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「食べてはみたいけれど、ハードルが高い」……それが“二郎系”

二郎系ラーメン店「ピコピコポン」のラーメン

ラーメンに興味がある方なら誰しもが聞いたことがある「二郎系」。一言で二郎系ラーメンについて問われたら、どのようなイメージを持つだろうか?

‘’いつも並んでいるイメージだけど、入ったことはない。量が多そうで食べ切れる自信がない。お店の雰囲気が怖い。頼み方がわからない。若い時に行く機会を逃したからもう一生行かなそう’’

そう言った声が多く上がるのではないか。

食べてはみたいけれど、ハードルが高い。それが二郎系と言われるラーメンだった。

そもそも二郎系ラーメンと呼ばれるお店は、本店を東京・三田に構え、全国各地にある「ラーメン二郎」から味や見た目などのインスパイアを受けているお店のことである

麺の上には野菜(モヤシとキャベツ)と「ぶた」とよばれるチャーシューが載せられており、豚肉を主な材料とした出汁に、チャーシューの煮汁をベースにしたタレを加えた味付けが特徴のお店だ。

「二郎系」ではなく、「ラーメン二郎」と名乗れるお店は、ラーメン二郎で修行をし、本店の店主に認められた人達だけが、のれんわけを許されている。だが、店舗によって味付けのマニュアルが有るわけではないようだ。

なので、一口で味を説明しろと言われても、とりわけ難しいジャンルではあるが、二郎系と呼ばれるどの店舗も「ラーメン二郎」をリスペクトしているということが共通している。

ボリュームがあり、しっかりした味付けにハマるファンも多く、「ジロリアン」という言葉が派生するほど。瞬く間に全国に二郎系という言葉や店舗が広まった。

ラーメンファンを驚かせたひとつの呟き

2020年1月28日。当時、早稲田大学に通う「清水くん」と名乗る青年が、とあるツイートでバズり、日本中のラーメンファンを驚かせた。

大学の近くの高田馬場駅付近の二郎系ラーメン店「ピコピコポン」でバイトしていた清水くん。ラーメン好きの彼は、今まで食べた各店舗のラーメン屋さんの感想を、事細かく、彼にしかできない独特な表現を文章にして、日々Twitterに挙げていた。

そんな彼の人生を変えたのは、バイト先の「ピコピコポン」の宣伝も兼ねたTwitter上での、たった一つのツイートだった。

二郎系ラーメン店「ピコピコポン」の前に立つ清水くん

「店内の雰囲気が怖くて行けない」「1人だと心細い」を解消する「レンタル二郎食べる人」という斬新なサービス

《『レンタル二郎食べる人』というサービスを開始します。1人で入りにくい、初めてでルールが分からない、食べっぷりを見たい、寂しい等、の場面でご利用ください。交通費だけいただければどこへでも(要日程相談)食べに行きます。飲食代は自分で支払います。美味しそうに食べるのが得意です。》

清水くん/レンタル二郎食べる人

「ピコピコポン」のラーメンを持つ清水くん

どうやら交通費さえ支払えば、一緒にラーメンを食べてくれるらしい。Twitterの文字制限、140文字以内で収まるほどのとってもシンプルなサービスの提案をしたのだった。

初めはお客さんとして通っていた元バイト先「ピコピコポン」。そこのラーメンが大好きで週に2回は通っていたという。店主に顔を覚えられた彼はバイトをしないか?と、声をかけられることに。

やはりお客さんからみても、ラーメンが好きな人に提供してもらいたいという気持ちは大きいはず。例えアルバイトだとしても。

ラーメン屋といえば、殺伐としたイメージだが、注文の際に意外とコミュニケーションを取るタイミングは多いと話す。

トッピングのバラナンコツ

彼はお客さんとの会話で、あることに気づく。

「ラーメン屋でバイトをする中で、二郎系のお店に行きづらいといったお客さんの声をよく聞いていました。『レンタル何もしない人』のオマージュで、面白そうだと思って初めはノリでした。まさかこんなに反響があるとは思いませんでした。依頼がたくさんきたし、冗談って言うのも面倒でやらざるを得なかった感じです」(清水くん)

「レンタルなんもしない人」とは、Twitterを軸に「なんもしない」サービスを提供する男性のことである。唯一無二のサービスで、多くのメディアにも取り上げられている為、記憶に新しい人も多いはず。

本人はノリで書いたとはいえ、そのツイートは瞬く間に広まり、ツイートした瞬間に30〜40件の依頼が届いた。それだけでは無く各メディアの取材依頼があり、Yahooニュースにも掲載されたほど、反響は大きかったのだ。

「それほど二郎系ラーメンのハードルが高いということ。店舗に行って食べてみたいけど、1人では行けない人が多いと感じて、このサービスは需要があると改めて思いました」(清水くん)

清水くんにDMを送るお客さんの依頼理由は「ラーメンを食べたいけれど、頼み方がわからない」「店内の雰囲気が怖くて行けない」「1人だと心細い」「清水くんが沢山食べている姿を見てみたい」「日常の悩みを聞いて欲しい」などなど。

依頼の理由は様々だが、昨年一年間で応じた依頼はなんと130件、のべ160人に帯同した

なかなか1人で足を運ぶのは難しいといった悩みを持つお客さんが、世の中には沢山いたのだ。

たった一つのツイートで、彼の人生だけでなく、彼に出会った数多くの依頼者の人生も変えてしまったようだ。

食べ応えのある麺

二郎系ラーメンの魅力を知って欲しい

「依頼者は老若男女、年齢も様々です」(清水くん)

「レンタル二郎のラーメン図鑑」より


 

「レンタル二郎のラーメン図鑑」より


 

「レンタル二郎のラーメン図鑑」より

交通費さえ支払えば、彼は北から南までどこへでも行く。

「印象的だった依頼者は、東京在住の方で、会津若松のラーメンを食べたいとお願いされ、鈍行で依頼者と一緒に5時間かけて福島県までラーメンを食べに行ったこともあります」(清水くん)

彼はどんな依頼でも「依頼者が喜んでくれるなら自分も嬉しい」と話す。二郎系のラーメンの魅力を彼から直接伝えられることがやりがいだという。そして、死ぬまでに一杯でも多く大好きなラーメンを食べたいという強い想いがあるのだ。

だから、ラーメン代すらも、自分で負担する。

 

二郎系ラーメンの魅力を語る清水くん

(後編に続く)

文/白石あさえ、撮影/スギゾー

 

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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おとなの週末Web編集部
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