昼は高コスパ、夜はカジュアルに美味満喫 芝居の街の風情と親しみやすさが魅力 東銀座は何というか、妙味のある街だ。ブランド店がひしめくきらびやかな銀座とはまた違う、そこはかとない情緒が今も随所に残る。 江戸時代は木挽職人が…
画像ギャラリー銀座の奥にあり、銀座のハナレとも言える東銀座エリア。高級店、老舗といった美食店が並ぶ銀座とは違い、ハナレはコスパよく、カジュアルに、しかしここも銀座なのだと納得させる美食店が存在します。今回は散策も楽しい東銀座の和食店を徹底リサーチしてきました!
『ひとしお(一入)』
原始焼きの魚の旨さとひと工夫した旬の酒肴
どこか懐かしい木枠の窓から温かい灯りが漏れている。真っ新な暖簾は開業まもない店の清々とした姿勢を表すよう。
中央の炉端焼きスペースはさながら舞台。串焼きの魚が備長炭の周囲に並び、これから始まる美味の演目への期待を高めてくれる。
昼は上質な炭火焼きの定食を、夜はもちろん一献だ。ホッケか鮭か。赤々と熾した炭との距離を調整し、じっくり火入れする様子を眺めながら「あれは自分の魚かなぁ」と待つ時間も楽しい。
選んだのは鰆西京焼き。自家製味噌に2日漬けたもので、芳醇な味とほっくりした身に垂涎。
炭焼き鯖定食 1100円
目に舌にうれしいのはそれだけじゃない。ポテサラを頼めば頂上に雲仙ハム。刺盛りには穴子の握りがさりげなく。旬の桜エビとアスパラの土鍋ご飯は桃色に映える新緑が眩しい。小さな驚きの連続に、喜びもひとしおです。
[住所]東京都中央区銀座6-16-11 荏原実業第3ビル1階
[電話]03-6681-7145
[営業時間]11時半~14時(13時半LO)、17時~23時(22時LO)※土は夜のみ
[休日]日・祝
[交通]地下鉄日比谷線ほか東銀座駅4番出口などから徒歩3分
『銀座 なか路』
店主の心意気と上質な素材の旨さを感じるお得なランチ
ほぼ毎朝、特に仕入れの用がない日も豊洲に足を運ぶという。なぜなら「面白いモノに出合えるから」。店主の中路さんがニマッと笑う。いつもの仲卸をひと回りし、他で気になるものを見つけたら拾い買い。
取材日は「石川の赤ナマコがあったので」とおつまみの小鉢にちょいと。それもこれもお客さんに満足してほしいからだそう。
定番の羽釜ご飯だって鮭にイクラにウニと大盤振る舞い、広がる旨みに喝采だ。米は福井の特別栽培米。その品質に惚れ込み、わざわざ地元の生産者に仕入れを交渉したとか。
本日のお好み定食 1500円
ランチはご覧のお値打ち。刺身や揚げ物など数種からおかず2種を選べる(有料で単品追加も可)お好み定食の充実ぶりといったら。天然物の大海老フライだって「これをランチで出してるの?」と仲卸もビックリ。完食すれば心も腹も満ちてくる。
[住所]東京都中央区銀座3-14-5 銀座Jビル2・3階
[電話]03-6278-7113
[営業時間]11時半~14時半(14時LO)、17時半~22時半(21時半LO)
[休日]日・祝
[交通]地下鉄日比谷線ほか東銀座駅3番出口から徒歩3分
『銀座もちふじ』
つきたての餅のおいしさを自分仕立てのお雑煮で味わう
漆黒のお椀にまんまるお月様のような餅が浮かぶ。なめらかに伸びる柔らかさはつきたての賜物、それも3時間以内!
0.01mmの薄削りにした本枯節を使うダシを基本に、鶏ダシや白味噌など味のベースが選べ、具も旬の野菜、魚、肉から好きなものを自由にカスタマイズ。全国津々浦々、家庭の数だけお雑煮の味はあるというけれど、あなた好みはどんな仕立て?そんな珍しい専門店が誕生した。
白味噌のお雑煮 1155円
手掛けるのは寿司屋『銀座くろ寿』店主の黒須さんだ。もともと餅が好きだったこともあり、日本の伝統料理、お雑煮に着目した。
1日数回仕込む餅はつきたてそのまま、焼き、揚げと選べるのも特長だ。故郷の懐かしい味を再現するもよし、別の地域に挑戦もよし。迷っても大丈夫、定番も用意されている。夜はつくね鍋など酒と楽しめる料理も!
[住所]東京都中央区銀座3-11-16 VORT銀座イースト地下1階
[電話]050-1720-0957
[営業時間]9時~22時(変更あり)
[休日]無休
[交通]都営浅草線ほか東銀座駅A7出口などからすぐ
『離亭 三ぶん』
趣向を凝らした旬の粋な旨さを本物の器と酒と共に楽しむ幸せ
誰を連れて行っても間違いない名店ならここ。日比谷「立ち呑み三ぶん」の離れ、こちらは着席式である。
格子戸を開ければ目に飛び込むシブい白木のカウンター、隅で寅さんが一杯やってても不思議じゃない昭和の風情だ。粋な女将さんと料理長らが迎えてくれる。
最初にお粥、きび酢、ウコン錠が出るのは酒飲みへの配慮から。さて、準備万端だ。
筍と真鯛のバター焼き 2200円
創作割烹料理は定番カニサラダからアンチョビならぬサンマで作るサンチョビを使う旬の「筍と真鯛のバター焼き」までひと捻りした旨さ。それらを人間国宝や骨董の器などで何気なく供するのだから、いくら飲んでも酔えなかったりして(笑)。
昼は大分の郷土料理「りゅうきゅう」の丼御膳1本。ヅケにした白身と赤身に薬味をたっぷり乗せた丼で、終盤はダシをかけてお茶漬けに。昼も夜も通いたくなる。
[住所]東京都中央区銀座3-11-7 石川ビル1階
[電話]090-3202-5744
[営業時間]11時半~13時半LO、17時~23時 ※土・日・祝14時~23時
[休日]無休
[交通]都営浅草線ほか東銀座駅A7出口などから徒歩1分
昼は高コスパ、夜はカジュアルに美味満喫
芝居の街の風情と親しみやすさが魅力
東銀座は何というか、妙味のある街だ。ブランド店がひしめくきらびやかな銀座とはまた違う、そこはかとない情緒が今も随所に残る。
江戸時代は木挽職人が多く住んでいたことから、この辺りは木挽町と呼ばれた。評判の芝居小屋が並び、その賑わいが芝居の街としての礎を築いたそうだ。明治期からは料亭街としても知られた。
シンボルは何といっても歌舞伎の殿堂、歌舞伎座。2013年にリニューアルしたが、威風堂々たる姿は絶対的な存在感だ。
周辺を歩いてみれば、常連になりたい隠れた名店が点在している。そんな店は路地裏やビルの2階、地下にも潜んでいるので、気になる看板を見つけたら思い切って飛び込んでみるのもいいだろう。
昼は行列の店も多く、夜は一献楽しめる赤提灯も。昼と夜で違う表情を見せるのもまた魅力。通うほどに街も店も、人も好きになる、そういう意味でも、実に妙味ある街なのだ。
撮影/浅沼ノア(歌舞伎座)、西崎進也(東銀座の裏路地、ひとしお、なか路、銀座もちふじ、三ぶん)、文/肥田木奈々
※2024年5月号発売時点の情報です。
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