【閉店】風紋(最寄駅:新宿三丁目駅)
新宿の外れにポツンとあるこの店は、開店して53年目。「一人の店主で50年続いたお店は新宿でも少ないんですって、ほほほ」と87歳になるマダム、林聖子さんは楽しそうに笑った。 淡々とした風情の聖子さんは、太宰治の短編小説『メリークリスマス』のヒロイン、シズエ子のモデルだ。聖子さんの母と太宰氏に親交があり、子供の頃から氏にかわいがられた。そんな縁からバーには多くの文人が通ったという。 常連の一人、檀一雄さんは、出版社での缶詰状態を抜け出しては息抜きにやってきた。「キッチンを乗っ取られちゃって」と聖子さん。料理上手な檀氏らしいエピソードが、なんとも微笑ましい。 ふらりとやって来る中上健二氏は、時おり新聞広告の裏に原稿を書いていたとか。 カウンターに座るとセピア色に焼けた漢字の品書きが目に飛び込んでくる。「ライ麦パン入荷しました」と書いてあるそうだが、まったく読めない。実は造語で、まだ日本では珍しい頃に福井県鯖江からライ麦パンを取り寄せていた名残りだとか。書いたのは塩田丸夫氏で、氏の茶目っ気ぶりが目に浮かぶ。次々と思い出を語る気取らない聖子さんとのおしゃべりが、懐かしい昭和の文壇世界を偲ばせる。
ウイスキーや焼酎など
一杯どれも500円
【閉店】風紋
電話番号 03-3354-6696
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