焼豚はやわらかくも、噛みしめるほどに旨くて思わずニンマリ。
輪郭のしっかりした、また食べたいと思わせる一杯だ。
カツ丼(750円)
丼物も人気高し。トンカツに蕎麦用のつゆとカエシを使った少し濃いめの味がいい
三代目・大根原政人さん
「毎日仕込む焼豚は数量限定なので売り切れ御免です!」
[電話]03-3933-3322
[営業時間]11時~15時、17時~20時
[休日]日
[交通]地下鉄有楽町線ほか氷川台駅1番出口から徒歩9分
おと週無形文化遺産に認定!
武内(以下武)「いやあ出揃いましたね、蕎麦屋のラーメン。けっこうあちこち行きましたよね」
池田(以下池)「うん。改めて意識してまわってみると、これがなかなか楽しいんだよね」
武「へー、どんな印象が?」
池「旨い蕎麦屋のラーメンは、心温まる老舗にあり、かな」
武「昔からの町の蕎麦屋というか、丼物があったり、カレーライスもあったり……」
池「そうそう。お品書きの端に〈中華の部〉とかあったりして、さりげなくラーメンとかチャーシューメンとか書かれていて。スタートは昭和の頭とか、戦後すぐとか。絶滅危惧種ではあるけど、馴染みの客に愛され続けて残っている味は……」
武「シンプルだけど旨い」
池「それだ! 基本は鶏ガラベースの醬油味かな。そこにメンマ、焼豚、ネギ、青菜あたりがデフォルトで」
武「うん、うん」
池「でも具材も店ごとに微妙に違って、ナルトやワカメ、海苔、青菜もチンゲン菜がのったりとか。またその店の味とフィットしてるんだよな」
武「スープもシンプルゆえに味わい深い気がします」
池「うん、同じ醬油味でも少しずつ違う。蕎麦屋の和ダシをちょっと加えたところもあるし。澄んだスープのコクと風味をじわっと味わいたいね」
武「麺はどうですか?」
池「これまた自家製麺のところも多いんだよね。昔ながらの手作りで丁寧に打っている」
武「なんか、ズズズってやったときの食感がそれぞれ。スープと絡んでよく出来! って感じ」
池「焼豚の旨さもそれぞれ楽しみだし、ともかく全体のバランスが秀逸で完成度が高いよね」
武「醬油味以外もありますね」
池「うん、店によってタンメンがあったり、みそラーメン、五目中華そばとか。実はそんなバリエーションも密かに楽しみ」
武「五目中華そばには伊達巻とかかまぼこのってる店もあった」
池「だよね。でも、何れにしても主張し過ぎない、ホッとするような味ってのが共通している気がする。しみじみ旨い、これがラーメンだよなあって味。おと週無形文化遺産に認定!」
武「うああ、食いたい~!」
※店のデータは、2019年2月号発売時点の情報です。
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