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カキが旨い季節がやってきた。ジューシーなカキフライ、炊きたてのカキご飯。茹でたカキに甘味噌をつけて焼くカキ田楽もオツだ。カキ漁師は、海で採れたてのカキの殻からナイフで身を剥て、海で洗ってそのまま生で食べるのが好みだという。

そんなカキ漁師の旅の本が出版された。カキじいさん、世界へ行く!には、三陸の気仙沼湾のカキ養殖業・畠山重篤さんの海外遍歴が記されている。

「カキをもっと知りたい!」と願う畠山さんは不思議な縁に引き寄せられるように海外へ出かけていく。フランス、スペイン、アメリカ、中国、オーストラリア、ロシア……。世界中の国々がこんなにもカキに魅せられていることに驚く。そして、それぞれの国のカキの食べ方も垂涎だ。

これからあなたをカキの世界へ誘おう。

連載27回「じつは日本に「驚くほど関係していた」…アメリカ「メサビ鉄山」とカキを育むミシシッピ川の関係」にひきつづき、メサビ鉱山からミシシッピ川をくだってニューオーリンズへ向かう旅である。どんな胸躍る出会いがあるのだろうか。

前回まで】
2019年、鉄に縁のある著者はアメリカ最大の鉄鉱山「メサビ鉄山」の存在を知り、場所が五大湖スペリオル湖近く、さらにミシシッピ川の源流付近であることに驚くカキじいさん。ミシシッピ川は約3800kmを流れメキシコ湾に注ぐため、「メサビの鉄が河口のカキを育んでいる」と直感。若い頃に聞いたミシシッピ川河口のカキの話、西海岸への訪問の思い出とともに、ニューオーリンズへの旅への思いが再び高まるのでした。

たくさんの人との巡りあい

人との出会いは人生を楽しくもしますし、苦しくもします。わたしはずっといい人と巡りあっています。

2011年6月、あの東日本大震災の年です。「森は海の恋人植樹祭」に大阪から来ました、という男性が現れたのです。名刺を見ますと、大阪府木材連合会長の津田潮さんでした。

東日本大震災の津波で海辺の家が流されてしまい、政府の援助で仮設住宅が建てられることになったのです。木材を取り扱っている全国の団体に、担当地域が割りあてられたそうです。大阪府木材連合会は、気仙沼市が担当でした。

多くの職人たちをまとめ、突貫工事で仮設住宅を建てなくてはなりません。ところが泊まる宿舎がないのです。そこで目を付けたのが気仙沼湾にそそぐ大川上流の岩手県一関市室根町のキャンプ場です。「森は海の恋人植樹祭」の会場近くに、そのキャンプ場はありました。

津田さんが朝起きると、山に漁師のシンボルである大漁旗がひるがえっていました。その不思議な光景に興味を持ち、歩いてキャンプ場にやってきたのです。全国から1500人もの人々が集っていることに驚かれていました。そして、いいカキをつくるために、ブナやクヌギ、ナラなどの落葉広葉樹の森が大切なことを知ったのです。津田さんの会社は宮崎に3,000ヘクタールもの山林を有していて、森林についてはプロ中のプロです。でも、頭の中は「森林は木材を作るためのもの」という思考でした。

カキのために木を植えている人がいる。津田さんはカルチャーショックを受けたのです。翌年から100人近い人々を誘い、大阪から「森は海の恋人植樹祭」に参加するようになりました。もっとも、カキが大好きな方で、カキを食べたいという気持ちもあったようです。

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ウナギの森植樹祭
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高木 香織
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