週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。 著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返…
画像ギャラリー週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。
著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返しながら作り上げた自信作のオリジナルレシピを、詳細なイラストと臨場感あふれる筆致で紹介しています。本欄では3月3日号で通算1600話を突破した膨大なエピソードのなかから、毎週1つを取り上げ、その料理にまつわる四方山話をお届けします。
長引くコロナ禍で、自炊をする人が増えているいま、「クッキングパパ」を参考に料理を作って食べて楽しんでみませんか。第10回目は、「ちまき」です。
端午の節句がいつから日本独自の「こどもの日」に?
5月5日は、「こどもの日」として祝日である一方、奈良時代から「端午の節句」と呼ばれ伝統行事として親しまれてきました。
端午の節句は元々、中国に由来します。季節の変わり目であるこの時期、病気や災厄(さいやく)が増えるとされ、薬草の「菖蒲(しょうぶ)」を軒下に下げたり菖蒲湯につかったりして、邪気を祓(はら)い無病息災を願う中国の風習が伝来したものです。
日本に伝わって武道や武勇を重んじる意味の「尚武」と「菖蒲」が同音であり、菖蒲の葉の形が剣に似ていることから、鎌倉時代に武家の男児の健やか成長と立身出世を祝う行事に定着。
江戸時代には、一般庶民の間でも「鯉のぼり」を泳がせるなど日本独自の行事として広まりました。ちなみに勇壮な「五月人形」を飾る習慣は、この時期、しまい込んでいた鎧兜や武具を虫干ししたのによるとも言われています。
関東は「柏餅」で関西は「ちまき」 子どもへの“願い”は同じ!
端午の節句に食べる行事食ですが、これまた、関東と関西では違ってきます。関東では、小豆あんやみそあんの入ったお餅を柏の葉で包む柏餅が一般的です。柏の葉は新芽が出るまで古い葉を落とさない(絶やさない)ことから、子孫繁栄の縁起物と言われ、江戸時代、江戸で食べられるようになったのがはじまりとされています。
一方、関西では、ほんのり甘いお団子を笹の葉で細く円錐形に巻いた「ちまき」を食べます。ちまきは邪気を祓う中国の故事に由来し、平安時代に日本に伝わると、神聖とされる茅(ちがや)の葉で巻いて食べたことから「ちまき」と名付けられたそうです。
同じちまきでも、鹿児島や宮崎、熊本では竹皮で包んだ餅米を木や炭を燃やした灰の灰汁(あく)で煮込んだ餅菓子「あくまき」をちまきとして、端午の節句にいただきます。
農林水産省のホームページによると、あくまきは保存がきき腹持ちも良いことから、薩摩では戦陣食として活用され、西南戦争で西郷隆盛も食べたとか。
いずれにしても、いつの世も我が子が強く逞しく育つようにとの切なる願いがそれぞれに込められています。
クッキングパパの「ちまき」は関東風? 干しエビと希少な栄養満点の素材とは?
クッキングパパ「COOK.73 花見は荒岩ちまきで キマリ!!」は、関西でいただく和菓子のちまきではなく、具入りの餅米を竹皮で三角に包んで蒸したおこわの中華ちまきです。関東でちまきといえば、こちらが一般的です。これからの季節、レジャーや運動会などに用意すれば、目先を変えた行楽弁当としても喜ばれそうですね。
レシピにある材料の中で特筆すべきは、干しエビ、キクラゲです。干しエビは、中華料理の高級調味料「XО醤(ジャン)」にも使われ、高たんぱく、カルシウムを誇り、凝縮されたうま味はまさに中華の万能選手。ちなみにXО醤は、1980年代、香港にあるペニンシュラホテルの料理人が開発したとされています。
コリコリした歯ごたえのあるキクラゲは、キノコの一種でまるでクラゲや耳のような形をしていることから、漢字で「木耳」と書きます。中国では古くから薬膳や漢方薬に使われ、豊富な食物繊維とビタミンDを含んでいます。特に骨や歯を丈夫にするビタミンDは、日光を浴びて体内で合成されますが、紫外線対策を怠らない女性にとっては不足しがちでもあることから、積極的に摂取したいですね。
◆ポイントは【1】鍋肌からしょう油を回し入れ【2】濡らした竹皮で隙間なく包む
さて、調理のポイント2点おさらいしておきましょう。
1点目は、中華鍋に水に浸して戻した干しエビと餅米を炒めて味付けにしょう油を入れるとき、鍋肌に沿って回し入れます。
鍋肌とは鍋の内側、側面を指します。鍋肌で熱されたしょう油の香ばしさを引き立たせてから具材に絡めるため、直接かけるより風味豊かに仕上がります。その際、鍋肌が高温になっているためしょう油が焦げやすいので、手早く鍋を揺すって絡めてから火を止めます。
2点目は、おこわを竹の皮で包む際、水に浸してしなやかにしてから、「表を内側にして」隙間ができぬようきっちり巻いていきます。竹の皮は天然の抗菌性と防腐性および通気性に優れ、もっちり美味しいまま長持ちできます。弁当箱がない時代、よく竹の皮でおにぎりを包んでいたものです。
巻き終わったら、蒸す前にいくつか冷凍してストックしておけば、急な来客やお子さんのおやつにも重宝しそうですね。
いよいよちまきを蒸していきますが、立ち上る竹の香りに癒され、巻くのにひと苦労した疲れも吹き飛びます。
前出の菖蒲の葉にも独特の香りとともにリラックス効果のある精油成分が多く含まれています。連休中、心身の不調の回復にぜひ、こうした植物の秘めたるパワーを上手に生かしたいですね。
※現在は当時の状況と異なる場合があります。
文/中島幸恵、漫画/うえやまとち、メイン画像/promolink-Stock.Adobe.com
◆『クッキングパパ』とは?
福岡市博多を舞台に、商社の営業課に所属するサラリーマン、荒岩一味が家族や同僚、友人らに得意な料理の腕前を披露、食を通じて周囲の人々に笑顔とパワーを与える物語。作中ある料理のレシピは、定番料理からオリジナルメニュー、地元九州の郷土料理まで多岐にわたり、詳細なイラストとポイントを押さえた簡潔な説明はいま、すぐ作りたくなると好評を博している。
週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で1985年から連載している人気シリーズで、2022年4月現在、単行本は161巻。
※「おとなの週末Web」の記事では本稿紹介の漫画、クッキングパパ 「COOK.73 花見は荒岩ちまきで キマリ!!」を一話丸ごと読むことができます。(申し訳ありませんが、現在サイト改修のため公開停止しております。再開時にはあらためてご連絡いたします)
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