旬の食材は食べて美味しいだけではなく、栄養もたっぷり。本コーナーでは魚や野菜、果物など旬食材の魅力をご紹介します。
さて、今回のテーマとなる食材は?
文/おと週Web編集部、画像/写真AC
■福岡では……
正解:かつお菜
難易度:★★★★☆
間引きされた葉も美味しい
かつお菜はアブラナ科の葉野菜で、見た目は高菜に似ていますが辛味がなく、煮ると旨味が際立ちます。
葉は40~50cmほどの長楕円形で、表面が細かく縮れているのが特徴です。茎は比較的短く、株元から放射状に葉が立ち上がるため、全体にこんもりとした様になります。
葉はほうれん草より厚くしっかりしていて、煮ても崩れにくく、噛むと独特の歯ごたえがあります。
また、「出汁いらずの野菜」として知られています。煮込むと自然に旨味が染み出し、出汁を別に用意しなくても料理が美味しく仕上がるので、便利な食材として古くから親しまれてきました。
旬は年に二度あり、初夏と冬に収穫されますが、美味しいのは冬のものです。とくに12月から1月にかけて収穫されたものがもっとも美味しいといわれています。その理由は、寒さにあたることで葉に厚みが増し、旨味も濃くなるからです。
ちなみに、秋には間引きされた若い株が「ハザ」として出回り、柔らかく食べやすいため家庭料理にもよく使われます。
江戸時代の中期には筑前(現在の博多周辺)を中心に九州北部で広く栽培されていましたが、時代が進むにつれて小松菜やほうれん草に押され、生産量は減少しました。それでも博多の正月料理には欠かせない存在として栽培が続けられ、現在も福岡市や糸島、北九州などを中心に育てられています。
福岡の正月に欠かせないかつお菜を使った雑煮は、焼いた丸餅を椀に入れ、鰤や鶏肉などとともに澄まし仕立てで仕上げます。ここにかつお菜を加えることで、鰹節を使わなくても十分な出汁の風味が出るとされます。
アクが少なく下処理がほとんどいらないので、おひたし、漬物、炒め物、煮浸し、鍋物など、幅広い料理に活用できます。
福岡ではおにぎりの具材にすることもあり、かつお菜の風味がご飯に染みて独特の味わいになります。
漢字では「勝男菜」と表記されることから、勝負事や祝い事にふさわしい縁起物として結婚式や正月の雑煮などに供されてきました。



