江戸三大美人ゆかりのお稲荷さんとは?
ところで、江戸三代美人のひとりとされた笠森お仙の名はご存知だろうか?笠森稲荷門前の茶屋の看板娘で、浮世絵師・鈴木春信の美人画のモデルともなり一世を風靡した。その笠森稲荷堂が境内にあるのが「功徳林寺」だ。こちら美のパワースポットにもなっているらしい。オレも赤い鳥居をくぐってお参りした。
それとは別に「大圓寺」にはお仙と鈴木春信の碑が建てられていて、それも往時を偲ばせる。さらに歩を進めると1603年創建の「西光寺」で韋駄天像を発見。韋駄天は足の速い仏神とされ、足腰病平癒、足腰強化のご利益があるという。力強いお姿。ランナーや自転車乗りのオレにとっても見逃せないな。
そこからほど近い「瑞輪寺」。やけに風格のあるお寺だと思ったら、ここは徳川家康創建だった。なんでも家康の幼少時、学問の師範を務めた日新上人に謝儀をあらわして本堂創建の約束を結んだそう。よく見れば、各所に葵の御紋が配されている!幕末江戸城無血開城の立役者でもある山岡鉄舟が建立し、そのお墓や落語家・三遊亭円朝の墓所もあるのが「全生庵」だ。のびやかな風格あり。こちらには金色に輝く大きな谷中大観音の姿も。開眼は平成だが新たなランドマークとなっている。
さて、谷中江戸さんぽの最後は『いせ辰』で締めくくりたい。幕末の1864年創業の江戸千代紙・おもちゃ絵の版元にして専門店。美しくも粋な、今に残る江戸デザインの数々。気に入りの千代紙を手に帰路に着こう。
【功徳林寺(くどくりんじ)[笠森稲荷]】
現在は谷中唯一の浄土宗の寺。かつて「笠森稲荷」があった地でもあり、その門前の茶屋の一人娘のお仙は、江戸三大美人のひとりとして浮世絵にも描かれた。そのお仙ゆかりの笠森稲荷堂が境内に。清々しく美しい気に満ちている
[住所]東京都台東区谷中4-2-5
【西光寺(さいこうじ)】
1603年、最初神田に創建された新義真言宗寺院。境内右手には立派な韋駄天像と十一面観音菩薩が並び立っている。「韋駄天走り」の語源、韋駄天は足の速い天神だ。境内には狸の置物も。こちらは「他抜き」の語呂合わせ!
[住所]東京都台東区谷中6-2-20
【瑞輪寺(ずいりんじ)】
幼少時に学問教育の師範であった日新上人に謝意をあらわし、1591年に徳川家康が創建。格式と伝統のある日蓮宗のお寺だ。境内の鐘楼堂は徳川三代将軍家光の寄進により建立されたものとか。各所に配された葵の御紋も印象的だ
[住所]東京都台東区谷中7-6-9
【全生庵(ぜんしょうあん)】
江戸開城の功労者、山岡鉄舟が、幕末・維新で国事に殉じた人々を弔うために明治16年に建立。臨済宗の禅寺だ。初代三遊亭円朝の墓もあり、毎夏の円朝忌には彼の収集した幽霊画も公開。大きな黄金色の谷中大観音も!
[住所]東京都台東区谷中5-4-7
【大圓寺(だいえんじ)】
1500年代に上野清水門脇に創建されたという日蓮宗の寺院。境内に「錦絵開祖鈴木春信」碑と「笠森阿仙の碑」がある。お仙の碑を記したのは永井荷風(お仙は功徳林寺の項参照)。ふたりはやはり江戸のスターだ
[住所]東京都台東区谷中3-1-2
【『いせ辰』谷中本店】
江戸末期の1864年に千代紙・おもちゃ絵の版元として神田で創業。震災や戦災で板木を失うも復刻を続け、今に伝統的な技術と、本来の千代紙の姿を伝えている。店内には華やかで粋な紋様の千代紙や縁起の江戸犬張子も
[住所]東京都台東区谷中2-18-9
■おとなの週末2025年6月号は「満喫!ニッポンの生ビール」
撮影/西崎進也、取材/池田一郎
※2025年5月号発売時点の情報です。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。