天皇陛下、皇后雅子さま、愛子さま、上皇陛下、上皇后美智子さまの日常の食事は、宮内庁管理部大膳課が調理を担当している。御用邸での食事も同様である。そのような日常のなかには、お忍びで外食をされたこともあるというが、地方訪問で宿泊するホテルや旅館での食事も、楽しみのひとつと伝え聞く。では、どのような食事を好まれているのか、どういったエピソードが残されているのか。天皇ご一家の食卓を垣間見ることにしよう。
※トップ画像は、昭和天皇がお召列車のなかで召し上がった特製「峠の釜めし御膳」=写真提供/荻野屋
鰻好きは有名だが、大衆魚も好まれた
昭和天皇の食事は、朝はパン食、昼と夜は和食と洋食を交互に召し上がったとされる。これは、大正天皇も同じであったという。昭和天皇といえば、鰻好きだったことは有名であり、お召列車での「夕食御膳」の献立に“蒲焼鰻”があったくらいだ。この話は行く先々に知れわたるようになり、鰻が食膳に並ぶことが増えたという。「また鰻だね」と側近にこぼされたこともあったそうで、それ以来、好みを口にすることはなくなったといわれる。
好まれた和食といえば、焼き魚の秋刀魚(さんま)や鯖(さば)だったり、日本蕎麦も好まれたといわれる。洋食では、鶏や牛といった肉類もお好きだったそうで、意外なところでは、炒飯やラーメンといった中華料理も好物だったという。
昭和天皇は「猫舌」ではないかといわれたこともあったが、天ぷら店のカウンターで揚げたてを召し上がったこともあり、焼きたての焼き芋も好物だというから、誤解であろう。
お召列車では有名駅弁を楽しみに
上皇陛下は、皇太子時代には夏といえば軽井沢を訪れるのが恒例となっていた。帰京される特急電車の車内では。必ずといっていいほど「峠の釜めし」を召し上がったという。昭和の時代には、ご一家で軽井沢を訪れたこともあり、上皇陛下(当時は皇太子殿下)、上皇后美智子さま(当時は皇太子妃殿下)、天皇陛下(当時は浩宮さま)、秋篠宮さま(当時は礼宮さま)、黒田清子さん(当時は紀宮さま)と、一緒に召し上がったこともあったそうだ。
上皇陛下(当時は天皇陛下)は2010年代(平成の20年代半ば)には、移動する列車の中で「駅弁」を召し上がることを楽しみにされていたと伝え聞く。なかでも東京駅で販売される「チキン弁当」は、お気に入りとされる。上皇后美智子さま(当時は皇后陛下)は、上皇陛下と同じものを召し上がることもあれば、ご自分でお好きなものを選ばれることもあったという。当時の両陛下は、駅弁のパンフレットを見ながら楽しそうに選ばれていたそうだ。
これらの駅弁は、駅でお買い求めになるのではなく、駅弁業者がお召列車まで届けた。駅弁業者によれば、市販のものと同じものというが、塩分など侍医による健康管理が厳しいとされる両陛下の食事だけに、本当のところはどうなのだろうか・・・・