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ワインの味がわかる人はコロナに強い?【 ワインの海、小ネタの浜辺】第3話

ワインの味がわかる人はコロナに強い?【 ワインの海、小ネタの浜辺】第3話

ワインのテイスティング能力と新型コロナウイルスへの耐性との間に相関関係があるという興味深い研究結果がレポートされた(Wine-Searcher 2021年6月1日)。

perm_media 《画像ギャラリー》ワインの味がわかる人はコロナに強い?【 ワインの海、小ネタの浜辺】第3話の画像をチェック! navigate_next

味覚が敏感な「スーパーテイスター」は人口の25%程度

味覚が敏感な人は、コロナに対する耐性が強いという

記事によると、この研究報告は、米国医師会が運営するオンラインジャーナル「JAMAネットワーク・オープン」に掲載されたもの。内容を簡単に説明すると、ワインのテイスティング能力の高い人は新型コロナウイルスに対する耐性が強く、逆にワインの味のわからない「味音痴」の人はコロナに感染したり、症状を発症したり、入院したりする可能性が高い

我々には特に苦味を知覚するTAS2R38という受容体が備わっていて、この受容体が活性化すると、繊毛の作用が強まり、粘液の産生が高まる他、一酸化炭素の生成を促す。一酸化炭素は新型コロナウイルス特有のスパイクタンパク質を阻害することが知られている。

研究によると、味覚が敏感な「スーパーテイスター」は人口の25%程度いる一方で、味覚が鈍感な「ノンテイスター」も25%、つまりどちらも4人に1人の割合で存在するという(残りの50%の人たちは、そこそこ味覚がある「ミディアムテイスター」に分類される)。

勘違いしないで欲しいのは、この研究結果が語っているのは「ワインを飲めばコロナに罹りにくい」ということではない(お茶や赤ワインに多く含まれるタンニンがコロナの感染予防の助けになるかもしれないという、別の研究報告はある)。ここで言っているのは、たまたま生まれつき味覚が敏感な人が新型コロナウイルスに対する比較的強い耐性を有しているらしいということだ

造り手、収穫年まで当ててしまうテイスティング能力の持ち主はいるのか?その答えは……

ワインのテイスティング能力には大きな個人差がある

ところで、ワインのテイスティング能力といえば、よく漫画やドラマにはブラインドテイスティング(ラベルなどワインの情報を隠して行う試飲)で、ワインの産地や品種、造り手、収穫年までズバッと当ててしまうシーンが出てくるが、あんなことって本当にあり得ると思いますか?

30年近くワインの現場を取材してきた経験から言わせてもらうと、その答えはYESであり、NOでもある。今日は、NOだと思った方のエピソードを紹介したい(YESの方はいずれまた)。

今から10年くらい前、海外の某ワイン産地で興味深いイベントが開催された。会場となったワイナリーのレセプションルームには10人が囲める大きな丸テーブルが5つ。すなわち50人のワイン関係者がテーブルについていた。僕もその1つにいた。それぞれの目の前には5つのグラス。中身は同一品種の赤ワインで生産者が異なる

各テーブルには、ここに出されたワインの生産者が1人ずつ参加していた。まず、それぞれの生産者が自分のワインについて、製法や味わいの特徴を語る。それを手がかりに参加者はどれが誰の造ったワインかをブラインドテイスティングから推し当てるという趣向だ

このイベントの会場には、5つの丸テーブルの他に、小さなテーブルが一つ用意されていた。そこにはワイン業界では知らぬ人のない大物ワイン鑑定家が「特別扱い」で鎮座して、我々と同様にテイスティングを行っていた

大恥をかいた世界屈指の大物鑑定家

プロフェッショナルにとっても試飲は「恐ろしいもの」

試飲時間が終わると、司会者はまず、この大物鑑定家に彼の答えを発表させた。その結果は無残にも正解ゼロ‥‥。しばらくの間、会場に微妙な空気が流れたが、やがて会は何事もなかったようにそのまま先に進められた。まるで大物鑑定家はそもそも最初からそこには臨席していなかったかのように。

50人の中に、全問正解者は一人もいなかった。正直に告白すれば、僕が当てたのは2つだけ。同じテーブルにいた都内三つ星レストランのシェフソムリエ氏は3つを当てた(1つ間違えば自ずと2つ不正解になるので、3点はこの日の最高得点だった)。

全問正解者が出なかったのには、ちょっとしたトリックがあったことを参加者の多くが指摘している。というのも、会場(ワイナリー)に入る際に、ウェルカムドリンクとしてワインが一杯振る舞われたのだ。そしてこれと同じ銘柄のワインが5つの中に入っているはずだったのだが、振る舞われたものと試飲に供されたものの味があまりにも異なっていた(コルクの状態の違いだったのかもしれない)。

興味深かったのは、5人の生産者の中に、自分自身が造って会場に持ち込んだワインを当てられない人が複数いたこと。この事実が、メンツを潰された大物鑑定家の失意を少しは紛らわせたかどうかはわからならいが。

ことほどさように、人の味覚・嗅覚とは微妙なものである。僕は折に触れ、このエピソードを思い出しては、自戒の念も込めて、じっくりと味わい直している。

ワインの海は深く広い‥‥。

浮田泰幸

うきた・やすゆき。ワイン・ジャーナリスト/ライター。広く国内外を取材し、雑誌・新聞・ウェブサイト等に寄稿。これまでに訪問したワイナリーは600軒以上に及ぶ。世界のワイン産地の魅力を多角的に紹介するトーク・イベント「wine&trip」を主催。著書に『憧れのボルドーへ』(AERA Mook)等がある。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
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