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撮影/谷内啓樹 写真提供/宮内庁、環境庁、東京国立近代美術館 本館・工芸館、国立公文書館、PIXTA 取材/赤谷まりえ
参考文献/『図説 江戸城の石垣』(鈴木 哲著・歴史春秋社)、『皇居 吹上御苑、東御苑の四季』(近田文弘著・NHK出版)、『これが皇居です』(宝島社)

はじめに

東京の中心地にありながら江戸時代から続く歴史と、豊かな自然の残る場所がある。日本人の心のよりどころとも言える、皇居だ。皇居内には気軽に入れるエリアもあり、遺物に触れ、動植物を愛でながらの散策にぴったりなのだ。元号が“令和”に変わることもあり、ますます注目を集めている皇居にぜひ一度、足を運んでみてほしい。世界に誇る、日本の四季の彩りを皇居散策で楽しむ。

皇居・皇居周辺の地図(アクセス)

丸の内、日比谷、東京駅から徒歩圏内!大手町、日比谷、東京など多くの駅からアクセスが簡単で、散策後も買い物や食事へも出かけやすい。逆に銀座方面に出かける際、ふらりと足を伸ばしてみるのも楽しい。

皇居外苑

東京駅あるいは大手町からすぐの皇居。中に入らずとも二重橋をはじめとした歴史的な建造物や緑豊かな自然を楽しむことができる。まずは、皇居外苑の見どころからご紹介していきたい。

皇居外苑について

時代が交差する「東京」の玄関口

敷地面積約115万平米、東京ドーム約25個分の広大な緑の空間。木々が生いしげり美しい四季を伝える皇居に沿って、線路も道路も、大きなカーブを描くようにして伸びる。これが高層ビルがわんさか立ち並ぶ、大都会・東京の中心風景である。

皇居外苑は、天皇陛下の「御所」や「宮殿」を取り巻く濠の外周に沿った地域をぐるりと指すために「外苑」と呼ばれている。その内濠に沿って点在する、旧江戸城の白亜の遺構を間近で観察できるのも特徴だ。

昭和の初期頃に植栽されたクロマツの広場は、今や現代的な高層ビル群とも不思議に溶け込み、優しい時の流れを体現しているかのようだ。太田道灌の築城に始まり、徳川家康以降428年にも渡って“江戸・東京”の玄関口となったのが現在の外苑エリアである。

新時代を迎える用意が整った今こそ、都の歴史に思いを馳せ、ぜひ足を運んでみたい。

坂下門

西の丸の坂下に位置する。現在は宮内庁の通用門として使用され、正月や天皇誕生日などの一般参賀の時にのみ開放される。

桜田豪

半蔵門から桜田門に向かう下り坂をつなぐ、大きな濠。石垣より土塁中心に築かれており、夏は目にも鮮やかな緑の芝生が楽しめる。

桔梗門(ききょうもん)

由来は瓦に太田道灌の桔梗紋が入っていたことから。皇居参観はこの門から出入りする。右側は江戸時代から現存する「巽(たつみ)櫓」。

楠木正成公像

皇居前広場でたたずむ約8mの騎馬像は、南北朝時代の武将・楠木正成公。高村光雲作で、明治33年(1900)に献納された。

二重橋

皇居正門にかかる石橋と、中門にかかる鉄橋を望む。本来二重橋とは、奥の鉄橋のみを指す。写真中央・伏見櫓の奥に「宮殿」がある。

桜田辰巳櫓(さくらだたつみやぐら)

江戸城本丸から見て東南(巽)にある櫓。桜田濠付近より水位が近く、水面に映る白壁の美しさを堪能でき、写真スポットとして人気。

外桜田門

西の丸防御のため、特に大きく作られた門で誰でも実際に通ることができる。大老・井伊直弼の暗殺事件「桜田門外の変」でも有名だ。

皇居東御苑(二の丸・三の丸)

東御苑は、旧江戸城本丸・二の丸・三の丸の史跡の一部を含み、皇居の附属庭園として整備された地区のこと。登城する殿様や大名気分で、天下統一を果たしたありし日の巨大城郭の姿を思い浮かべながら歩いてみよう。

新元号を前にして振り返る「皇居の歴史」

皇居はいつから「皇居」としてあるのだろうか?

現在の東京都千代田区一番一号は、歴史を遡ること長録元年(1457)、室町時代の武将・太田道灌が「江戸城」を築いたことに始まる。その後天正18年(1590)、天下を治めた徳川家康が入城。今日の東京の町割の元となる大城郭を築いた。

さらに時代は大きく下り、明治元年(1868)、幕府はついに倒れ、江戸城は東幸した天皇陛下の住まいとなる。この時点ではしかしまだ「皇居」は登場しない。

実は明治21年(1888)から太平洋戦争後の昭和23年(1948)までは、旧江戸城は「宮城」という名前で呼ばれていた。つまり皇居が「皇居」として親しまれるようになった歴史は意外にも浅く、わずか71年前の出来事なのだ。

東御苑は、戦後に入り一般公開を始めた皇居のお庭のこと。日本の四季を彩る多様な植物が江戸時代の遺構を飾る。

二の丸庭園の御池

九代将軍・家重の時代の図面と発掘調査を元に、昭和43年(1968)に復元された回遊式庭園。池には鯉や亀などが泳ぎ、優雅な時間が流れる。

梅林坂

宮内庁書陵部へ続く手前にある坂で、約70本もの梅の木が植栽されている。太田道灌がかつて菅原道真を祀ったことに由来する。

諏訪の茶屋

明治45年(1912)に吹上御苑に建てられた書院茶屋を二の丸庭園に移築したもの。日本庭園ではモミジやツツジなど四季折々の花が楽しめる。

大手門

大手門は江戸城の最上位にあたる正門。諸大名たちは基本的にこの門から登城した。門の渡櫓部分は昭和43年(1968)に再建されたもの。

白鳥濠

本丸と二の丸の間にあり、城内最古とされる家康時代の石垣が囲む。石の積み方が数種混在し、当時の技術研究の様子が偲ばれる。

汐見坂(しおみざか)

坂の上から江戸湾が見えたことから付いた名で、現在はビル群を一望できる。近くの石垣には当時の石工が施した化粧模様がしっかりと残る。

平川門跡

江戸城の鬼門に位置する。別名を「お局御門」ともいい、大奥女中の通用門にもなっていた。また、死者や罪人もこの門から外へ出していた。

皇居東御苑(本丸)

かつて多くの御殿が立ち並んだ本丸跡地。今は広々とした芝生が広がり、江戸城の隆盛を忍ばせる。ビル群に囲まれながらも、都心にすっぽりと空いた贅沢な緑地と空、遺構の魅力を味わいたい。

皇居東御苑について

建造物がないからこそ、歴史に思いを馳せる

将軍が生活し、日々の政治を行った江戸幕府の中枢となる本丸御殿。江戸城は南北に長く、南から「表」、「中奥」、「大奥」という区域に分けられていた。今では北の方角に遠く天守台を残すのみで、芝生が広がる跡地となっている、しかし城の建造物がほぼ残っていないからこそ、在りし日の大城郭を想像する楽しみがあるのだ。

本丸跡地からその背が見える「富士見櫓」は、万治2年(1659)から現存する三重櫓。天守閣が度重なる大火で焼失してからは、天守の代用的な存在となり関東大震災にも耐え抜いた。松の大廊下跡から天守閣跡へ向かうときには、左側の竹林にも注目を。日本、中国の竹や笹が13種類も植えられ、一度に観察できる。

かつて限られた身分の者しか入城できなかった本丸跡地には、ビル風とは全く違う爽やかな風が吹き込み、リフレッシュできること間違いなしだ。

北詰橋門(きたはねばしもん)

本丸の搦手(裏門)にあたるため、特に堅牢で高い石垣が見もの。いざという時に外部を遮断する跳ね上。

百人番所

江戸城の警備を行う与力や同心が常時100人以上詰めていた。後ろには大手町の高層ビル群が見え、同じ空間に江戸と現代が混在する。

天守台

現在の天守閣跡には、寛永15年(1638)に建てた家光公の城を支えた天守台が残る。加賀前田藩が築いた大きな石垣が堂々とそびえ立つ。

富士見櫓(ふじみやぐら)

品川の海や富士山まで見渡せたという櫓。万治2年(1659)から現存する建造物で、普段は本丸庭園から櫓の裏側を鑑賞できる(写真は要事前受付の「皇居一般参観」で観られる角度のもの)。

松の大廊下跡

松の絵が描いてある襖が50メートルも続く大廊下があった場所。『忠臣蔵』でおなじみの「松の大廊下事件」はここで発生した。

中雀門跡(ちゅうじゃくもんあと)

大手門から本丸へ続く最後の門が中雀門だ。ここでは石垣にぜひ注目を。文久3年(1863)に発生した大火の焼け跡が見られる。

北の丸公園

文字通り江戸城の北の丸跡にあり、千鳥ヶ淵、清水濠、牛ヶ淵に囲まれ皇居の北に位置する。武道館など一般利用者にも馴染み深い建物・施設も多く集まるエリアだ。明治維新後は近衛師団の敷地となり、今でも散策に最適な広さを保つ。各施設の閉館は16時半から17時。午前から計画的に回りたい。

田安門(たやすもん)

江戸時代から残る遺構で、外桜田門、清水門ともに国の重要文化財。高麗門と櫓門で巨大な枡形(ますがた)を形成し、敵の侵入を防いでいる。

科学技術館

参加体験型展示で楽しく最新科学が学べる。昭和39年(1964)に開館し、外観は星をイメージしたデザイン。建物を上から見ると「天」という字に見えるのだとか。

東京国立近代美術館 本館

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昭和27(1952)年に開館した日本初の国立美術館で、約1万3千点の日本画・洋画等を所蔵する。昭和44年(1969)に現在地に移転。

国立公文書館

江戸幕府が所有していた古書・古文書や、国の公文書を保存している施設。書籍収集を熱心に行った徳川家康にその起源はあるという。入館は無料。

清水門(しみずもん)

大火を経て、万治元年(1658)に再建されたとみられる古い門。枡形門の作りや雁木(がんぎ)坂と呼ばれる石畳も残り、往年の城門を体感できる。

東京国立近代美術館 工芸館

東京国立近代美術館の分館として、近現代の工芸とデザイン作品を展示。ゴシック風の建物は、明治時代に近衛師団司令部庁舎を改修したもの。

 

※料金、休館日などは各施設のHPなどでご確認ください。

 

近代美術館・工芸館(http://www.momat.go.jp/
科学技術館(http://www.jsf.or.jp/
国立公文書館(http://www.archives.go.jp/

ライターおすすめのエリア

名城・江戸城の石垣で時代の息遣いを感じる!

“城郭推し”のライター・赤谷がオススメしたいのは、何と言っても東御苑エリア。建造物はほぼ残っていない江戸城だが、石垣だけは江戸時代からずっと変わらずにそびえ立つ。

石垣の見所は多いが、東御苑で楽しめるのは、石工が諸藩の目印として家紋などを彫り込んだ「刻印石」を見つけること。そして江戸の度重なる大火で焼けた石垣も様々な箇所に見つけることができるはず。

明治・大正・昭和そして平成と、いくつもの時代が駆け抜けようとも、約400年前に穴太衆が築いた石垣は、崩れもせずに皇居の濠を守り抜いている。

江戸時代に猛火に包まれた焼けた石垣は黒ずみ、他と比べて角が崩れているので、見つけやすいはず。



 

「刻印石」は北桔橋門の石垣や汐見坂、梅林坂付近、清水門の石垣でも多く発見できる。400年前の大名や職人たちの息吹を、身近に感じられるに違いない。

皇居施設ガイド

魅力あふれる遺構と自然が残っており、広く開放されている皇居。しかし休園日や入場に際していくつかルールがあるので、最後にそれらをまとめておきます。

東御苑(旧江戸城の本丸・二の丸・三の丸の一部)

公開時間

● 3月1日〜4月14日 9時〜16時半
● 4月15日〜8月末日 9時〜17時
● 9月1日〜10月末日 9時〜16時半
● 11月1日〜2月末日 9時〜16時
(入園は30分前まで)

休園日

月曜日・金曜日

天皇誕生日以外の「国民の祝日などの休日」は公開。
また、月曜日が休日で公開する場合には翌日の火曜日が休園日になります。12月28日〜1月3日は休園日となります。
その他、行事の実施ややむを得ない理由で臨時休園となる日もあります。

入園方法

大手門・平川門・北桔橋門から入園ができます。
各窓口で入園票を受け取り、退園の際に窓口に返却してください。
返却は入園した門でなくても大丈夫です。

※入園に際して、泥酔者の入園、ペットを連れての入園、危険物(刃物)や小型無人機などの持ち込みなどは禁止されています。
※駐車場はありません。公共機関をご利用ください。

皇居参観(富士見櫓や宮殿東庭、伏見櫓などを参観)

参観日

休止日を除く毎日
午前1回・午後1回の2回実施。

※18歳未満の方は成年者の同伴が必要です。

休止日

日曜日・月曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日

(ただし、該当する休日が土曜日である場合を除きます。)
7月21日〜8月31日の午後、12月28日〜1月4日まで、行事などの実施のため支障がある日(回)。

参観方法

事前申請は宮内庁HP(http://www.kunaicho.go.jp/)より申請を。
当日受付は桔梗門前で配布する整理券をひとり1枚ずつ受け取ってください。
● 午前の回 9時〜整理券配布、9時半〜受付開始、11時15分頃参観終了
● 午後の回 12時半〜整理券配布、13時〜受付開始、14時45分頃参観終了

※事前申請手続きの定員は各回200名(団体は50名まで)。当日受付の定員は各回300名(先着順。整理券を配布)です。
※本人確認のできる身分証明書(コピー不可)が必要です。
※入園に際して、泥酔者の入園、ペットを連れての入園、危険物(刃物)や小型無人機などの持ち込みなどは禁止されています。
※駐車場はありません。公共機関をご利用ください。

三の丸尚蔵館

開館時間

● 3月1日〜4月14日 9時〜16時15分
● 4月15日〜8月末日 9時〜16時45分
● 9月1日〜10月末日 9時〜16時15分
● 11月1日〜2月末日 9時〜15時45分
(入館は15分前まで)

休館日

展覧会の行われていない展示替えの期間、展覧会期間中の月曜日、金曜日(東御苑の休館日)、12月28日〜1月3日。
その他、やむを得ない理由での臨時休館もあります。
※展覧会期間中のみ開館しているので、展覧会終了後はしばらく休館になります。事前に確認してからお出かけを。

入館方法

三の丸尚蔵館は東御苑内にあるので、東御苑に入園し、そこから向かってください。入館料は無料です。
※3つの門のうち、大手門から入園するのが最寄りとなります。

皇居周辺のグルメ情報(ランチ・ディナー)

皇居周辺は丸の内・大手町・東京駅・九段下・日比谷・銀座エリアといった、アクセスも便利で東京屈指のグルメ街も多く存在しております。これらのエリア別グルメ特集をまとメシでチェックして、皇居観光の前後に楽しめるランチやディナーのお店選びの参考にしてください。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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おとなの週末Web編集部
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