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今回のお題【カツ丼】

【東】マッキー牧元 カツレツ丼 奏す庵の「特製カツレツ丼」

 門上様、今回は東京発祥のカツ丼です。一説によると元祖は早稲田の某そば屋の玉子とじカツ丼とされていますが、それに影響を与えた真の元祖が、同じ地にあったのをご存知ですか?
 福井にある『ヨーロッパ軒』は、大正2年に料理発表会でソースカツ丼を披露した高富増太郎が、早稲田に店を構えたのが発祥。人気を得たのですが、関東大震災で被災します。そこで彼は、故郷の福井に帰って、店を再建するのです。
 その元祖カツ丼が、百数年ぶりに東京に戻ってきました。この味を愛するオーナーが、敬意を込めて発祥の地へ店を開いたのが、今回の『奏す庵』。
 蓋を開ければ、ソース色に染まったカツが現れ、ソースの匂いが鼻をついて、唾を飲み込ませます。
 そのソースが素晴らしい。なんとあの、『旬香亭』古賀シェフが作ったソースなのです。その味は丸く優しく、カツを持ち上げながらも下品の迫力もあって、御飯を猛然とかき込ませるのです。
 カツは、食いちぎる喜びがある厚カツが2枚に、ソースの旨みを味わう薄カツが3枚という構成で、飽きさせません。御飯に味噌汁、お新香も上等で、一点の曇りもない。
 卵とじカツ丼が主流の東京に、新たな歴史を刻もうというこの気概を、食べに来られませんか。

巴のようにぐるりと囲むカツの花。見た目、味わい、食感もハイレベルな〈東京カツ丼〉

▲特製カツレツ丼 980円
最新のフライヤー導入により、
油分の吸着を約半分に抑えられたという、胃もたれなしのカツ丼。1日おきにご来店される80代ご夫人もいらっしゃるとか!「 なにより蓋つきの丼で供されるというのがいい。蓋を閉める即ち、客の期待も籠めるという丼文化を、きっちりと継承しています」(牧)

カツレツ丼 奏す庵
[住所]東京都新宿区早稲田鶴巻町555-19
[TEL]03-6302-1648
[営業時間]11時~15時、17時~21時
[休日]水、年末年始
[席]カウンター13席のみ カード不可/予約不可/サなし
[交通アクセス]地下鉄東西線早稲田駅1番出口から徒歩6分、
有楽町線江戸川橋駅2番出口から徒歩9分

【西】門上武司 とんかつ処 勝裕の「かつ重 ロース」

 牧元さん、カツ丼悩みました……。
 というのは、関西人にとってカツといえば、ビフカツです。しかしカツ丼となれば、一般的にはトンカツとなります。ここはビフカツ丼で勝負に出ようかと、数店のメニューを思い浮かべたのですが、軒数が少なくやはりトンカツにしました。
 実は数年前、カツ丼漫遊記という企画を立て、全国のカツ丼を食べ歩いたことがありました。
 卵とじ、ソース、ドミグラスなどこれまたバリエーションがあるのですが、その中から結果、大好きなとんかつ屋のかつ重となりました。
 京都の『とんかつ処 勝裕』のかつ重です。
 豚は山形県の三元豚を使用。ヒレとロースのチョイスですが、今回は脂身も楽しみたいのでロースとしました。
 パン粉はやや粗め。「油のキレが良いんです」とご主人の田中裕二さん。純正植物油でサクッと揚げたところを、卵でとじる。少しゆるめの半熟状態の卵とダシとカツ、そしてご飯が一体となって、雅なかつ重の完成となります。
 この塊をかきこむのが醍醐味です。京都のカツ丼、牧元さんいかがですか?

サクッと揚がったとんかつにとろりと絡む半熟卵。計算された味わいを大胆にかきこむ至福の時。

▲かつ重 ロース 900円
「ロース肉をサクッと揚げる。パン粉のサクサク感を感じながらも、卵との出合いに感激します。淡路島産の玉ねぎの甘さも、このかつ重のアクセントとなっています。ダシも、もちろん鰹と昆布で抽出。細やかな気遣いが味を決定つけるのです」(門)

とんかつ処 勝裕
[住所]京都市下京区西七条南月読町97
[TEL]075-313-0303
[営業時間]11時半~15時、17時半~21時
[休日]木
[席]テーブル18席、カウンター7席/計25席カード不可/予約可/サなし
[交通アクセス]京都市バス西大路七条から徒歩3分、
JR東海道本線西大路駅から徒歩12分

プロフィール

マッキー牧元/タベアルキストを自称して早30年、ひたすら美味しいものを食べ歩き、それを生業とすべく、各誌への寄稿に励むコラムニスト。東の食雑誌『味の手帖』編集主幹でもある。
門上武司/小誌でもおなじみの、あらゆる食情報に精通している西のグルメ王。食関連の執筆・編集を中心に、各メディアに露出多数。関西の食雑誌『あまから手帖』の編集顧問も務める。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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