25年前、山手線の車内で年越しそば
今から25年前の大晦日。時は2000(平成12)年12月31日のことである。21世紀を迎えるにあたりJR山手線に特別なイベント列車が運転された。その名も「21世紀記念列車 21(世紀へ)5(GO)」〔にじゅういちゴー〕。
使用した車両は、当時の山手線の主力車両だった205系電車ではなく、普段は東海道線で快速列車として使用していた“215”系電車を使用するという、奇抜なアイディアによるものだった。そしてこのツアーには、なんと「年越しそば弁当」が付いていたのだ。
この臨時列車は、JR東日本が企画したツアーで、募集人員は列車定員の650人だった。価格は、普通車2000円、グリーン車2240円という破格値で、山手線1周の乗車券(運賃・料金)に「年越しそば弁当」が付いていたのだ。無論、満席になったことは言うまでもないが、山手線に2階建て車両が走ったことも驚きだった。
2001年の大晦日にも、同じような列車を走らせているが、それ以後、このような2階建て車両を使用したツアーが山手線で実施されることはなかった。都心の夜景を眺めながら、山手線の2階席で味わう“年越しそば弁当”の味は、格別のものだったに違いない。今のようにスマホで気軽に撮影することが叶わなかった時代ゆえ、年越しそば弁当の写真は残されていない。
山手線のホームに、現在「駅そば」があるのは品川駅(内回りホーム)、五反田駅、目黒駅だけになってしまった。駅そばの店構えといえば、ドアも壁もない“吹きさらし”の店舗が多かった。もちろん、いまでもそうした店構えの駅そば・うどんは全国に点在する。しかし、今の時代は駅のリニューアルによって店舗を新しくする場合は、懐かしい昭和の造りではなく、ドアや壁などで外部とを遮へいしなければ、保健所から”営業許可”がおりないという。時の経過とともに、昭和の懐かしい「駅そば・うどん」の光景は、過去のものになろうとしている。
文・写真/工藤直通
くどう・なおみち。日本地方新聞協会特派写真記者。1970年、東京都生まれ。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物に関連した取材を重ねる。交通史、鉄道技術、歴史的建造物に造詣が深い。元・日本鉄道電気技術協会技術主幹、芝浦工業大学公開講座外部講師、日本写真家協会正会員、NPS会員、鉄道友の会会員。















