約30年前に全国を席巻したご当地ラーメンブームの火付け役となったラーメンを覚えているだろうか? 濃厚な豚骨醤油のスープで味わう和歌山ラーメンがそれだ。
筆者が暮らす名古屋にも数多くの店があり、ブームに乗り遅れまいと食べ歩いたこともあったが、今はほとんど見かけなくなってしまった。豚骨醤油のラーメンが昔ほど珍しくなくなり、さらに味が多様化したからだろう。
それぞれ趣向が異なる3種類のラーメンを用意
JR名古屋駅構内で7軒のラーメン店が軒を連ねる『名古屋驛麺通り』にもオープン時の2002年には『和歌山らーめん きのかわ軒』が出店していたものの、2016年の全面改装に伴い、閉店となった。
ところが、6年の月日が流れ、2022年11月に復刻オープンを果たした。こんなケースは極めて珍しいと思う。食べ歩いた記憶が蘇り、どうしても食べてみたくなった。
店に到着したのは、13時すぎということもあって、すんなりと入店することができた。が、店内はほぼ満員。和歌山ラーメンの店によっては、入るなりアンモニアのような独特の豚骨臭が鼻をつくことがある。あれが苦手なのだが、ここは皆無。
席へ案内され、メニューをチェック。ラーメンは3種類の味を用意しているようだ。まずは、定番の「中華そば」(830円)。褐色の豚骨醤油スープと、見るからに柔らかそうなチャーシュー、そして梅の花の形をしたかまぼこ。これぞ和歌山ラーメンというビジュアルだ。
豚骨をベースに鶏ガラを加え、丁寧に炊きだしているスープに合わせるのは、醤油発祥の地である和歌山で1841年創業の湯浅醤油をブレンドしたタレ。キレとコクにこだわった一杯に仕上がっている。
ちなみに、記事冒頭の写真は「特製中華そば」(1430円)だ。
こちらは、中華そばのスープをさらに濃厚に仕上げた「特濃中華そば」(960円)。
ガツンとパンチのきいた濃厚なスープに負けないよう、チャーシューの代わりに甘辛く煮込んだ豚バラ肉をトッピング。丼の中央に鎮座する卵黄を潰して麺と絡めて食べるとマイルドな味わいに。
こちらは名古屋人が好むピリ辛味にアレンジした「スタミナ源気麺」(930円)。
自慢のスープとタレに自家製の特製味噌を合わせた、深いコクを堪能できる一杯。ニンニクチップとニラをたっぷりとトッピングして、その名の通り、スタミナをチャージして元気いっぱいになれる、寒い季節にうれしい一杯だ。