クルマを運転するうえて重要なステアリングホイール。かつては、円形なのが当たり前だったが、ある時期からそうではない楕円形やÐ字型のものが採用されるようになった。それどころか、近年はまるで飛行機の操縦桿のようなものまで登場している。これらが装着されるようになった理由を振り返ろう。
画像ギャラリー
クルマを運転するうえて重要なステアリングホイール。かつては、円形なのが当たり前だったが、ある時期からそうではない楕円形やÐ字型のものが採用されるようになった。それどころか、近年はまるで飛行機の操縦桿のようなものまで登場している。これらが装着されるようになった理由を振り返ろう。
D字型やオーバル型など、非円形のステアリングが増えた
ステアリングホイールの形状は、一般的に丸型か若干の楕円形だが、最近は明らかに形状の異なる異形タイプが増えた。最も多い異形タイプは、直進状態でステアリングホイールの下側を平らにしたD字型だ。これは日本のメーカーでは、日産車に多く、セレナ、エクストレイル、ノートなどが採用している。
また直進状態で、下側だけでなく上側も平らにしたオーバル型もある。日本車ではスバルソルテラがマイナーチェンジで採用した。そのために今は、姉妹車のトヨタbZ4Xとはステアリングホイールの形状が異なる。オーバル型はプジョーなど海外のクルマにも見られる。
以前のD字型は、一部のスポーツカーが採用していた。インパネに合わせてステアリングホイールの取り付け位置が低く、ドライバーの大腿部に接近しやすい。そこで直進時に下側を平らにして、大腿部との間隔を確保した。しかし今は、ステアリングホイールとドライバーの大腿部がもともと離れているミニバンやコンパクトカーにも、D字型が採用されている。
D字型ステアリングが採用される理由とは？
それならD字型ステアリングホイールに何の意味があるのか、開発者に尋ねると以下のように返答された。
「今の車両では、メーターパネルに各種の情報を表示する液晶ディスプレイが内蔵され、メーターのサイズが大きくなった。大型化されたメーターパネルの視認性を確保するには、ステアリングホイールも大径にしたいが、一般的な丸型では操作性が悪化する。そこで直進時にメーターに干渉しやすい上側だけを大径にして、下側は平らにするようになった」
ただしD字型やオーバル型は、急なカーブなどで操舵角が大きくなった時、ユーザーによってはステアリング操作がしにくく感じる。トヨタプリウスは、以前は異形だったが、現行型では一般的な形状に近付けた。
軽自動車に非円形ステアリングが採用されない理由とは？
また日産には前述の通りD字型ステアリングホイールが多いが、軽自動車のデイズなどは一般的な円形に近い。開発者に理由を尋ねると「軽自動車には、運転が苦手と感じているお客様も多い。違和感が生じないよう、D字型にはしていない」と返答された。つまり円形でない異形のステアリングホイールには、操作しにくいという意見も多いようだ。
従ってD字型などから円形に戻す車種が多いが、ソルテラは逆だ。前述の通り以前は円形で、マイナーチェンジの時に、bZ4Xとは異なりオーバル型を採用した。ソルテラやbZ4Xは、もともとメーターがステアリングホイールの上側に見える配置で、視認性が悪かった。そこでソルテラはオーバル型にして、ステアリングホイールがメーターパネルに干渉しにくくしている。
ちなみにスバルは、安全性を重視するため、デザインに関して保守的な傾向が強い。異形ステアリングホイールが最も似合わないメーターともいえるが、ソルテラにオーバル型を採用した。スバルがソルテラについて、メーターの視認性の悪さを問題視していた結果だ。
以上のようにステアリングホイールの形状は、ターゲットにしているユーザーの好みや運転技量でも左右され、さまざまな事情が絡んでいる。
文／渡辺陽一郎（わたなべ よういちろう）：自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。執筆対象は自動車関連の多岐に渡る。
写真／レクサス、日産、ホンダ、スバル
