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風景に込められた魅力をあますことなく伝えるアートの不思議 「おひるねハウス」

弁天サロンの脇に自転車を止め、佐久島に来た最大の目的を目指します。島を代表するアートともいうべき「おひるねハウス」です。人気アニメの劇場版『名探偵コナン 天空の難破船』(2010年公開)に登場したことで、コナンのファンにも有名です。

弁天サロンからいったん内陸に入って昔ながらの集落を抜け、5分ほど歩くと、再び海に出ます。浜辺に、その“黒い立方体”が建っていました。サイズは、3m×3m×3mの小屋のような木造の大きな建造物。建築家の南川祐輝(ゆうき)さんの作品です。2004年に建てられ、傷んだため13年に再制作されました。

おひるねハウス

横からは、1枚の黒い壁に見えましたが、前面に回ると、中は区切られ、9つの空間が設けられていることが分かります。向こうには、佐久島の美しい海や空が覗いています。

佐久島のアートの中で代表的な存在だ

じっと眺めていると、あることに気付きました。「おひるねハウス」を視界に入れて見ると、海や空の美しさが際立って感じられたのです。あくまでも、これは個人的な感想です。ただ、黒一色の色彩と、立方体の中にさらに9個の立方体があるというユニークな造形とのコントラストが、漫然と接しているだけでは受け止め切れずに感知できなかった自然の魅力を、鑑賞者に気付かせているのかもしれません。

そして、このアートは、眺めるだけでなく、体感できることが最大の特徴です。実際に、この9つの空間には、それぞれ人が入れるのです。ハシゴがかけられているので、身長よりも高い空間にも上れます。座ったり、寝そべったり。「おひるね」というネーミングの所以が、ここにあります。

ハシゴを伝って空間に入り、ゆっくりと身を横たえます。微かに通り抜けていく潮風が心地いい。ゆっくりと目を閉じました。今度は、やさしい波の音が耳に届きます。普段の生活で緊張を強いられた神経が鎮まっていきます。自ずと呼吸がゆっくりになりました。

中に入ると、こんな風に見えます

「ゴールデンウイークの時は、写真を撮るのに2時間待ちだったんです」(三矢さん)。たしかに、空間は9つしかないので、大勢詰めかけると、記念撮影も一苦労です。平日のこの日は、他に観光客はおらず、のんびりと眺め、寝そべることができました。

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白の色彩が空と海に映える「イーストハウス」...
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おとなの週末Web編集部 堀
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