本誌が以前、高評価した店を、ライター・菜々山と編集・戎で覆面調査。
変わらぬクオリティで、キチンと味を守っている店をご紹介。
10月のとある月曜日の朝6時過ぎ、ライター・菜々山は築地市場にいた。場内でも随一の行列を作る『寿司大』に行くためだ。
最後尾を探すと、そっけなく立て看板が置かれていた。
菜「『本日の受付は終了しました』ってどういうコト!?」
事前に店に電話で確認したところ、「月曜なら7時くらいまでに並んでいただければ、通常は入れます。お約束はできませんが」と言われていたのだ。その時点で「ハイ?」と耳を疑ったけどね。
だって2014年に覆面調査した時には、14時が受付終了(水曜以外)。
その直前に並びはじめ、店に入れたのが2時間40分後のこと(ちなみに2012年の調査時は1時間45分後)。
やっと席に座れたときには、慰労困憊していたものだが、今は4時間近くかかるらしい。
この店の寿司の美味しさは認めるが、もはやここまでくると正気の沙汰ではないと言えるだろう。
と、そこへ埼玉から始発でやってきた、編集・戎氏が合流。
事の次第を伝えると、
戎「マジっすか。始発でも間に合わないって、一体何時に来れば……」
最後尾にいた女性に訊ねてみたら、
「Just before 6 o”clock(6時少し前)」
と教えてくれた。
そう、驚くのが、並んでいる客の約9割が外国人観光客なのだ。場内にある他の寿司店でも外国人客が大半で日本人は少数派。
いつも空いていたハズのサエない店でも客が列をなしているのだ。
戎「そんなに並んでいなくて、ウマい店ってないんですか?」
菜「あるよ」
何度も全店覆面調査をしている場内マスター・菜々山におまかせあれ、と連れて行ったのが『寿司処やまざき』だ。
戎「4組待ちか。これならそんなに待たなくてすみそうです」
並んでいると女将さんがお茶を振る舞ってくれた。こういうちょっとした心遣いがうれしいものです。
20分ほど待って席に着く。
職人さんが客の食べるペースにあわせ、1貫ずつ出してくれる寿司はどれも絶品。
塩で食べさせるウニの甘いことと言ったら!「お銚子1本くださーい」ってつい出ちゃいます。
まだ朝7時だけど。
戎「めちゃくちゃウマいじゃないですか!なんで他の店より空いているんですか?」
さあ?
私もここは場内でも3本の指に入る実力があると思う。
ただ、『寿司大』と『大和寿司』という、2大行列店に挟まれているから、目立たないのかもね。
握り11貫の「菊」では、大トロ、中トロ、ウニ、イクラなどの高級ネタが満載! 口の中でネタと瞬時に一体となりハラリとほどけていく繊細な握りに職人の腕前の高さを感じる。白イカは軽く炙って塩と柚子皮をそえて、穴子は塩とツメの2種類でと、それぞれのネタの個性を引き出す丁寧な仕事がなされている。 ※ランチタイム有
この日はこれにて終了。通勤ラッシュになる前の電車で帰宅した。
さて別の日、再び場内に集合した我らふたり。
私が早起きはもうムリと言い張ったため、11時半に待ち合わせ、向かったのが『龍寿司』。
菜「ラッキー。空いてる」
食事時にも関わらず、待ち時間ゼロなばかりか、客は他に日本人が3人しかいない。
この店がある1号館は、メインの飲食店街からちょっとハズれた場所にあるので、観光客があまり来ないのだ。
特にこの店は外国人客を取り込もうとする商売っ気がないし、ぶっちゃけ職人さんの愛想もない。
しかし、いつもとび切りウマい寿司を食べさせてくれる。
戎「シャリがホロホロってほぐれます」
でしょう!
ここまでふんわりした握りの寿司って、なかなかないし、ネタの質の高さも相当なもの。
何度来ても良い店だなあと改めて思う。
ふんわりトロける穴子と超繊細な握り。手でそっとつままなければ崩れてしまうほどふんわり握られたシャリが特徴で、寿司には箸を出さないのが流儀だ。舌の上でとろけるような穴子は松下幸之助が好んで食べていたことでも知られている。 ※ランチタイム有
いまや、場内の寿司店でフラリと入れる店はほぼない。テーマパーク並みの混雑ぶりに閉口したのが本音だ。移転したら食べられなくなるかもだが、あえてここで食べなくてもいいのではと思う。それでもというのなら行列覚悟でどうぞ。
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