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1975年ごろローカル線ブームがありました。 廃止をささやかれる全国のローカル線の素朴な魅力が受けて、当時全国で発売されていたワイド周遊券を持って、たくさんの人が旅に出ていました。 そんななかでも「日本一の赤字線」として売り出していたのが北海道、道北の「美幸線(びこうせん)」です……。

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「羊をめぐる冒険」の舞台?でジンギスカン 北海道美幸線/1981~2015年

1975年ごろローカル線ブームがありました。
廃止をささやかれる全国のローカル線の素朴な魅力がウケて、当時全国で発売されていたワイド周遊券を持って、たくさんの人が旅に出ていました。
そんななかでも「日本一の赤字線」として売り出していたのが北海道、道北の「美幸線(びこうせん)」です。

ローカル線ブームとはいえ、静かな佇まいだった(1981年撮影)

美幸線の「美」は現在もある宗谷本線の「美深駅」の「美」、「幸」は現在廃止になっている興浜北線(こうひんほくせん)の「北見江幸(きたみえさし)駅」の「幸」です。
しかし、実際に開通したのは全体の4分の1程度で、終点は仁宇布(にうぷ)駅です。

現役のころの終点仁宇布駅(1981年撮影)

さすがにこの状態での維持は難しく、1985年に、静かに廃止になってしまいました。
しばらく廃線跡はそのままで、森に帰っていくのかと思っていました。
しかし、その後「トロッコ王国美深」としてよみがえりました。

よみがえった美幸線(2011年撮影)

終点仁宇布駅は「コタンコロ・カムイ駅」になり、約5Kmの区間をエンジン付きのトロッコで疾走することができます。

このトロッコの売りは、なんといってもスピード感!
自分で運転することもできるのですが、車両からの振動と、受ける風がすばらしい。

トロッコに乗るとかなりのスピード感を味わえる(2011年撮影)

実際には時速20~30キロだと思うのですが、乗ってみると、もっと迫力を感じます。

複数の車両が続けて走る(2015年撮影)

もうひとつの魅力は森の中の線路。
かなりメルヘンな様子です。
白樺の林を延々と走るのは楽しくて、往復10Kmでも短く感じてしまうほどです。

白樺林の線路。
現役路線とも廃線とも違う、不思議な魅力がある(2015年撮影)

完成しなかった未成線の先に、今回の主役、羊の牧場が「松山農場」が!

さて、この美幸線の仁宇布駅と北見江幸駅の間は、結局列車が走ることはなかったのですが、一部は線路の基盤が作られています。
完成しなかった路線は「未成線(みせいせん)」と呼ばれています。
仁宇布駅から数キロ進んだところに羊の牧場、「松山農場」があります。

松山農場の入り口(2014年撮影)

子羊がかわいい(2015年撮影)

この牧場の中に未成線が残されています。
放牧場の真ん中に築堤が残っています。
牧場に許可をいただき、この築堤に登ってみるとその先まで線路の築堤が続いているのを見ることができます。
森の中へと消えて行く未成線……。
夢のあとの風景です。

この松山農場は、村上春樹著の「羊をめぐる冒険」で、ストーリーのきっかけになった、星のついた羊がいる牧場といわれています。
もちろん、オフィシャルにここが舞台ですよと言っているわけではないのですが、たしかに小説に描かれている札幌からの距離や赤字ローカル線ですし、もちろん羊牧場などなど類似する点がたくさんあります。
小説を読んで、想像してみるのも楽しいですね。

築堤に登ると、森へと消える築堤を見ることができる(2008年撮影)

松山農場は全国でも珍しい、羊乳も生産している牧場です。
ビン入りの羊ミルクやアイスクリーム、ヨーグルトなども販売しています。
(松山農場の羊ミルクは、ときどき有楽町の『どさん子プラザ』でも売っています)

時間が合えば、搾乳の様子も見学できる(2015年撮影)

松山農場の羊ミルク(2008年撮影)

羊乳のアイスクリームは濃厚(2008年撮影)

この羊乳やアイスクリームを楽しめるのが、牧場直営の「ファームイン・トント」での宿泊です。
宿の前は広い放牧地になっていて、オンシーズンには羊が並んで草を食むのが見られます。

山小屋風の「ファームイン・トント」(2015年撮影)

夕食はもちろんジンギスカン。それも松山農場の国産羊です。
やわらかくて、さわやかな羊の香りがさっぱり目のタレの良く合います。
まだ食べたことはないのですが、地元じゃがいもと羊乳を使ったグラタンも出しているようです。
(近々食べに行きます!)

夕食のジンギスカンは松山農場産の羊肉(2015年撮影)

国産羊ジンギスカンを含む1泊2食付きで7000円……。
ちょっと安すぎです(笑)。
札幌から仁宇布までは約260Km。
少々遠いですが行く価値アリ!です。
ただ、路線も廃止になっていて、バスもなくはないのですが、ちょっと使いにくいので、クルマで行くのが現実的です。

焼ける羊肉の香りが香ばしい(2019年撮影)

ジンギスカンで満たされて、少し早めに休もうと部屋の電気を消しました。
すると、窓いっぱいに星が見えます。
「ファームイン・トント」は、いちばん近い町からでも20Km以上。
折しも新月の日で月明かりもありません。
街灯もほとんどないので、空は真っ暗です。
思わず外に出て空を見上げると、吸い込まれるような星空が広がっていました。

「ファームイン・トント」から見た星空(2015年撮影)

星のついた羊はいませんが……空いっぱいの星を楽しむことができた夜でした。

佐々倉実(ささくら みのる)
 鉄道をメインにスチール、ムービーを撮影する“鉄道カメラマン”、初めて鉄道写真を撮ったのが小学生のころ、なんやかんやで約50年経ってしまいました。鉄道カメラマンなのに撮影の8割はクルマで移動、列車に乗ってしまうと、走るシーンを撮影しにくいので、いたしかたありません。そんなワケで年間のかなりの期間をクルマで生活しています。趣味は料理と酒! ヨメには申し訳ないのですが、日々食べたいものを作っています。
 鉄道旅と食の話、最新の話題から昔の話まで、いろいろとお付き合いください。
 ちなみに、鉄道の他に“ひつじ”の写真もライフワークで撮影中、ときどきおいしいひつじの話も出てきます。なにとぞご容赦ください。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

この記事のライター

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