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自然派医師・本間真二郎さんの腸内細菌を元気にする日々の食卓。3回目は「手づくり豆腐」です。乾物の大豆をひと晩かけて戻し、煮立たせて作る本格的なレシピです。手間はかかりますが、ひとたび食べるとその美味しさにびっくり。

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腸内細菌を元気にする食こそ 真の感染予防につながる

自然派医師の本間真二郎さん。栃木県那須烏山市七合診療所の所長をつとめる。

栃木県那須烏山市の自然派医師・本間真二郎さんは、自然に沿った暮らしをすることで、多くの病気がよくなり、からだの不調も改善される――という考えのもと、2009年から、みずから米や野菜を育て、調味料も手作りする暮らしを実践しています。

「新型コロナという感染症に際しても、過度な消毒やワクチンといった外の力に頼るのではなく、免疫の力をつかさどる腸内細菌を元気にして、からだの内なる部分から備えていくことこそが、真の感染予防となります」という考えです。

そのためには、日々の食生活が何よりも大切です。本間真二郎さんの日常の食と暮らしを追った書籍『病気にならない食と暮らし』(講談社ビーシー)のなかから、そんな腸内細菌を元気にする食生活について本間真二郎さんの日々の食生活を3回に分けて拝見していきます。その3回目は、究極の手づくりでもある豆腐と納豆です。本題に入る前に、本間真二郎さんの食に対する考え方からまずは披露していただきました。

自然に沿った食の基本は和食と発酵食品

本間真二郎さんの日々の食卓に並ぶものは、米、野菜から豆腐、調味料まで、その多くは手づくりのもの。

日本には、発酵の文化があります。みそ、しょうゆ、みりん、酢、酒など、毎日の食卓でおなじみの調味料類は、まさに発酵がつくり出す賜物。納豆や漬けものなどもそうですね。日本の食を彩る発酵文化は、世界でいちばん進んでいると言えるでしょう。

わが家では何種類もの調味料を自作していますが、これらの発酵を支えているのは、さまざまな微生物です。微生物のなかでも、日本の調味料づくりはすべて「麹菌」から始まります。私が調味料づくりを始めたきっかけは、自分で天然の麹菌をとりだすことができたからなのです。自分の住む土地の麹菌を使うことにより、自然に沿った生き方の根本である「身土不二」という考え方を、ほんとうの意味で実践できるからです。

その土地の微生物の力が食べものをつくる

身土不二とは、私たちのからだと住んでいる土地は同じもの、切り離せないという意味です。生活していくうえで、私たちが住んでいる土地と一体になっていくことが非常に重要です。つまり、その土地でとれる旬のものを食べるのが、いちばんからだにいい。そして、その食べものをつくっているのが、その土地の微生物というわけです。

数年前、天然菌でつくられている米麹から純粋な麹菌をとりだすことに成功したことが、わが家の発酵生活の始まりでした。私たちの田んぼにも、秋になると稲穂に麹菌のかたまりである「稲だま」ができます。現在はこの稲だまから麹菌をとりだし、みそやしょうゆなどをつくっています。

本間真二郎さんはお仲間とともに米も無農薬で自家栽培。収穫後は天日干し玄米としていただく。

発酵食品こそが腸内環境をととのえる

みそ、しょうゆ、納豆などの発酵食品は、昔から日本人の健康を支えてきました。発酵食品がからだにいい理由のなかで、もっとも重要なことは、私たちの健康に大きな影響を与える「腸」にいいものだということ。腸内には、腸内細菌が百種類、総数にして約100兆個いると言われています。それらは、私たちが健康に生きていくための多くの役割を担っています。

腸内細菌の状態がいいというのは、次のふたつの状態を言います。ひとつ目は、腸内にできるだけ多種類の腸内細菌がいることです。それぞれの細菌の働きが異なりますので、まずは善悪関係なく、菌の種類が多いほうが人のできないことも含めてたくさんの働きをします。ふたつ目は、善玉菌が悪玉菌より優位な状態で、腸全体を善玉菌が統括している、いわゆる発酵している状態であることになります。

最近の食生活は、食べものから得られる菌が極端に少なくなっています。本来の発酵食品は菌が多く含まれており、食べることで腸内細菌の種類が増えます。また、たとえ発酵の過程で菌が死んでしまっていても、菌がつくったものが人や腸内細菌の役に立つので、腸内環境がととのえられていくのです。

微生物たちが人々の健康や環境を守っている

発酵の過程に微生物は欠かせません。その微生物も、私たちと同じように生きているもの。それぞれの土地には、それぞれ異なる微生物(菌)が生きています。その土地の微生物には、その土地に住む生命体全体の環境をととのえる働きもあるのです。

どの土地でもいい菌として働くものもありますが、世界中のすべての場所で同じ菌を同じように増やせばいいというわけではありません。100メートル離れれば、日あたりも、風の吹き方も、雨のふり方もみんな違いますよね。土地の微生物は、土地によって全部違うのです。私たちの住む那須烏山には那須烏山の、北海道には北海道のいい菌を増やさなければなりません。

そういう意味で、ここ那須烏山の田んぼから麹菌がとれたことは、非常に意味のあることでした。この麹菌が発酵の始まりであり、すべての調味料づくりを統括している微生物だからです。そしてできた調味料を毎日食べることが、その土地にふさわしい私たちのからだをつくってくれるのです。

初めての加工食品づくり。豆腐と納豆を手づくりする

みそやしょうゆなどの調味料を手づくりすることは、発酵させる時間も手間もかかりますが、楽しいうえに、その味は格別です。対して、もっと短時間でできる加工食品の代表は豆腐や納豆です。一度手づくりしてみると、やめられないおいしさで、市販のものには戻れなくなります。ぜひ、挑戦してみてください。

「手づくり豆腐」のレシピ

豆腐は家で自作できます。大豆をひと晩かけて戻し、しぼった豆乳ににがりを加えてかため、水をしぼるだけ。自家製豆腐は、一度食べるとやめられないおいしさです。

【材料】(約2丁分)
大豆…300g
天然にがり…20ml

【必要な道具】
豆腐の型(10cm×14.5cm×8.5cm)
木綿の袋

【つくり方】
(1) 大豆を洗い、5カップの水に浸しておく(夏は半日、冬は1日)。厚手の大鍋(5lほど)に1.2lの水を用意する。大豆と水(浸していた水と大鍋に用意した1.2lの水をあわせて)を2:5くらいの割合で加えながら、ミキサーにかける。

手順(1) 大豆はいわゆる乾物の大豆を使います。300gでだいたい2丁分。

(2) 残った水を煮立たせ、そこに(1)を一気に入れ、木べらで底をかきまわしながら中〜強火で煮る。沸騰し始めたらすぐに火を弱め、8分ほど煮る。

手順2 水5にカップに浸し、ひと晩かけて戻した大豆は水を加えながらミキサーにかける。大豆2:水5くらいの割合。厚手の大鍋でに入れ、底からかきまわしながら煮ていく。

(3) (2)を木綿の袋に流し込む。

手順3 とろとろに煮上がったら、ボウルに置いたざるに広げた木綿の袋に流し込む。

(4) ボウルに置いたざるの中で木綿の袋をしぼる。このしぼり汁が豆乳で、袋の中に残ったのがおから。

手順4 ざるの中で木綿の袋をしぼり、ボウルにしぼり汁(豆乳)を移す。

(5) にがりに水80lを加え、にがり水をつくる。豆乳を弱火にかけ、鍋底をかきまわしながら70〜75度に温め、火を止める。木べらに沿わせながらにがり水を入れ、大きく十文字に2回混ぜてふたをし、15分待つ。

手順5 手順4のしぼり汁(豆乳)を鍋に移し火にかけ、にがり水を加える。市販の天然にがり20ml に水80mlを加えたもの。

(6) 型の中にぬらしたさらし布を敷き、そこに(5)をおたまですくって入れる。布で豆腐を包み、木ぶたをのせ、コップ1杯ほどの重しをのせておく。15分後、型から外し、水に数回さらせばできあがり。*豆腐は容器に入れ、水につけて保存する。毎日水を交換して、冷蔵庫で2〜3日保存できます。

手順6 用意した豆腐の型にさらし布を敷き、手順5の鍋からおたまですくって入れていく。この後は布で豆腐を包み重しをのせる。もうすぐ完成。

「手づくり納豆」のレシピ

手づくり納豆の納豆菌は、市販の納豆1パック分を利用する。

市販されているものなど、好みの大豆で、市販の納豆から簡単に自家製納豆をつくれます。納豆菌はとても強いので、ほかの発酵中の食品とは、かならず別につくりましょう。蒸した大豆に自家製納豆の残りを加えれば、培養し続けることができます。

【材料】(つくりやすい分量)
大豆(できれば小粒のもの)…250g
納豆…市販のもの1パック分
たれ(めんつゆ…大さじ2、酒…大さじ2、しょうゆ麹…大さじ1)

【必要な道具】
圧力鍋、保存容器、清潔な布またはキッチンペーパー、発泡スチロール、育苗マット(なければ湯たんぽでも可)

【つくり方】
(1)大豆を洗い、たっぷりの水(大豆の3倍以上)に半日ほど浸しておく。
(2)圧力鍋に蒸し器を入れて水をはり、弱火で20分ほど蒸す。
(3) (2)の大豆が熱いうちに、納豆を混ぜる。保存容器にうつし、キッチンペーパーを巻いたふたをかぶせる(湿度も必要なのでふたをするが、水滴が落ちないように)。
(4) 20〜24時間、40度程度をキープした発泡スチロールの中などで保温する(育苗マットを使うと便利)。
(5) 納豆をとりだし、冷蔵庫に半日以上入れて熟成させる。
(6) 納豆のたれをつくる。酒とめんつゆを小鍋に入れて火にかけ、弱火で1分ほど煮詰める。粗熱がとれたらしょうゆ麹を混ぜる。

本間家の大豆は みずから育てた本間大豆

みずから育てた本間大豆。秋に豆を刈りとり、冬まで干して乾燥したら、豆をたたいて殻をむく。

多い年には5〜6kgの大豆を収穫し、それを「本間大豆」と呼んで使っています。みそ、しょうゆ、納豆、豆腐づくりのために使い、1年間で使いきるようにします。ほかにも大豆ナゲットや豆スープなどのおかずや、おやつづくりにも役立てています。秋に豆を刈りとり、冬まで干しておきます。そして、冬の晴れた日に乾燥した豆をたたいて落として大豆の殻をむく作業をします。ホーローの容器に入れて保存します。

本間真二郎(ほんま・しんじろう)氏のプロフィール

医師、七合診療所所長。1969年、北海道札幌市に生まれる。札幌医科大学医学部を卒業後、札幌医科大学附属病院、道立小児センターなどに勤務。2001年より3年間、NIH(アメリカ国立衛生研究所)にてウイルス学、ワクチン学の研究に携わる。帰国後、09年、栃木県那須烏山市に移住し、現在は同市にある「七合診療所」の所長として地域医療に従事しながら、自然に沿った暮らしを実践している。近著に『感染を恐れない暮らし方 新型コロナからあなたと家族を守る医食住50の工夫』(講談社)があり、そのビジュアル版『病気にならない食と暮らし』(講談社ビーシー)を、20年12月、オンデマンド版として刊行。

【新刊紹介】
『病気にならない食と暮らし』オンデマンドペーパーバック版(税込み1980円、講談社ビーシー)
那須烏山の自然派医師・本間真二郎さんの春夏秋冬の食と暮らし方を、たくさんのカラー写真で再現した名著が、待望のオンデマンド版となりました。麹、みそ、しょうゆをはじめ手作り調味料、発酵食品の作り方、春夏秋冬の食卓、定番のおかず、干し野菜のすすめ、ごはんのおともなど、自然な暮らしでの実践レシピがいっぱいです。

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※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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おとなの週末Web編集部 堀
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