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4ATのほうが人気

この2LターボエンジンのほかにはノンターボのNAエンジンも設定されていたが、人気はハイパワーのターボ搭載モデル。駆動方式はFRで、スタリオンは三菱が手掛けた最後のFR車ということになる。

トランスミッションは5MTと4ATがラインナップされていたが、人気だったのは4AT。当時のスポーティカーは5MTで乗るのが当たり前だったが、スタリオンはスポーティカーではあるがゴリゴリのスポーツカーではなく、スペシャルティ性のあるGT的なキャラクターだったことも影響していると思われる。

写真は5MTだが、人気は4ATだった。決してデザインにこだわったインテリアではないが、メーターパネルの造形にこだわりを見せる

レアなスポーティカー

スタリオンは1982年にデビューして、1990年まで販売されたが販売面では成功することができなかった。筆者で言えば高校、大学時代ということになるが、スポーティカーが最も売れた時代でもあるが街中で目にすることはあまりなくレアな存在。ただ人気モデルが街中に溢れるなか、少数派ということが非常に目立つ要因になっていた。個人的にはスタリオン=シルバーのボディカラーのイメージが強い。シルバーに三菱の赤いスリーダイヤのエンブレムが映えていたが、欲しいと思うクルマではなかった。

ほかのクーペと同様にリアシートは大人が座るには少々厳しい

地道な進化を続けたスタリオン

スタリオンはその後細かな進化を遂げるが、フルラインターボ戦略に邁進していた三菱の技術力は高く、1983年に2Lターボエンジンは175ps(グロス)にパワーアップ。デビュー時は1気筒あたり2バルブだったが、3バルブ化され、日本車初となる空冷インタークーラーを装着していた。

このエンジンは200ps(グロス)までパワーアップさせ、地道な進化を遂げた。そしてこのエンジンにワイドボディを組み合わせたGSR-VRを50台限定で販売。このスペシャルモデルは限定数が少なかったこともありあっという間に売り切れ、若干数の増産をしたと記憶している。日本車は全幅1700mm以下の5ナンバーサイズが当たり前の時代に、前後のフェンダーを大きく膨らませ全幅を1745mmまで拡大!! 今でこそ日本車も全幅1800mm前後のモデルが増えているが、当時はクラウン、セドリック/グロリアでさえ全幅1685mmを死守していたのだから、その迫力たるや凄かった。

あと、GSR-VRでは日本車で初めて50タイヤが認可されたのも特筆事項だろう。今では50タイヤなんて当たり前だが、その先鞭をつけたのだ。

ブリスターフェンダーにより迫力を増したスタリオン。この武骨なまでの迫力はほかの日本のスポーティカーと一線を画していた

限定からカタログモデルへ!!

後付けでフェンダーを膨らませるのをオーバーフェンダー(通称オバフェン)と呼ぶが、ボディと一体にフェンダーを膨らませるのがブリスターフェンダーだ。スタリオンで『ブリスターフェンダー』という言葉を覚えた若者は多かったはずで、筆者もそのひとりだった。

スタリオンGSR-VRは片側30mmフェンダーが拡幅されているのだが、たった30mmと侮るなかれ、その迫力、カッコよさは異彩を放っていた。

このワイドボディのスタリオンは、1988年にカタログモデルとして再登場した。限定モデルだったGSR-VRのエンジンが2Lだったのに対し、2.6Lに排気量アップし車名もスタリオン2600GSR-VRと命名された。この2.6Lエンジンは前述のダッジコンクエストに搭載されていたエンジンで、以降はワングレードに集約された。

スタリオンは日本での販売が振るわなかったこともあり、多彩なバリエーションを設定するにはコストがかかるため、コストダウンのために1モデルとしたようだ。

スタリオンのリアビューは比較的オーソドックス

低中速の加速感が凄い!!

2.6Lの排気量を活かしたトルクは強烈で、2Lとの加速は別レベル。スタリオンは北米向けがメインだったため、エンジン特性も低中速トルクを太くして、発進加速、クルージング時の燃費性能向上を狙っていた。当時はパワー至上主義で、上までどれだけ回るか、気持ちいいかが評価軸となっていたため、この点でスタリオンは不利となった。見た目以上に乗るとアメ車的だったのだ。

ただ、この三菱の低中速トルクを重視するというクルマ作りは、その後もアイデンティティとして継続され、1990年代に入ってから大きく評価されることになる。その意味では、スタリオンは悲運だったのかもしれない。

太いトルクが低中速からモリモリと盛り上がり、その加速感は強烈だった!!
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市原 信幸
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