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酒の造り手だって、そりゃ酒を飲む。誰よりもその酒のことを知り、我が子のように愛する醸造のプロ「杜氏」は、一体どのように呑んでいるのか?東京は東村山に、由緒ある日本酒を醸し続ける蔵がある。その若き杜氏はかなりの酒好き。寡黙に酒造りと向き合った後の酒の楽しみ方には、こだわりがあるかと思いきや……

東京都『豊島屋酒造』

【箕輪透氏】

箕輪透氏

1978年、長野県生まれ。バイオ系の専門学校卒業後、豊島屋酒造に入社。一貫して酒造りに取り組む。2023年に製造部部長に就任し、杜氏として蔵人たちの指揮をとる。「どこかに花嫁募集中と書いておいてください。あ、冗談ですよ(笑)」

晩酌しないが、飲むときゃとことん

「一年中キンキンに冷やして飲むのが好み。特に『十右衛門』は、なんならロックで酌む」と杜氏は言った。「金婚」や「屋守(おくのかみ)」を醸す豊島屋酒造の杜氏・箕輪透さんだ。

酒造りを始めて以来の代表銘柄である「金婚」は、明治神宮と神田明神に御神酒として納められている唯一の酒

香り高い「屋守」は現社長の田中孝治さんが約20年前に立ち上げた新ブランドだ。箕輪さんのお気に入りは10年ほど前に「金婚」シリーズに加わった「十右衛門 純米無濾過原酒」。旨口のどっしりした味わいが魅力の1本だ。

「晩酌、しませんね。家でひとりで日本酒を飲むとしんみりしちゃうし、すぐ眠くなっちゃうんで。あっ、企画的に大丈夫ですか?」

日本酒は誰かとワイワイ飲みたいという箕輪さんが楽しみにしているのは、月1回社員一同での利酒会と、蔵人が仕事終わりに誰からとなく誘い合って会議室で酌み交わす一杯だ。肴にはこだわらない。

その晩、会議机には、ソフトな仕上げのビーフジャーキーの胡椒味と山椒味が並んだ。蔵人たちはその一片をかじり、小さなお猪口をぐいぐいと干していく。

肴は蔵にあるものを適当に見繕う。この日は社長が買ってきた所沢牛の霜降り肉を使ったビーフジャーキー。脂の口溶けがよく、噛むほどに広がる濃厚な旨味が、力強い味わいの「十右衛門」とよく合う

「好きな食べ物ですか?枝豆ですね。あと漬物。郷里の下諏訪でよく食べるセロリの浅漬けはいいですね。例年、ホタルイカを獲りに行って素干しにしてるんですよ。あれは最高のつまみです。あと、プロセスチーズを海苔で巻いたやつ。なんかちょこちょこ系ばっかりだな」と箕輪さんは自分の好みの傾向に気付いて笑う。

すると、周りからは「そもそも全然食わないじゃないすか」と一斉のツッコミ。どうやら飲み始めたら酒一辺倒になるようだ。日常的に飲む習慣のない箕輪さんだが、飲むとなったらとことんまで飲むことが多いとか。

日本酒は仕事終わりに蔵人たちと一緒に。みんなで楽しく飲みたいから

「日本酒はナナニー(四合瓶1本)はいきますかね。ここで日本酒をやってから居酒屋に繰り出すことが多いですね。店ではひたすら生ビールか角ハイ(サントリー角瓶のハイボール)」。

「そこでも食わないんすよ、この人」と指摘されると、「普通はビールの後に濃い酒の日本酒とか焼酎にいくじゃないですか。僕らは日本酒の次にビールで、逆なんですよ。後半は飲めば飲むほどすっきりクリアになってくる」と箕輪さん。

「クリアって!」というみんなの破顔一笑に、職人たちのチームワークと風通しのよさを感じた。

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おとなの週末Web編集部
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