ぐるっと石川 南加賀をめぐる旅「とっておき、南加賀の美味」

日本列島の北陸を代表する地、石川県。金沢や能登はよく知られるところですが、これからの注目は、加賀温泉や小松市近隣一帯の”南加賀“エリア。北陸新幹線石川県内全線開通を数年後に控え、より足を運びやすくなる南加賀に足を運びました。ここでは「とっておきの美味」をテーマにお届けします。

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山海に恵まれた南加賀ならではのグルメは、魚、ジビエ、野菜、水、そのどれもがはっとするほどの美味の数々。温かいもてなし心にも癒され、感激すること必至です。

ジビエ、海の幸、白山の水 ホスピタリティとともに

南加賀をめぐるもうひとつ大きな楽しみは、言うまでもなく美味との出合いである。広々と広がる加賀平野。その片手には橋立や美川などの漁港を有する日本海。もう一方には白山麓。そしてそこから流れくる美しい水があるのだから。

最初に訪れたのは加賀市の『料亭 山ぎし』

加賀の海山の幸と里の恵みを生かした四季折々の味を提供するが、今回一番の目的は“坂網鴨”だ。藩政時代から受け継がれてきた猟法で、野生の鴨を坂網というY字型の網を投げて捕らえる。こちらでは当主自らが猟師として坂網猟を行い、それが絶品の鴨治部すきに仕立てられる。大皿に盛られた鴨肉はすでに赤みの色からして全然違う

もも肉、ロース、ネックや骨を叩いた団子を、鴨ガラから取った秘伝のダシに、小麦粉をまぶして投入する。うー、野生の力強さ、きれいな旨み、食感や脂のよさ、半端なし。

「食材に恵まれた土地ですから、鴨に限らず、飾り立てず自然な味、持ち味を知っていただきたいと思っています」、そんなご主人の言葉が胃袋に染みる。

料亭 山ぎし

坂網で獲った鴨は傷つかないため臭みもなく、飼育したものにはない野性味がある。坂網鴨は冬季限定で要予約。年間200羽ほどしか獲れない希少なものだが、天然鴨を使ったコース(6000円税別〜)もある

治部煮のごとく小麦粉をまぶして鍋に入れられた鴨は旨みが閉じ込められ、口の中でじわーっと溢れる。

部位ごとの食感の違い、旨みを吸った野菜や〆のよもぎ蕎麦も旨し

ノドグロをはじめ海、山の幸も見逃せない
[住所]石川県加賀市大聖寺東町2-24
[電話]0761-73-1177
[営業時間]11時~22時(21時半LO)
[休日]月(祝日の場合は不定休)

魅力的なロケーションの中、ほっとするような素敵なお店にも出合った。

山中温泉・鶴仙渓にある『東山ボヌール』だ。大きな窓は鶴仙渓に面し、まるでその中に紛れ込んだような佇まい。

おすすめは、ランチのビーフシチュー。熱々のスキレットのライスと野菜たちに、やさしく煮込まれたシチューをかける。一つひとつていねいに手間をかけて作られているのが伝わり、また食べたい! と思う味。

東山ボヌール

A5の和牛をひと晩ワインに漬け込んでじっくり手間をかけて仕込むというビーフシチュー。

肉はほろりと柔らかく、ソースには味が溶け込み、ライスの上の焼き色のついた野菜まで、ていねいに心をこめられているのが伝わってくる美味しさ。

材料にこだわって作られたベークドチーズケーキも、香りよく、しっとり濃厚。ホットティーとセットで1980円(ケーキなしのセットは1650円)

[住所]石川県加賀市山中温泉東町1丁目ホ19-1
[電話]0761-78-3765
[営業時間]9時~17時
[休日]木

農家レストラン『Sorriso(ソリッソ)』は、契約農家や自家農園からの無農薬野菜など、地元や自然なままの味にこだわった小さなイタリアン。

2匹のヤギが飼われていて、ヤギのミルクを使ったチーズケーキも人気。食事とともにゆったりとしたスローな時間を楽しむことができる。

農家レストラン&チーズケーキ専門店 Sorriso

手前はランチ1500円(税別)のコースより日替わりの前菜プレート。

トマトのジェラートなども印象的、契約農家や自家農園の無農薬野菜を中心に、イタリアンの手法で仕上げている。

大切にしているのは、シェフがピエモンテで出合ったスローフードの考え方だ。写真奥はカフェタイムのチーズケーキ

[住所]石川県能美市徳山町井12-2
[電話]076-146-6280
[営業時間]11時半〜16時(ランチ14時LO)
※ディナーお休み中
[休日]火、不定休月1回

白山麓の町・鶴来には素晴らしい蕎麦があった。豪雪地を感じさせる力強い造りの古民家の空間もいい『草庵』

福井からの玄蕎麦を厳選して自家製粉し、白山の伏流水を使って打つ。清冽にして香りよく甘く、かつきめ細やかな蕎麦。肉厚でローストされた鴨の野趣とその旨みが力強く溶け込んだ汁に、件の蕎麦が絡む鴨せいろの味わいも言うことなしだ。

草庵

白山麓に近い白山市鶴来に位置し、築170年以上の存在感ある古民家が落ち着いた雰囲気

厳選して仕入れた玄蕎麦を石臼で自家製粉し、水は「蕎麦は半分以上水なので、甘さや香りの立ち方も違う」という白山の伏流水を使う。毎朝その日の分を打つ蕎麦はよく締まって、清冽にして繊細。

鴨せいろ(1840円)は、鉄鍋で熱してダシの余熱で火を入れた鴨肉がなんとも言えず、舞茸や三つ葉の香り、鴨の脂の旨みが溶け込んだつけ汁に蕎麦が絡み、絶品!

[住所]石川県白山市鶴来日吉町ロ32
[電話]076-273-1090
[営業時間]11時半~16時※売り切れ次第終了
[休日]木(祝日の場合は翌休)

日本海を望む手取川の河口、美川漁港すぐ近くの『鮨 美浜』にも訪れた。

美川漁港では定置網漁や刺し網漁も行われ、日本海側では珍しく新鮮なシラスもあがる。四季を通して旬を映したネタの多さが自慢だ。

小気味いいリズムで握られた寿司は見た目の美しさを裏切らず、旨い! 時折ダジャレが炸裂するご主人のトークとともに満喫したい。

鮨 美浜

こだわりの酢飯の上に、見るからにイキイキと自慢のネタが踊る。シャリはほろりとほどけ、口に広がる魚の旨さには勢いがある。

すぐ近くの美川漁港や漁船から直に仕入れるネタは毎日50種類以上。北陸の海の旬を握りで存分に味わえるのだ。

しかも、写真のおまかせにぎり(夜)が12貫で3000円(税別)とリーズナブルでもあり、いきのいいトークの大将の寿司を楽しみに通うファンが多いのも頷けるってものだ。

ランチの「美川県一丼」(1900円/税込)もおすすめ

[住所]石川県白山市美川永代町甲1-46
[電話]076-259-5566
[営業時間]11時~14時(13時半LO)、17時~22時(21時半LO)
[休日]水、第3木

言葉遊びも楽しい驚きの料理に 石川の豊かさをさらに発見!

そして感動を覚えたちょっと不思議なレストランが『SHÓKUDŌ YArn.(ショクドウ ヤーン)』だ。

ともに小松市出身の米田夫妻は、イタリアやスペインの星付きレストラン、日本料理店での研鑽を経てこちらを開業。その料理は、石川の食材を主体に紡がれるのだが、手法もネーミングやプレゼンテーションも意表を突きつつ、味わう楽しさに満ちている

たとえば「スタジオーネ・ジブリN.5」というひと皿。スタジオーネはイタリア語で季節、つまり季節の寒ブリ(能登産)を、喜界島の粗糖でキャラメリゼして絶妙に火入れし、りんごとフィンガーライムの酸味とともに供す。料理の説明(謎解き?)と各料理の仕上げはシェフやスタッフがテーブルで。

「一方通行でなく楽しい時間を」というシェフの言葉通り、会話も弾む。自由な発想でクリエイティブながら根っ子は土地のものだ。そんな心に刻まれたこの夜に、南加賀への再訪を固く心に誓ったのは言うまでもない。

SHÓKUDŌ YArn.

左から、背、カマ、腹と部位違い。神経〆され寝かされた能登ブリのローストが並ぶ「スタジオーネ・ジブリN.5」

(左)小松うどんを使った「フグコナーラ」。ふぐ子を生かしたソース
(右)ふわっと濃厚な豆乳クリームにおダシをかけて

(左)小松のイチゴと能登の養殖うなぎを使った「一期一鰻」
(右)能登牛の牛すじのアイスがのる「牛すじと蕪の炊き合わせ」

近海1本釣のカツオ節や能登塩、利尻昆布などを使い、シェフがサイフォンでダシを抽出してくれる。
コースはランチ10000円、ディナー15000円(いずれも税・サ別)

[住所]石川県小松市吉竹町1-37-1
[電話]0761-58-1058
[営業時間]12時〜14時半(最終入店12時半)、18時〜23時(最終入店19時半)
※前日までの完全予約制
[休日]日・月、火のランチ

南加賀で見つけたお土産コレクション

伝統菓子から新進気鋭のスイーツ、進化系“ふぐ”調味料に、地の利を生かしたシャルキュトリーやビールまで、ずらり、南加賀で手に入れたいお土産です!

菓匠 げんば堂 図書館前本店

川端御亭(かわばたおちん)

川端御亭(1個200円)

北海道産の大粒小豆をじっくりと炊き上げた餡とふわっとしたカステラ生地。その間をクリームが結び、口中で絶妙に溶け合う。甘過ぎず、上品な味わいの地元で人気の最中だ。

[住所]石川県加賀市大聖寺地方町1-10-10
[電話]0761-72-5558
[営業時間]9時~18時
[休日]火

安新

ふぐの子オイル

ふぐの子オイル(900円/税別)

ふぐの卵巣を3年間漬け込んで作る、石川伝統の発酵食品、ふぐの子糠漬。それをコンフィにしてオイル漬けに。たとえば茹でたパスタに和えても◎。手軽に美味しさを楽しめる。

[住所]石川県白山市美川永代町甲88-1
[電話]076-278-4934
[営業時間]9時~18時
[休日]水(祝日の場合は営業)

わくわく手づくりファーム川北 産直物産館

金沢百万石ビール

(左)金沢百万石ビール ペールエール(398円/缶)
(右)金沢百万石ビール コシヒカリエール(398円/缶)

田園風景が広がる川北町で、転作田を利用して北陸の気候に合った六条大麦を栽培。霊峰白山からの水を使い、麦から育てた、農家が作る本物の地ビール。香りよくクリアな味わいがいずれも魅力的。

[住所]石川県川北町壱ツ星183-3
[電話]076-277-8989
[営業時間]10時〜18時
[休日]火・水

松葉屋

月よみ山路

月よみ山路(750円/1棹)

純度の高いザラメと、葛を使って蒸し上げられた餡は、ほどよい甘さでしっとりした食感。そしてどこを切っても大きな栗が顔を出す。すべて手づくりで作り続けられる伝統の味だ。

[住所]石川県小松市大文字町69
[電話]0761-22-0120
[営業時間]9時~18時、水・日・祝は~16時
[休日]年始

金沢匠菓 タナカラ

おはぎ

(上)あんこ(140円)
(左)上林茶舗厳選抹茶使用 お抹茶モンブランおはぎ(280円)
(右)小いちごのホワイトチョコ(308円)

小さくて見た目もかわいいモダンなおはぎ。厳選された素材でゆっくり仕上げた粒あんや餅米をベースに「一個一会」がコンセプト。人気のモンブランをはじめ選ぶのが楽しい!

[住所]石川県野々市市粟田6-208
[電話]076-259-1628
[営業時間]10時~17時
[休日]月(祝日の場合は翌休)

シャルキュトリー ガリビエ

シャルキュトリー各種

(左)ソンシン セック(サラミ) (1153円/89g)
(右)フュメ(ソーセージ) (646円/162g)
(手前)鴨と緑胡椒のテリーヌ (519円/74g)

白山麓の里山で、大切に育てられた地元産の素材を中心にハムやソーセージを作るシャルキュトリー専門店。フランスで修業した伝統製法を守りながらどれもていねいに作られている。

[住所]石川県能美市徳山町ヤ55-1
[電話]0761-58-2013
[営業時間]10時~18時
[休日]火・水

※掲載されている営業時間等の情報は、状況に応じて変更になる場合があります。電話などでお問い合わせください。

撮影/貝塚 隆 取材/池田一郎

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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