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春から秋の日曜かつ晴天時はテラス席を開放

「風の森」「新政」……おいしい焼鳥とともに、お酒ももちろん進む。幸せを噛みしめながら、キッチンを見れば、郁希さんとりか子さん、諒太さんの笑顔。諒太さんは、近所で生まれ育ち、『いっく』の焼鳥をよく買いに来ていたそうだその少年が、大学生になってアルバイトをすることに。3人の和やかさが、焼鳥をいっそうおいしく感じさせる。

岩手の酒「奥六」が焼鳥によく合う
岩手の酒「奥六」が焼鳥によく合う

店先に小学生くらいの男の子が焼鳥を買いにきた。

「お、ちょっと待っててね」と、焼き立ての焼鳥を包んで渡す郁希さん。諒太さんもあんな感じで買いに来ていたのだろう。実は『いっく』は持ち帰りがメインの焼鳥店。真空パック焼鳥の無人販売もあり、こちらも大人気だ。

はじめは、現在の場所から近い、郁希さんの実家の庭に小屋を建て営業を始めたという。おいしい焼鳥を食べて、立ち飲みができると、あっという間に大人気に。その頃の『いっく』でも飲んでみたかったなと思う。トイレもない建物で、「トイレに行きたくなったら、そろそろ帰る頃ということでした……」と笑う郁希さん。

ただ、あまりに忙し過ぎて「焼鳥をちゃんと楽しんでいただけない」と、小岩井駅前移転とともに持ち帰り専門店に。その後、予約限定で再び店内の飲食を始める。焼鳥とともにお酒やワインもゆっくり楽しんでほしい、郁希さんとりか子さんの願いが実現したのだ。

そして、コロナ禍も落ち着きを見せた2023年、テラス営業を始めた。春から秋の晴天の日曜に限り、テラスで焼鳥で一杯ができるのだ。かつての『いっく』を私は見ていないけれど、その頃の「わいわい」感が復活しているに違いない。店内ももちろんいいが、今度はテラス席で飲みに来よう、と誓う。

私たちもそうだが、盛岡からやってくる客が多い。

「電車か、たまにタクシーで来るお客様もいらっしゃいます」とりか子さん。盛岡から約10分という、この距離感がとてもいいんだろうなあ。わくわく感が増す10分間。おとなの遠足気分だ。私たちの遠足もあっという間……盛岡行き終電の時間21時22分が近づいていた。

慌てて身支度をして店を出る。郁希さん、りか子さん、諒太さんが雪の中を外に出て手を振ってくれている。「またいらしてくださいね~」。ちょっと涙が出てしまう。「また来ますね~」と叫んで、「賢治の駅」へと飛び込む。

見送ってくれるみなさん
見送ってくれるみなさん

岩手に来ると「人があったかいなぁ」と思う。『いっく』もまた、とびきりあったかい。滞在は4時間足らずのはずなのに、宿に泊まったような気分になっている

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取材・撮影/本郷明美

福島県古殿町出身。 自称のんべえライター。酒と酒場、銭湯と浸かった後の「湯上りビール」をこよなく愛する。
初めて吞んで以来盛岡周辺が大好きになり、年に数回訪れる。著書『どはどぶろくのど』、『ブラ酒場』(共に講談社)あり〼。

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本郷明美
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