4月から新年度となり、大手アイスメーカー(お菓子メーカー)各社のアイスや人気お菓子の値上げに関する報道が相次いでいます。ゴールデンウィークに入り、夏への準備が進む中で、価格の変動による「冬の時代到来」とも言える事態が起こっています。
画像ギャラリーしかし、そんな中で九州最大手のアイスクリームメーカー丸永製菓は、3月に関東工場(栃木県さくら市)の製造能力を約1.5倍に増強すると発表。年内をめどに、敷地内に大型の物流冷凍庫も建設する予定であることが明らかとなり積極的な投資に踏み切る姿勢を見せています。総投資額はなんと20億円超だそうです。
国内メーカーで初めて米コカ・コーラ社とライセンス契約を締結して開発した4月26日(火)にコンビニ先行販売された新商品「ファンタ グレープ アイスバー」も手掛けています。※5月16日(月)から一般販売。
炭酸飲料の「ファンタ グレープ」も飲みたくなる味わいで、まさにキンキンに冷えた「ファンタ グレープ」の味そのものだ! 丸永製菓の味へのこだわりや気遣いがとてもよく伝わる商品です。※「FANTA」と「ファンタ」はThe Coca-Cola Companyの登録商標です。
丸永製菓の本社は福岡県久留米市東櫛原町。1933年創業でもともとは和菓子店だったが、一般家庭に冷蔵庫が広まり始めた1960年にアイスクリーム作りを開始した老舗アイスメーカー。アイス製造に将来性を見出した丸永製菓は和菓子をモチーフとしたアイスを考案したのがはじまり。創業者は和菓子職人で、冷凍しても硬くならない“あんこ”の開発に成功しました。
蓋をするようにアイスミックスを入れアイス棒を挿入し-38℃のレーンを通過して完成させます。
今回は、「丸永製菓 関東工場」をご紹介しながら今年で60周年を迎えた「あいすまんじゅう」を前篇とし、50周年を迎えた「白くま」を後篇として「おとなの週末WEB」限定でお届けします。
丸永製菓の看板商品は、1962年から発売されているロングセラー商品「あいすまんじゅう」。濃厚なアイスクリームの中に北海道産小豆を使用したやわらかい小豆あんが入っています。ずんぐりした形が特徴の棒アイスで「福岡県の県花である、梅の花の形なんです」と取締役の永渕寛司さんが教えてくれました。
ずんぐりとした形の「あいすまんじゅう」に変化が!? その秘密に迫る
あいすまんじゅうのおいしさの秘密を探ろうと、特殊なルートを使い特別に工場の潜入可能なルート部分のみ中へ入れてもらいました。案内してくれたのは、丸永製菓 関東工場課長の荒井健二さんです。なんと、自分(荒井健治)と同姓同名ではありませんか! 不思議なご縁を感じました。
工場の敷地内に入るには定められた衛生管理基準をクリアし、クリーンスーツを着用することが条件になります。クリーンスーツを着用していてもわかるぐらい工場内はひんやりとしており、ところどころ湯気や甘い香りがほんのり漂っていました。
「あいすまんじゅう」を作る工程は、原料の乳製品や砂糖などを大きなタンクでまぜ、アイスミックスという液体を作リます。
食感をなめらかにするため、アイスミックスの水と脂肪分をまぜて均一にする(乳化)。その後、高温で殺菌し冷やして半日以上寝かせ(熟成)ます。
注目!2種類のアイスミックスを使う理由とは
あいすまんじゅうは2種類のアイスミックスを使い、製造されています。あいすまんじゅうの外側部分のアイスミックスは溶けにくく、コーティングの役割を持っています。この工夫をすることで食べやすさやなめらかな食感を生み出しています。
アイス研究家として注目したのが、アイスミックスよりも凍りやすいアイスの原液で、あいすまんじゅうの外側を薄くコーティング(シェル加工)されていたことです。
固まる(硬化)前のアイスミックスを特別に味見させてもらいました。
味わいの感想は…うまい!色が黄色いのが外側の部分(写真左)で白いほうが内側に使用されるアイスミックスです。どちらも美味しいが、飲み比べてその違いが一目瞭然。どちらも、濃厚な生クリームのような味わいで、白色のアイスミックスの方がより滑らかで濃厚さが増しているように思います。
「そうなんです。白いアイスミックスの方は空気を含ませて均質化しているため色が白っぽくアイスクリームとしてこの時点ではまだ固まっていませんが、濃厚で乳製品の味わいを強く感じるミルクシェイクのような感じですよね。アイスクリームに比べると製品温度が高いのでその分あいすまんじゅうのこだわりがより伝わりやすかったんだと思います」と荒井さん。
見応えがあったのは、このアイスミックスをあいすまんじゅうの形にする工程です。白いクリーム状のアイスミックスが梅の花の型枠に次々と注がれていきます。
そうそう! あいすまんじゅうの形状が今年から変わっているように思いますが…。
「よく気がつきましたね。さすが、アイス研究家ですよね。今までは、すんぐりとした形でしたが、より食べやすくするようにモールドの形状を変え、製品容量を変えずに5ミリ細くしたんですよ!」と荒井さん。
アイスミックスを入れていた金型からアイスミックスが抜き取られ、そこに小豆あんが入り、再度アイスミックスを充填して固まらないうちにアイス棒がさし込まれていきました。
実は、金型を5ミリ細く改良したことが食べやすさに繋がっただけではなく、前述のコーティングの工夫がされることで従来よりも固まりやすくなり食べるときに溶けにくく、でもなめらかな食感を生み出せるそうです。「試行錯誤を重ね、7年前からこの工夫を始めました」と永渕さん。長い間売っている商品も、工場ではおいしさを追求して改良と工夫を重ねていました。あいすまんじゅうは多いときで関東工場では1日約10万個作られるといいます。
できたての「あいすまんじゅう」を試食させてもらいました。
外側はかたいが、中の濃厚なアイスクリームとこだわりのあんこは凍る直前で艶やかだった。いつにも増しておいしく感じロングセラーになる理由がよく理解できました。
今年は、60周年という節目の年ということもあり、プレミアムあいすまんじゅうが新ラインナップとして仲間入りをしている。設備にこだわるだけでなく、モノづくりに対しての飽くなき探究心こそが丸永製菓のあいすまんじゅうが物語っているのではないかと思います。
次回は、工場潜入から「白くま」についてお届けします!
文・写真/シズリーナ荒井、写真提供/丸永製菓(アイス製造ライン)
シズリーナ荒井
初めてアイスを食べたのは“1歳一ヵ月”(証拠映像資料有り)。人生で52,000個以上ものアイスを食べた記録を保持するアイスマニアであり、日本一アイスを愛するスーパーアイスマン。
どうしたらより美味しくアイスクリームを食べられるかを真剣に考え、氷菓子(アイス、ソフトクリーム、ジェラート、かき氷)の研究を開始。氷菓子は原材料が同じでありながら製品温度が異なることで感じ取れる味が違うことを発見!
食べ方をデザインする“イートデザイナー”として市販アイスのアレンジレシピや企業同士の商品コラボを手がけており、“かけ合わせグルメ”「雪見カレーヌードル」の考案者として、SNSで話題に!
年間4,000種類以上のアイスクリームをテイスティング。アイス現場のすべてを知りつくすアイスジャーナリストとして活躍中!2021年6月には著書『コンビニ&スーパーのアイスが極上スイーツに! 魔法のアイスレシピ』(KADOKAWA)を出版。
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