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昨今の昭和レトロ人気の影響か、純喫茶を模した“映える”店が増えています。しかし、独特の雰囲気は一朝一夕で作れません。編集部が見つけた茨城県日立市の『佛蘭西館(ふらんすかん)』は、年季の入った名店。そこにしかない空間は、わざわざ足を運びたくなる一軒でした。

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サンド&ブレンド、味を引き立て合うまさに名コンビ『佛蘭西館(ふらんすかん)』@茨城県日立市

まるで絵画みたいな世界観、創業から変わらぬ風情と味に浸る

駅から伸びるどこにでもありそうな道路から、重厚な煉瓦造りの建物に足を踏み入れれば、とたんに中世ヨーロッパの絵画の中に紛れ込んだ気分になった。天井には年代物のシャンデリア、その光を受けて真紅に塗り込んだ壁には女性らしき姿が浮かび上がり、見る場所によっても表情を変える。喫茶文化が華やかだった時代の豪奢な風情を今も残していた。

「開店から56〜57年になるかなあ。親父が会社勤めを辞めて、喫茶店をやってみたいってことになってさ。で、東京でも仕事していた腕のいい設計士にお願いして造ってもらったの。ああ、あの壁の絵?その設計士が依頼した作家さんだからよくわかんない。花瓶とかの絵付けをしていた人みたいだよ」と2代目マスターの加藤忠克さん。

おおらかな人柄と、語尾をたなびくように伸ばす、茨城弁の柔らかな語り口に心の距離も一瞬で縮まった。とはいえ、高校生の頃からこの店で働いてきた忠克さん。カウンターの中を右へ左へスライドしながら無駄のない動きでテキパキと注文をこなしていく。

こちらもまずはブレンドをお願いしてみる。目の前に置いてあるサイフォンを準備するのかと思いきや、先に落としておいたそれを使い込んだ手鍋に注ぎ入れ、再び温めてからカップへ。

「ああ、サイフォンはシングルの時に使うんだ。ブレンドは昔、雇っていたバーテンダーさんに教えてもらった淹れ方を引き継いでいるよ」

コンビーフ・トースト400円、レギュラー・ブレンド350円

『佛蘭西館(ふらんすかん)』(左)コンビーフ・トースト 400円 (右)レギュラー・ブレンド 350円 トーストしたパンで作るホットサンド。玉ねぎやピーマンの食感がアクセント

その淹れ方というのも独特で、ネルドリップしたコーヒーをワインのデキャンタージュのように別の容器に注ぎ入れ、浮かんだ泡あくをきれいに取り除き、その行程を5回も6回も繰り返す。

「今じゃこんなやり方する店、他にないんじゃないかな。香りが飛んじゃうっていう人もいるけど、そうでもないし、スッキリした風味になるんだよね」

飲んでみれば言葉通り、不思議なくらい味が澄んでいる。苦みも酸味もまるみがあって、すっと舌に浸透する感覚だ。思わずもう1杯とおかわりしつつ、これも創業当時のままという、少しへこたれた座面のソファに身をあずけてみる。

周囲は仕事の合間に一服しにきた常連に、お昼ご飯にサンドイッチを食べている親子連れ、友人とのおしゃべりに夢中になる若者と、ここに流れるのは半世紀以上も変わらぬ時間。それが他所から来た者にとっても心地良く、次はまたいつ訪れようとスケジュール帳を開いた。

『佛蘭西館(ふらんすかん)』真っ赤に塗られた壁とグリーンのソファが織りなす色鮮やかなコントラストはまるでアート。吊り下げられた騎士の装飾品にも目を惹きつけられる

[店名]『佛蘭西館(ふらんすかん)』
[住所]茨城県日立市千石町1-6-10
[電話]0294-33-3997
[営業時間]10時半〜20時
[休日]第2・4月
[交通]JR常磐線常陸多賀駅から徒歩5分

撮影/小澤晶子、取材/菜々山いく子

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

※画像ギャラリーでは、茨城県の喫茶店『佛蘭西館(ふらんすかん)』の画像をご覧いただけます

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