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意外と大変! ネギの育て方

――大貫さんはどんなネギを育てているのですか?

大貫:毎年品種を変えながらいろいろ育てています。育てる品種の基準は、基本的に甘みがあって柔らかく、歯切れがよく美味しいもの。品種によって、同じタイミングで植えて早くできるものと遅いものがあるので、僕の場合はだいたい3品種を組み合わせています

2021年に植えて2022年の6月に収穫・出荷するネギは「元晴(もとはる)」、12月~3月に出すのが「味十八番(あじじゅうはちばん)」です。今年は「春扇(はるおおぎ)」という品種を試してみようと思っています。

岡田:この冬にうちの店で出させてもらった、ボンズさんの長ネギは「味十八番」だったわけですね。お客さんのリクエストで窯で焼いてみたらとろりとしてとても甘くなり、抜群に美味しかったです。

大貫:ありがとうございます。長ネギの出荷時期は9月から3月頃までがメインです。とはいえ、需要があるので6~7月にも出荷していて、「若ネギ」という形で出しています。ちなみに、長ネギは関東では真夏は穫れません。

窯で焼くとより甘みが増す
窯で焼くとより甘みが増す
見た目からとろ〜り
見た目からとろ〜り

――長ネギを育てる上で、どんな工夫をされてますでしょうか?

大貫:できるだけ雑草を生やさないことと、いかにきれいに作るかということを意識しています。

一般的なネギ農家さんの場合は、ネギを何列も植えてその通路に除草剤を撒きます。

でも僕は有機農業なので、農薬は使えません。「マルチシート」という黒いシートを敷き、苗を田植えのように差していくんです。シートで覆ったところは雑草が生えなくなりますが、ネギを植えた穴から雑草が生えてくるので、それを抜いていきます。除草剤を撒けたらどんなに楽だろうと思うことはあります(笑)。

岡田:ネギはどれくらいの期間、どのようにして育てるんですか?

大貫:先程も申し上げた通り、早生と晩稲があり、収穫まで6~9ヶ月程度でしょうか。タネを蒔き苗を定植させて土寄せを5~6回程度行います。

――それは、土寄せをしていくことで伸びて、また伸びたところを土寄せし、白いところをどんどん伸ばしていくということでしょうか?

大貫:そうです。伸びて被せて伸びて被せてとやっていきます。被せないと陽に当たった部分は緑色になってしまいます。できるだけ白い部分を長く作り、可食部が多くなるように少しずつ土寄せをして育てます。

ただ、農薬を使う農家さんは溝を掘って定植しますが、僕はシートを敷く分、土の高さがゼロのところからスタートするので、その分短く仕上がるんです。

――収穫のときってスポッと抜けるんですか?

大貫:土の硬さや土寄せした量によると思います。深谷などの大産地に行くと、しっかり植えています。そのうえ、半端じゃない量を作っているので、最初に機械で山の下を崩してから抜いていくというやり方をされています。

うちの場合はそれほど量を作らないので手で抜いています。溝の分の10cmほどがないために比較的抜きやすいとは思います。

岡田:根が張らないんですか?

大貫:ネギの根っこというのは、下に向かって伸びないんです。下に向かっていこうとしても、土寄せの際に周りの土が盛られていくので、下に土がない分、上に向かって伸びるんですね。

なので、羽生や行田のような水田地帯で水はけが悪かったとしても、比較的作りやすいんです。

岡田:へぇぇぇ! 面白いですね。

大貫:「味十八番」などは、3月になると葱坊主が出てきます。野菜には、成長段階が2段階あって、栄養成長と生殖成長があり、自分を大きくする成長と子孫を残す成長で切り替わるんです。葱坊主は生殖成長にあたるので、比較的変化がわかりやすいと思います。

これが葱坊主
これが葱坊主

――葱坊主って種のもとですよね? それが出てくると固くなるイメージです。

大貫:そうですね。食べられなくはないですが、ネギとしての味はそこまで美味しくはないです。

――栄養が種にいってしまうということですか? 以前、岡田さんのところで葱坊主を食べさせてもらいました。

大貫:そうです。葱坊主は食べると意外に美味しいので、たまに食べます。

料理人さんの中には、葱坊主が欲しいとおっしゃる方もいますよ。素揚げにしたり、蕾の状態だったらほぐせるので、ほぐしてかき揚げにしたり。うどんや蕎麦などの薬味にも使えます

岡田:僕は窯で焼いて、シンプルに塩とオリーブオイルで召し上がっていただいてますね。

初めていただく葱坊主に衝撃
初めていただく葱坊主に衝撃

――食べたことがなかったのでおっかなびっくり食べましたが、ふわりとしていて美味しかったです。ちなみに青い部分って食べないんですか?

大貫:みんな食べないって言うんですよね。

――私はもったいないと思って、よく食べます!

大貫:青い部分は大きすぎるので出荷前に切ってしまうため、世の中にはそれほど出回らないと思います。直売所で売られているものや泥ネギだと折り畳まれて入っていることもありますね。

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市村 幸妙
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