御成婚記念で開園した「こどもの国」と皇室
現在の上皇陛下の御成婚を記念して造られた「こどもの国」。以来、皇室とのつながりは深く、こどもの国線の開通式には常陸宮ご夫妻が出席され、上皇ご夫妻(当時は皇太子ご夫妻)とそのお子様方(現・天皇陛下、秋篠宮皇嗣殿下、黒田清子さん)も、幾度となく足を運ばれている。
当時、皇太子殿下であった上皇さまは、以前こどもの国をおクルマで訪れた際に道路が渋滞し、“遅刻”をなさったことがあった。この苦い経験からか、1985(昭和60)年5月に行われた開園20周年記念式典へのご出席の際には、ゴールデンウイーク中であったこともあり、周辺道路の渋滞を避けるためクルマではなく、当時のお住まいであった東宮御所(東京・元赤坂)の最寄り駅である営団地下鉄(現・東京メトロ)青山一丁目駅から臨時電車で地下鉄半蔵門線、東急新玉川線、田園都市線、こどもの国線を経由して、こどもの国を訪れた。
この時、皇太子妃殿下美智子さま(当時)と、長女の紀宮さま(現・黒田清子さん)もご一緒だった。皇太子殿下(現・上皇陛下)は、はじめて「日本の地下鉄」にご乗車されたとあって、多くのメディアが写真付きで報じた。美智子さまは「(地下鉄は)久しぶりね」、紀宮さまは「(プライベートで)乗ったことがあるわ」と、お話しになり、皇太子殿下は、通勤型電車の車内に掲出された車内広告をご覧になるなど、”地下鉄の旅”を楽しまれたご様子だったという。

文・写真/工藤直通
くどう・なおみち。日本地方新聞協会特派写真記者。1970年、東京都生まれ。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物に関連した取材を重ねる。交通史、鉄道技術、歴史的建造物に造詣が深い。元・日本鉄道電気技術協会技術主幹、芝浦工業大学公開講座外部講師、日本写真家協会正会員、鉄道友の会会員。