女将やマダムのいる店は、何かが違う。「女将」ってなんだろう?その姿に迫る『おとなの週末』連載「女将のいる場所」を、Webでもお届けします。今回は、2017年に東京・文京区で開業したフランス料理を提供するお店『レストラン マ・プール』の市岡ゆう子さんです。
どの瞬間も100%好きな仕事をしてきた女将が営む『レストラン マ・プール』
英会話にクラシック・バレエ。東京都足立区で町工場を営む両親は、娘が習い事を望めばすべて叶えてくれた。
「ただし自分でやりたいと言ったからには誰のせいにもできない。がんばり抜く責任があることも教わりました」
市岡ゆう子さんは1980年生まれ、三姉妹の真ん中。15歳までバレエに励んだ彼女は、憧れのプリンシパルが美大生と知るや美術大学を志望、空間デザインを学んだ。
「何者かになりたい。でも、それが何なのかわからない」
何か、を求めて訪れたニューヨークでジャズクラブ『ブルーノート』を知る。素敵!働きたい!勢いのまま、帰国後すぐに青山の姉妹店へ”論文”を送った。
音楽、料理、酒、異世界。好きな全部が存在する職場で、今度は先輩のソムリエールに憧れ、ソムリエ資格を取得する。
「神から授かった味覚嗅覚を持つ人だけの職業ではなく、訓練すればどんどんわかる。それがおもしろくなって」
5年後、ワインの国フランスへ。働いたブルゴーニュのレストランでシェフを務めていたのが徹也さんだった。というか、ふたりしかいなかった。当初片言だったという彼女のフランス語は、1カ月後、電話で予約を受けられるまでに上達した。
「できない」と言えば居場所がなくなる外国で、叩き上げた者同士の同志。結婚したふたりはその後も4年間現地に暮らし、日本での独立を決める。
2017年、東京のカルチェ ラタン・東大前に現れた『マ・プール』の内装は、フランスの村に佇む普通の家がお手本だ。花模様の壁紙を選び、押し花を飾り、アンティーク生地でテーブルクロスを縫ったのはゆう子さん。
「フランス人は自分たちの好きなものを飾ります。流行などではなく、そこにあると自分が幸せになれるものを」
料理とワインはジュラ地方。まあ大抵は「そこどこ?」と返ってくるから、彼女の役割はにっこりふわっと、しかし確実に、ジュラの土地を人々に刷り込むことである。
「シェフのお料理をどれだけ楽しんでもらえるか。そのためにも、ジュラの世界にどっぷり浸っていただきます」
黄色いワンピースにフリル付の小さなエプロンを結び、パールのネックレスを着ければマダムスイッチが入る。どの瞬間も100%好きな仕事。自分で望んだ、私の道。





