“この世とあの世の境”を体現した「能舞台」に注目
隈氏の能舞台は、ダイニング『割烹料理 りょうぜん』のテラスにある。柱や垂木で舞台を覆い、背後の竹林や頭上の空が建築と一体になるように設計している。水盤の上にあり、浮遊しているように見えるところも特徴的だ。
「このホテルは、京都・東山の霊山(りょうぜん)というエリアにあり、古くから“この世とあの世の境”、“現世と霊界の境”と言われている場所に位置しています。能舞台も本舞台と鏡の間は、この世とあの世とされ、橋掛かりはその間を繋ぐ場所と解釈されており、この地が持つ世界感を表現しています」と、ホテルのスタッフ。この場所では年に数回、「能観劇」や月に数回、日程限定で「芸舞妓鑑賞」も楽しめるそうだ。
能舞台の裏の竹林はホテル建設前は荒れ果てていたが、再整備された。滞在時はこの竹林の道を散歩できるのもうれしい。
和とモダンが融合した客室で、心穏やかな時間を
数寄屋造りを思わせる客室は、『橋本夕紀夫デザインスタジオ』(東京・神宮前)が担当した。橋本夕紀夫氏(1962~2022年)は、高級ホテル『ザ・ペニンシュラ東京』(東京・有楽町)や『八芳園 白鳳館』(東京・白金台)のデザインも担った日本を代表するインテリアデザイナーだ。ベッドの脇には大きなヒバの木を使用したバスタブが配置され、まるでオアシスのような空間だ。
入浴剤はほうじ茶や酒粕、柚子など、3種から選べる入浴剤を利用できるのもうれしいポイント。土地に根差した自然由来の香りは、深いリラックスに導いてくれる。
金箔の壁には、木材の表面に独特の凹凸をつけて意匠性を高める伝統的な加工技術、「なぐり加工」が施され、和の趣がありながらもエレガントな空間に仕上がっている。
客室は、大きな窓から京都市街のパノラマビューを楽しめる部屋のほか、プライベート温泉と小庭園に竹林、能舞台を見渡せる「ONSENリトリート」などもあり、開放感たっぷりだ。







