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レギュラーメニューは「塩ラーメン」と「醤油ラーメン」

「醤油ラーメン」

いよいよ、ラーメンそのものの話に移ろう。現在、同店が提供するレギュラー麺メニューは、「塩ラーメン」と「醤油ラーメン」の2種類、及びそのバリエーション(味玉トッピング、チャーシュートッピング等)。ここ最近は限定メニューの提供も開始。その日に提供される限定ラーメンの内容は、『Ramen翡翠』の「X」のアカウントをご覧いただければ、確認できる。

私は、最初の訪問時に「醤油ラーメン」、2度目の訪問時に「特製塩ラーメン」をいただいた。

結論から申し上げよう。

これは参った。「醤油」、「塩」共に、ひと啜りで確信することができるだろう。間違いなく、『Ramen翡翠』は、赤坂のラーメンシーンに革命をもたらす「エポックメイキング」な存在となる店だと。

同店は、2月8日のオープン直後からラーメン好きを中心に「激ウマ」だと話題になり、隠れ家のように分かりにくい立地にありながら、瞬く間に行列が途切れない人気店へと上り詰めたが、「このクオリティであれば、さもありなん」と、素直に納得できる。それほど、紡ぎ出される1杯のクオリティは高い。

開業したばかりの新店の水準を大きく上回り、一足飛びで『TRYラーメン大賞』の「名店部門」に掲載されても、違和感が全くないほどだ。

真っ先に言及しておかなければならないのは、「醤油」、「塩」共に、カエシのクオリティがずば抜けて高いことだ。

「醤油ラーメン」のカエシは、飲み干し際に天然甘味料(デーツ・メイプル)の仄かな甘みが口腔内に残り、余韻となって、食べ手の快楽中枢を心地良く刺激するのだが、その甘みたるや、マリアナ海溝の顔負けの「深さ」を誇る。

徹底的に作り込まれたカエシ、頬が落ちそうになるスープ

塩ラーメン

それもそのはず、このカエシ。寸分の隙も生まれないほど、徹底的に作り込まれているのだ。渡邊氏自らが全国各地の醤油蔵へと足を運び、6ヶ所の蔵(群馬:日本一しょうゆ、千葉:ちば醤油、長野:マルヰ醤油、長野:大久保醸造店、埼玉:弓削多醤油、愛知:南蔵商店)から取り寄せた「木桶仕込み」の天然醸造醤油をブレンド。

そこに、デーツ・メイプル・にがり・リンゴ酢・バルサミコ等を更に足し合わせて、初めて「完成」となる。率直に申し上げて、気が遠くなるような手間ひまの掛けようだ。

「塩ラーメン」のカエシの構成も、「醤油」に勝るとも劣らないほど精緻。乾物・白身魚のアラ・浅蜊、蜆、蛤、ムール貝等の貝類に、信州の名酒『大信州』を加え、4ヶ所の産地(宮崎・秋田・沖縄・フランス)で採れた塩をブレンド。

そこに、いしる・白醤油・にがり・リンゴ酢・穀物酢・デーツ等を更に重ね合わせる。その味わいは、鋭いキレと豊かなコクとを見事に兼ね備え、口にした瞬間、全身から歓喜の鳥肌が立つほどだ。

スープ(出汁)も、カエシに勝るとも劣らない力の入れようだ。4種類の地鶏(黒さつま鶏・押岡地頭鶏・信濃地鶏・名古屋コーチン)を、それぞれが果たすべき役割を熟考しながら、絶妙なバランス感覚でブレンド。また、鶏だけではなく、素材に豚を加えることで、うま味に厚みを持たせ、魚介素材(節・昆布・煮干し等)を加えることで、味わいに広がりと奥ゆきを与えている。

「オープンする前の数ヶ月は、時間の合間を縫って、できるだけ多くの素材の産地を訪ね歩きました。世間によくある『鶏水系』ではなく、どんな素材が使われているのか分からないような味を表現したくて、鶏以外の素材が持つポテンシャルの引き出し方も追求しています」。

その結果出来上がったのは、啜る度にベコっと頬が落ちそうになる滋味の塊だ。「グルタミン酸とイノシン酸のバランスなど、旨味成分の掛け合わせ方は常に研究しています。試行錯誤を繰り返しながら、より美味しい方向へと持っていけるように、歩みを進めていきたいですね」。

お客様に食べ物を提供する作り手である以上、こだわりはあって当たり前だと言う。渡邉店主の視線は常に前を見据え、「現状維持」の4文字は存在しない。

食中、私は、『翡翠』のラーメンのスープは、一般的な「淡麗醤油」、「淡麗塩」とは、風味の移ろい方の細やかさから、味蕾が感じ取れるうま味の質に至るまで、全てが別次元だと感じた。啜る度に、味覚中枢が新たなうま味に刺激され、終盤まで、脳内からドーパミンが噴出し続けるのだ。上記のような真摯な姿勢で創作されているのであれば、それも宜なるかな。「魂が宿りしラーメン」とは、このような1杯のことを指すのだろう。

赤坂の新店は麺もトッピングも高い完成度を誇る

トッピングもすばらしい/醤油ラーメン

自家製ストレート麺も、風味清冽で瑞々しさに満ち溢れた一級品だ。香り豊潤な国産小麦をフル活用。丁寧に茹で上げ柔らかく仕上げることで、絹糸のように滑らかでソフトな啜り心地を生み出すことに成功。食べ終わりに近づくにつれ、スープの熱によって麺のしなやかさが一層増し、一本一本の麺が口の中で踊りたわむサマが、まざまざと実感できる。絶品スープとばっちり噛み合った「名パートナー」として、八面六腑の活躍を演じていた。

豚チャーシュー・鶏チャーシュー、(「特製塩」は、ホタテ貝柱、カブ等が更にオンされる)から、メンマに至るまで、トッピングの工作も「完璧」のひと言。どれひとつをとっても、小料理屋の一品ものとして提供されても十分通用しそうなほどの完成度。この非の打ちどころのなさたるや、驚きを通り越して呆れてしまうほどだ。

「醤油」、「塩」共に、ここ数ヶ月の間に戴いた新店の淡麗ラーメンの中で、確実に3指に入る超本格派。もとい、「作り手の顔が丼から垣間見える1杯」という意味合いにおいては、ナンバーワンかも知れない。

あのビジネス街・赤坂にこんな良店が爆誕するなんて、(赤坂に拠点を置いている方々には誠に申し訳ないが、)これまでのラーメン人生で想像すらしていなかった。特に、ビジネスマンは、赤坂で飲み食いする機会が多いと思う。「赤坂でラーメンを1杯」という局面において、『翡翠』を知っているかどうか。その違いは、極めて大きいと言わざるを得ない。このコラムの冒頭で、「知っておくと、物凄く皆さまのお役に立ちそう」と申し上げたのも、そういう意味だ。

2025年上半期のラーメンシーンは、間違いなく、この『Ramen翡翠』の話題で大いに沸くことだろう。「殊更意識しなくとも、スープが飲み干せる1杯。そんなラーメンが、超一流のラーメンである」とよく評されるが、まさにその評に違わぬ名杯。次世代の淡麗ラーメン界をけん引する「ニューリーダー」の誕生だ。

連載第3回『Ramen翡翠』

東京メトロ・千代田線「赤坂駅」1番出口より徒歩約2分
営業時間:11時30分〜15時
定休日:日曜、月曜日(不定休)
臨時の営業日・休業日などは店舗のinstagramのカレンダーを参照

文・写真/田中一明:通称「ラーメン官僚かずあっきぃ」として数多くのメディアでラーメン情報を発信。日本全国のラーメン店に精通し、主な名店はほぼ実食済み。食べ歩きのペースは常に年間700杯以上で、これまでに食ぺたラーメンは2万500杯に及ぶ。TRYラーメン大賞の審査員も務めている。

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田中一明
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