このとき、ホタテ貝の貝殻のまんなかに穴を開け、針金を通したコレクター(付着器)を海に入れてやるのです。一枚のホタテ貝の殻に30から100個のカキがくっつきます。針金1本に約70枚のホタテ貝の殻がつながれていて、1連、2連と数えます。これが宮城県で毎年、150万連とれます。
北上川河口の石巻湾の奥には、万石浦という広い内海があります。ここはカキの養殖の発祥地であり、種ガキの大生産地です。この種ガキは、国内はもとよりアメリカやフランスでも宮城種として知られています。強くて早く育つうえに、とってもおいしい宮城種のカキは、多くの人々に愛されているのです。
…つづく『「こんなうまいものがあるのか」…20歳の青年が、オホーツクの旅で《ホタテ貝の刺し身》に感動、その後はじめた「意外な商売」』では、かきじいさんが青年だったころのお話にさかのぼります。
連載『カキじいさん、世界へ行く!』第32回
構成/高木香織
●プロフィール
畠山重篤(はたけやま・しげあつ)
1943年、中国・上海生まれ。宮城県でカキ・ホタテの養殖業を営む。「牡蠣の森を慕う会」代表。1989年より「海は森の恋人」を合い言葉に植林活動を続ける。『漁師さんの森づくり』(講談社)で小学館児童出版文化賞・産経児童出版文化賞JR賞、『日本〈汽水〉紀行』(文藝春秋)で日本エッセイスト・クラブ賞、『鉄は魔法つかい:命と地球をはぐくむ「鉄」物語』(小学館)で産経児童出版文化賞産経新聞社賞を受賞。その他の著書に『森は海の恋人』(北斗出版)、『リアスの海辺から』『牡蠣礼讃』(ともに文藝春秋)などがある。2025年、逝去。

