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晩酌という日常がある幸せ

「奥能登の白菊の純米の常温を喜一と酌む」と暁子さんは言った。

晩酌は漁師の奥さんがリヤカーで振り売りする魚を見て献立を決めるのが常だった。サバ、ブリ、真フグ、アオリイカ……縞エビや甘エビなどエビの宝庫でもある。やさしい甘さの奥能登の白菊は、魚介の繊細な旨みと響き合う。

「輪島の人ってエビが白くなってたら食べないんですよ。それくらい獲れたてが当たり前。地震で輪島港は海底が隆起して漁に出られないから、おいしい魚が食べられるのはいつになるのか。ガンドなんて震災以来お目にかかってないからうれしい!」(暁子さん)

その晩、食卓には暁子さんが七尾市で手に入れた新鮮なイワシで作った煮付け、横道さん作の鶏肉と原木椎茸「のと115」の酢醤油煮などが並んだ。ブリの一歩手前のサイズを指すガンドは、賽の目に切ってなめろうになった。

この晩の肴は横道さんお手製の鶏肉と椎茸の酢醤油煮、ガンドのなめろう、白藤暁子さんお手製のイワシの梅煮、いただきものの花豆の甘煮など。酒は常温とお燗で、思い思いに好きなものを酌む。終盤には、揚げ出し豆腐とクリームシチューも食卓を彩った

「なめろうに奥能登の白菊の自然栽培米が合う!」と藤田さんが唸っていると、「私は湯〜ほっ。のお燗が好きだな。ひと口飲むと料理をまた食べたくなって、また飲みたくなる」と暁子さん。

「暁子さんに褒められるとうれしいわ、利き酒能力がものすごく高い人やからさ」と横道さんの頬は緩む。きっと新酒も味わい深く仕上がるだろう。造り手たちがこんなにいい夜を過ごしているのだから。

『御祖酒造』@石川県

1897年創業。普通酒と本醸造を中心に地元で愛されてきた「ほまれ」に加え、藤田美穂氏が社長就任後の2005年から食中酒に特化した新銘柄「遊穂」を醸す。遊穂の名は蔵のある羽咋市がUFOの町であることに由来する。

【純米酒 遊穂】

『御祖酒造』純米酒 遊穂

【生もと純米酒熟成 遊穂の湯〜ほっ。】

『御祖酒造』生もと純米酒熟成 遊穂の湯〜ほっ。
御祖酒造

『白藤酒造店』@石川県

18世紀中頃、北前船の寄港地・輪島で廻船問屋として創業し、江戸末期から酒造業を開始。9代目は共に大学で醸造学を学んだ夫妻が「奥能登の白菊」を醸す。能登半島地震で店舗兼自宅が全壊。醸造設備に被害を受けた。

【特別純米酒 奥能登の白菊】

『白藤酒造店』特別純米酒 奥能登の白菊

【奥能登自然栽培米 奥能登の白菊】

『白藤酒造店』奥能登自然栽培米 奥能登の白菊
白藤酒造店

撮影/松村隆史、取材/渡辺高

2024年5月号

※2024年5月号発売時点の情報です。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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おとなの週末Web編集部
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