「まだまだ寝られる」は中年世代にとって果たして勲章?そうかもしれないが、それだけでもないかも。なぜならいい眠りとは、量より「質」。そんな睡眠の仕組みと、よりよい眠りの関係を、スリープコーチの角谷(すみや)リョウさんにお聞きしました。ここでは、昨今よく聞く“質のいい睡眠”を紐解きながらよりよい眠りへと導くべく、いろいろ研究。今宵の「ぐっすり」の一助になりましたら……。
お話を聞いた人・角谷リョウさん
Lifree株式会社・快眠コーチ。上級睡眠健康指導士。NTTドコモなどの大手企業をはじめ、計120社、累計6500人の睡眠改善をサポート、睡眠改善をメンタルやコンディションの回復につなげてきた。著書に「働く50代の快眠法則」(フォレスト出版)ほか。
回復と進化いい睡眠が取れれば大谷翔平になれる!?
―ぐっすり眠ってパッと起きたときの気持ちよさ。でも最近、あの快感を味わえてないんだよなぁという声もよく耳にする。そもそもいい睡眠て、何だろう。
「睡眠って以前はどれだけ寝ればいいのか、量だけがフォーカスされていたんです。でも、睡眠には深い睡眠と浅い睡眠があって、深い睡眠がちゃんと取れているかどうかが重要だとわかってきました」
―それが睡眠の「質」に関わってくると。
「深い睡眠のときにしか、成長ホルモンが出て体が作られたり、再生されない。アミロイドベータというタンパク質のゴミ(アルツハイマーの原因)も排出されないんです」
―睡眠の役割が果たせなくなるとは一大事。でも、深い睡眠を取れる人と取れない人の差はどこにあるんだろう。
「人間には主に、活動するとき優位に働く交感神経と、休息やリラックスするときに働く副交感神経があります。眠りに入るには、興奮状態からリラックスへ、交感神経と副交感神経のスイッチを切り替えることが大切なんです。でも最近は、寝る前にスマホをいじったりしてしまい、緩い興奮状態の続いている人が多い。そのために深い睡眠に入れない人が多いんです」
―なるほど。でも、年齢による変化もありませんか?若いときはもっと長く、よく眠れたような……。
「もちろん関係あります。ただ、かつては20代なら8時間、30〜40代なら7時間、50代以降は6時間の睡眠が必要と言われていましたが、実は必要な睡眠時間は人によって全然違うんです。では何によるかというと、生活の中でかかっている負荷により、変わってくるんです」
―負荷とはどのような?
「先ほど睡眠の役割の話をしましたが、睡眠にはふたつ、『回復に必要な睡眠』と『プラスアルファする睡眠』があります。前者は頭のゴミを出して、疲れを取ってくれる。具体的に言えば、仕事がルーティンで、そんなに頑張らなくてもいいなら、睡眠時間は少なくてもOK。一方で、記憶を整理したり、新しい神経を作ったり能力を身につけるために必要なのが後者。それには浅い睡眠も必要です。ですから例えば50代でも、新しい仕事やスキルを身につけたり、筋トレで今までにない負荷をかけたりとなれば、8時間必要だったりします」
―ただ長ければいいってもんじゃないと(笑)。睡眠時間というのは、個々の生活と深く関わってるんですね。
「回復と進化。その両方のためですね。MLBの大谷翔平選手はよく眠ることで有名ですが、だからこそ彼は今も進化しているんです。逆に言うと、生き方や負荷のかけ具合によって必要な睡眠時間は変わります。だから、眠れない人は寝よう、寝ようとするのではなくて、まず脳と体に負荷をかける。そうすると体が必要として、睡眠圧が高まりポーンと眠くなります」
―具体的に睡眠圧を上げるコツや方法はありますか?
「現代人は総じて歩数が足りていないんです。4000歩以下でいい睡眠に入っている人は少ないです。なので歩数を増やす。あとは脳への負荷として、何か新しいことにチャレンジする。脳も気持ちも若返るので、おすすめです」