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セダンのデザインとして秀逸

初代アリストが登場した時のインパクトは絶大だった。何よりも低いノーズ&ショートデッキのスポーティ感、伸びやかでボリューム満点のエクステリアデザインは、トヨタ車は言うまでもなく日本車でも群を抜いた存在感を放っていた。薄っぺらさなど微塵も感じない塊感。筆者もこんなにボリュームがあってカッコいい日本のセダンがあるんだ、と感嘆したのを覚えている。

トヨタは初代アリストのデザインを彫刻的な美しさと表現していたが、まさに言いえて妙だ。この時代のトヨタ車のデザインでは、初代エスティマと初代アリストが群を抜いていたと思う。

リアコンビのデザインは当時の日本車でも超個性的だった

トヨタがジウジアーロの関与を公表

初代アリストのデザインのカギはイタリア工業デザイン界の巨匠のひとりジョルジョット・ジウジアーロ氏。日本メーカーとジウジアーロ氏の関係は深く、いすゞ117クーペ、ピアッツァ、スズキフロンテクーペ、初代アリストとほぼ同時期にデビューしたスバルアルシオーネSVXなど多岐にわたる。これらのクルマがジウジアーロ作品と呼ばれるのに対し、初代アリストはジウジアーロ氏率いるイタルデザインが手掛けたベースデザインをトヨタ社内のデザインチームが仕上げたという違いがある。トヨタは1970年代からジウジアーロ氏と関係を構築し、初代パブリカスターレット、E80系カローラ/スプリンターなど、ジウジアーロの関与が噂されながらもトヨタは非公表としてきたが、初代アリストでは初めてトヨタがジウジアーロ氏の関与を公表した。

日本車とジウジアーロといえばいすゞ117クーペがあまりにも有名

一般的に初代アリストは、イタルデザインが1990年に公開したジャガーケンジントンのデザインがベースとなっているといわれているが、初代アリストの開発は1988年には固まっていたことを考えると、ジウジアーロ氏が初代アリスト用に考案したデザインがケンジントンに盛り込まれた可能性だってゼロではない。

初代アリストのボディサイズは全長4865×全幅1795×全高1420mm。今の基準で見れば小さい部類に入るかもしれないが、当時の日本のセダンとしてはかなり大きい。それは前述のとおり、国際基準で開発されたからだ。

エンジンは、3L、直6DOHCと3L、直6DOHCツインターボの2種類。圧巻は3L、直6DOHCツインターボで、そのスペックは最高出力280ps、最大トルクは44.0kgmを誇った。当時の日本車は280psのメーカー自主規制という悪しき慣例があったため280psが上限だったが、44.0kgmのトルクが強烈だった。このエンジンはスープラにも搭載されていたスポーツユニットで、当時のポルシェ911にも匹敵する心臓部をセダンに移植。マークII系にも280psのグレードは設定されていたが、その加速感が薄っぺらく感じるほど初代アリストの重厚なまでの加速は異質だった。

1990年に発表されたコンセプトカーのジャガーケンジントン。Cピラーをはじめ、アリストをほうふつとさせるところが多数存在する

初代アリストの運動性能は別格

初代アリストはデビュー時に、1680kgの重量級ボディならゼロヨンは14秒台で走り抜ける、ということをトヨタが公表していた。自動車雑誌『ベストカー』では、デビュー後に速攻でライバル車(マジェスタ、クラウンロイヤル、シーマ、セドリック)とともにJARI矢田部テストコース、つくばサーキットに280ps/44.0kgmの3Lツインターボ搭載の3.0Vを持ち込みフルテスト。

圧巻の動力性能に加えてハンドリング性能でもライバルを寄せ付けなかった

■初代アリスト
・0-400m加速:14秒29
・0-1000m加速:26秒45
・筑波サーキットラップタイム:1分12秒02

■2代目シーマ
・0-400m加速:15秒99
・0-1000m加速:28秒71
・筑波サーキットラップタイム:1分16秒01

当時のクルマ好きが最も気になっていたアリストと日産シーマのテスト結果を比較すると、初代アリストがいかに別格だったかがわかる。そのほか持ち込んだライバルでアリストに迫る性能のモデルはなく、突き抜けぶりがハンパない。

加速性能に凄さもさることながら、ハンドリング性能にも優れていたこともアリストの別格感を物語っている。

日本のプレミアムスポーツセダンで初めて国際基準で開発された
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市原 信幸
市原 信幸

市原 信幸

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