浅草『仁行』
店主の石井仁さんは蕎麦好きには名の知れた人物だ。31年前に『いし井』(神田)を開いた後、移転を繰り返すこと六回。流浪の名蕎麦職人と言われる所以だ。今回、石井さんが選んだのは浅草観音裏の民家。
メニューは全10品の蕎麦懐石のみでその日の献立は食材と石井氏の気分次第だが、何を食べてもべらぼうに旨い。中でも蕎麦寿司は蕎麦と具材、穴子の煮詰めや自家製山葵マヨネーズなどが絶妙のバランス。口の中ではらりとほどけるのも実に粋だ。
そしてもりそばが登場すると、なんと瑞々しい極細の蕎麦かと目を奪われる。手繰ればしなやかなコシ、のど越しの良さに感激。十割とは思えぬ“水腰蕎麦”と呼ぶにふさわしい逸品だ。食べ終えれば身も心も満たされること必至である。
…つづく「東京のうまい「最強の町寿司」ベスト7軒…高コスパ、一貫《110円》からで一見さん、ソロ活でも大丈夫「覆面調査隊が実食」」では、庶民価格の美味しい町の寿司店を紹介します。
『おとなの週末』2023年12月号より(※本内容は発売時のものです)