カツかカレーか バランスか!?港々の誘惑!
千葉茂(往年の読売巨人軍の名二塁手だ)と聞いて、すぐにピンと来る人はかなりのオールドファンだと思うが、彼が『銀座スイス』で「カレーライスにカツレツをのっけてくれ!」と言って誕生したのがカツカレーとは有名な話。千葉さんに猛烈感謝である。
スパイシーさと辛さに汗をかきながらスプーンを走らせるカレーライス。豚肉の脂と旨みが衣に閉じ込められ、待ちきれない衝動にかられるカツ。このふたつのご馳走が一体化したとなれば、もはや抗えまい。
アドレナリン全開で、うおっし! と挑まずにはいられない、カツカレーは本能の食べ物なのである。高速道路のSAでだって思わず頼んでしまうのは、男の本能なのだから仕方ない。
というわけで、行くぞ、カツカレー・ハンティング!
カツカレーとひと口に言っても、いまやとんかつ屋やカレー専門店、洋食屋やビストロと、いろんなカツカレーが存在する。そう、港々で待つ女のごとく、出会いを求めて行脚しなければならない。うーん、こう来たか! と頷く興奮が待ってるはずだ。
最初は、蒲田の「とんかつ檍(あおき)」の隣に構えるカツカレー屋『いっぺこっぺ』だ。
何がって、まず、見事な厚みでサクッと揚がり、噛み締めれば歯切れよく、健康的な豚の旨みがいっぱいなカツが◎。ロースは150gのボリュームだ。さらに、カレーもいい。とんかつ用のロースを成形した端材の肉が野菜と一緒に煮込まれていてトロトロ。それゆえの甘みとコクがにじみ出ている。
カレーとカツはセパレート。一体化するとまた絶妙なのだが、岩塩やソースも用意され、どう食べ進めるか迷うのも楽しい。
お次は町田の裏路地の一角に、47都道府県から足を運ぶファンも多い『アサノ』の“リッチな”カツカレーだ。
早速スープ状のカレーをひと口啜れば、む、なんという完成度! カルダモンが利いて爽やかにスパイシー。でも、それだけじゃない。玉ネギや野菜がしっかり溶けた旨みで、まさに旨々のリッチな味わい。
聞けば、鶏ガラと豚骨をベースにアゴだしなど和のテイストも入ったこだわりのブイヨン。脂身が上品な甘さの希少ロース「高座豚」を使ったカツはほどよい厚みでカレーと合い、最高にバランスがいい。
食べ進めるにつれ引き込まれるシアワセ。まだ旅の途中なのに惚れてしまったじゃないか。また来るぜ。
ビストロ、レストランも見逃せない!
お次は、溜池山王の『とんかつまさむね』だ。
「和豚もち豚」を使ったここのとんかつは、軽さを追求しているのが特徴。揚げ油も植物性でサクリと豚の旨みを味わえる。
そしてインディなスパイシーさを感じさせる、スパイスオリジナルブレンドのカレーがそそる。辛いんだけど甘みもある。その理由はスープの中に大量に投入された野菜、特にキャベツがたっぷり入っているというのが秘密だ。
とはいえ「主役のとんかつを殺さないように」計算された絶妙なスパイス感。横顔がちょっとだけエキゾチックなのがいいのだ。
趣向を変え、恵比寿のビストロ『モンタンベール』に行こう。
長年ホテルのレストランで腕をふるったシェフによるフレンチ仕込み。「チキンブイヨンが決め手。どれくらいきっちり取れるかで味が決まる」というポークカツカレーだ。
ほのかにスパイシーなカレーに感じるのは旨みとコク。そしてここに合わさるのが「越乃黄金豚」のカツ。「脂が軽くて旨いのよ」の言葉通り、柔らかく、さらりと旨い。
これが、舌触りよく、シェフ曰く“節度のある辛さ”のカレーと相俟って、ひとつの世界観をなしているのが素敵である。
そして目白の『旬香亭』。
まず注目なのはメニュー名「カツとブラックカレー」だ。カツはカツ、カレーはカレー。男らしいではないか! 脂の甘みが強い「夢の大地」を使ったカツは、しっかり厚みがあるけど柔らかい自信作。
カレーはスリランカの先住民シンハラ族のカレーをアレンジ、スパイスを煙が出るまで煎って作るのが特徴だ。
バターのコクやブイヨンの旨みも加わっている。辛さと甘みの奥からくるスパイシーさがたまらない。野菜の素揚げがさりげなく隠れてるのもニクいぞ。
熱気あふれるカツカレー。数多の出合いで男を磨くべし。腹を空かせてあなたもGOだ!
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