ひやしあめってなに?
関西のおばちゃんのバッグに入っている「アメちゃん」、とは関係ないらしい。広辞苑にその記載はなく、google検索すると<飴湯を氷でよく冷やしたもの>(デジタル大辞泉プラスより)と出てきた。で、飴湯ってなんぞや……と調べてみました。
ざっくりいうと、お湯で溶いた水飴に生姜の搾り汁を加えて作る飲み物だ。温かいものは「あめゆ」と呼ばれ、コレにたっぷりの氷を入れてキンキンに冷やして飲むのが「ひやしあめ」。水あめのやさしい甘さに生姜の爽やかな風味が利いた、淡い琥珀色のドリンクなのだ。
その歴史は江戸時代まで遡る
“昔ながらの飲料”とよく称されるひやしあめだが、正確な誕生の時期は不明。ただ、幕末に刊行された大阪のグルメガイドともいうべき画帳『花の下影』には、心斎橋のあめゆ屋台の風景が描かれていることから、江戸時代末期には温かいバージョンは既に存在していたことがわかる。
当時の大阪では夏バテ予防の滋養飲料として「あめゆ」が飲まれていたそうで、関東でいうところの甘酒的なポジションといったところのよう。明治期に入り、製氷技術の発達とともに、冷やして飲む「ひやしあめ」に変化していったとされる。
関西では“夏の涼”としてお馴染み
大正時代までは関東や東海地方でも飲まれていたようだが、太平洋戦争で多くの製造業者が廃業して生産が下火に。空襲被害が比較的少なかった京都や奈良で製造が続けられたことから、主に関西圏を中心にひやしあめ文化が残ったという。
関西の自販機には当たり前に「ひやしあめ」がある
関西や中国地方の一部では、今も暑い時期にひやしあめを飲む習慣があり、まさに夏の風物詩といえる。
スーパーや自動販売機、はたまた縁日の屋台などでごく普通に売られているので、関西人が関東に出てきて「ひやしあめがどこにもない!」と驚いた、なんてエピソードをちらほら耳にすることも……。
京都駅ではひやしあめ専門店がお出迎え
ひやしあめといえばその名が挙がる、京都宇治の岩井製菓。
同社が、「関西圏以外の人にはあまり知られていないニッチなひやしあめにスポットを当てたい」と京都駅ビル内に専門店『とにまる 京都駅cube店』をオープン。ひやしあめやあめゆを主軸に、アレンジドリンク、ひやしあめ味のソフトクリームまで販売していて、ひやしあめを広く楽しめる。
[住所]京都市下京区烏丸通塩小路下ル東塩小路町901 京都駅ビル2階 京名菓・名菜処 亰
[電話]075-343-1020
[営業時間]11時~18時
※新型コロナウィルス感染拡大防止のため時短営業中。変更はHPより随時お知らせ
[定休日]無休
https://www.thecube.co.jp/
自宅で「ひやしあめ」作りに挑戦!
首都圏を探し歩いてみたが、やはりひやしあめを売っている店は見つからず。ということで、家でも簡単にできるレシピを調べ、ひやしあめ作りにチャレンジしてみました。
・生姜:200g ※すりおろして生姜汁と搾りかすに分ける
・きび砂糖または麦芽水飴:300g
・水:500cc
・お茶パック
【作り方】
(1)生姜の搾りかすをお茶パックに詰め、鍋に水とともに入れてひと煮立ちさせる
(2)生姜の搾りかすを捨てた(1)に、きび砂糖と生姜汁を加え、さらにひと煮立ち
(3)粗熱をとって冷蔵庫で冷やして完成。水や炭酸水で割っていただく
生姜のすりおろしさえ頑張れば、工程も少なく簡単に出来上がる。
そのままスプーンで少々舐めてみると、ニッキ飴のような味わいだ。濃厚な甘さに生姜がキリリと利いて、体にじんわり染みる感じ……。クーラーで身体が冷えたときには、お湯割りで「あめゆ」として飲んでも良さそう。
お取り寄せしたい瀬戸内版ひやしあめ
手作りも楽しいけど、やっぱり生姜のすりおろしが面倒(笑)。でも大丈夫、今やお取り寄せ時代だ。まだ飲んだことがない人は、お取り寄せして試してみるのもオススメです。
伝統的なひやしあめに、太陽をたっぷり浴びた瀬戸内のレモン果汁と高知県産のフレッシュな生姜を加えて、一層美味しく仕上げた商品。
麦芽の甘さに生姜とレモンの爽やかさが調和して、なんともやさしい飲み口だ。3種類のレトロな絵柄のガラスのコップも郷愁を誘ってきます。
全国的にみるとまだまだ知られていない「ひやしあめ」の魅力に迫ってみました。関西人が「昭和のノスタルジックな味」と言っていたけど、道産子の著者でも不思議と懐かしい味わいだったな。ますます暑くなりそうな今年の夏、一滴の涼にぜひどうぞ。
撮影/飯田かおる、鵜澤昭彦(瀬戸内レモン果汁入り冷やしあめ)
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