煮干しラーメンマニアにとっての必訪店
これらのラーメンに用いる麺についても、ひと言言及しておきたい。麺は、すべてのレギュラー麺メニューに、店主の修業先である『自家製麺伊藤』から取り寄せた、中細ストレート(通称「伊藤麺」)を採用。
店主は、そんな「伊藤麺」をメニューによって茹で分け、各々のスープに最も馴染む状態で提供することにも、並々ならぬこだわりを見せる。
「『伊藤麺』は、茹で時間によって様々な表情を見せる、パフォーマンス力に優れた麺です。『夢にでてきた中華そば』や『だしにぼ』では、茹で時間を短くし、スープに負けない力強い食感を演出。他方、『澄みそば』では、茹で時間を『夢~』や『だしにぼ』より数秒長くすることで、柔らかなスープと水魚のごとく交わるしなやかな食感を表現しています。最も長めに茹でるのは、『つけ』ですね。じっくりと茹で上げ、氷水で丹念に締めることで 日本蕎麦のような滑らかな口当たりを実現しました」。
加えて、「しおにぼしOilそば」には、「伊藤麺」に加え、アルデンテイタリア麺、極太手打ち麺などを併用する。
「『しおにぼしOilそば』は、ひとつの丼に3、4種類の麺を盛り付けます。すべての麺を最高の状態で味わっていただくため、麺ごとに茹で時間を変えるなど、特段の注意を払っています」。
吉田店主とは、日頃から仲良くさせていただいており、同氏のラーメンづくりに対する熱い心意気と真摯な姿勢は、よく理解しているつもりだったが、今般、改めて店主と向き合い、その心意気、姿勢が、変態的な領域にまで到達していることを、まざまざと実感させられた。
日本全国を探しても、今、吉田氏ほど、「煮干しラーメンにこだわり究めたい」という想いが強い作り手は、私が知る限り、存在しないのではないかと思う。煮干しラーメンマニアにとっての必訪店であることはもちろん、煮干しラーメンがあまり得意でない方も、同店の1杯を召し上がっていただければ、苦手意識を払拭できるかもしれない。煮干しラーメン界の未来をけん引する、名店中の名店だ。
連載第2回『Dad’s Ramen 夢にでてきた中華そば』
東横線・大井町線「自由が丘駅」南口より徒歩約6分
営業時間は月〜金 11時〜14時/※材料切れ早仕舞いあり
【定休日 土・日・祝・不定休】
臨時の営業日・休業日早仕舞い等は店舗のX(旧Twitter)参照
文・写真/田中一明:通称「ラーメン官僚かずあっきぃ」として数多くのメディアでラーメン情報を発信。日本全国のラーメン店に精通し、主な名店はほぼ実食済み。食べ歩きのペースは常に年間700杯以上で、これまでに食ぺたラーメンは2万500杯に及ぶ。TRYラーメン大賞の審査員も務めている。