最近巷でよく耳にしませんか?“パン飲み”という言葉。そう、パンで飲む、パンをつまみにおいしく飲む、そこに寄り添う美味なつまみもあれば、もう最高!腰を据えてお酒を飲むというよりもう少し軽やかに、のびのびと。そんな“気分”にぴったりな、ウワサのパン飲み。今日、ふらっと行っとく?
パンと料理とワイン、その絶妙な間合いに、ほろ酔う『アヒルストア』@代々木公園
料理がおいしいワインバーとして人気の『アヒルストア』。意外とみんなが忘れているかもしれないけれど、実はここってパン飲みの草分け的存在だ。今も黒板メニューのほぼ半分はパンが占めているし、店頭でパンを売ってるって、知ってました?
フランクに使えるデイリーな酒場を作ろうと思った時、店主の齊藤輝彦さんはシェフがいる店とどうやって戦うかに頭を悩ませたという。結果、パン屋が肉を焼いたり、お総菜を作ったりするなら説得力があると考えた。
「和食じゃなくて、おでん屋って言って実は刺身が旨い。そういう崩し方だったらありかなと」。
そこで’08年のオープン当時にはまだ早かった、パン飲みのコンセプトが生まれた。元々兄妹のふたりで店をやると決めていたので、パンは点心師だった妹の和歌子さんが担当。2年後に集結を合言葉に、兄はワイン、妹はパンの修業に出た。この選択が大正解だったのは、15時のオープン前から平日でも行列ができていることで証明されている。
黒板メニューには、みんな大好き「ウフマヨ」や下町酒場の王道「ハムカツ」と並んで、「フムスと焦がしたカブ」なんて急におしゃれな皿が出てくる。その絶妙なはずし具合が魅力的で、見ているだけでワインが飲めてしまう。
グラスワイン1100円~、フムスと焦がしたカブ900円、フェンネルとクミンのカンパーニュ350円

そして、フムスにはフェンネルとクミンのカンパーニュが絶対いいはず。いや待てよ、白ごまとカレーリーフのパンもちょっと合わせてみたいかも。なんて脳内の妄想だけで食べる前からワインがグラス2杯くらい必要だ。
こんなに相性の良さげなパンと料理だが、聞いてみると特に打ち合わせはしないで、お互い自由に作っているのだとか。
スープドポワソン青のりラスク添え900円
でも「1個で完結するどら焼きみたいなものじゃなくて、何かと合わせておいしいと思うパンにしています」と和歌子さん。
兄の料理も、エキゾチックな発想やスパイス使いがあっても決して強すぎない。この絶妙な間合いにはワインの余地もきちんと残っているのだ。
それがずっと飲んでいたくなる、この店の心地よさの理由なのかも。
[店名]『アヒルストア』
[住所]東京都渋谷区富ケ谷1-19-4
[電話]03-5454-2146
[営業時間]15時~21時
[休日]日、水
[交通]地下鉄千代田線代々木公園駅2番出口から徒歩6分
※価格はすべて税別です。
撮影/赤澤昴宥、取材/岡本ジュン
■おとなの週末2025年6月号は「満喫!ニッポンの生ビール」
※2025年4月号発売時点の情報です。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
…つづく「門前仲町の良店5選 日本酒、ワインが美味しい店で自在に楽しむ」では、なんともグッとくる人情の街で見つけた良店を実食レポートしています。