夏に食べたくなるアイス。実は、気温によって食べたくなるアイスが変化しているって知っていましたか? 一般的に、アイスクリームは気温が22〜23℃を超えると、より美味しく感じ、25℃前後で美味しさがピークになると言われていま…
画像ギャラリー夏に食べたくなるアイス。実は、気温によって食べたくなるアイスが変化しているって知っていましたか? 一般的に、アイスクリームは気温が22〜23℃を超えると、より美味しく感じ、25℃前後で美味しさがピークになると言われています。一方で、気温が30℃を超えると、かき氷やアイスキャンディー(氷菓)のように、さっぱりとしたものが好まれます。
「シズリーナ荒井のアイス見聞録」第6回は、前回取り上げた丸永製菓の看板商品「あいすまんじゅう」と並ぶ同社のロングセラーアイスにスポットを当てます。
九州地方発祥のスイーツ 「白熊の顔に見えるから」
名前のルーツは、諸説あるものの「氷白熊」として残っている当時の文献を調べまとめると、戦後間もない1947年頃に鹿児島市内の喫茶店「天文館むじゃき」で誕生したかき氷であることがわかりました。かき氷に練乳をかけ、その上に三色寒天やサイコロ状に切った果物や十六寸(トロクスン)豆、フルーツなどをトッピングし、真上から見て白熊の顔のように見えるようにしたことが、その名の由来です。
丸永製菓の「白熊」誕生ヒストリー
もともと鹿児島を中心に南九州で親しまれて来た「白熊」を手軽に楽しんでもらおうと開発し、1972年に練乳をベースにしたかき氷にフルーツや豆などをトッピングした「白熊」を発売したのが始まりです。
その後、フルーツの具材などトッピングに工夫を加え、バラエティ化していく中で、「白くま」が誕生します。
1986年にはアイスバーの「白くま」を発売し、シリーズの幅をさらに広げました。現在では、アイスをトッピングした「白くまデザート」、果物の果肉を贅沢に使用した「白くまパフェ」など様々なバリエーションがあります。そして1994年には「しろくま」表記が生まれました。
今年50周年を記念して発売された新シリーズには、「しろくま」の表記を当てました。たっぷり果肉×フルーツソース×練乳かき氷の贅沢すぎるプレミアムなしろくまパフェ「PREMIUM しろくまパフェ」と「PREMIUM しろくまパフェ ストロベリー」が同時に2022年2月に発売されました。
「白熊」「白くま」「しろくま」…どれも正解
シリーズだけでも、12種類のラインナップがあります。「白熊」「白くま」「しろくま」…。一体どのように使い分けているのでしょうか?
商品名どころか、2000年代前半までは「しろくま」のパッケージに描かれているイラストにも統一感がありません。
広報担当者によると、1972年に発売されたときは「白熊」の名称だけでした。当時の商品受注手段は電話とFAXしかなかった為、ラインナップが増えていくごとに、お客さんがどの商品の「しろくま」アイスを求めているのか把握しやすいように商品表記を変えていました。ちなみに今でも電話注文は多く、誤発注を防ぐため現在も表記は分かれています。
白熊のイラストは、2006年にキャラクターを作り、シリーズで統一させようということで現在の「くま吉」が誕生しました。
「余談ですが、2009年にかわいい白熊のイラストに対して社内で名前を公募した結果、くま吉という名前に決定し、当社のアイスにはくま吉が目印のアイスになりました。今ではLINEスタンプにもなっていますよ」(広報担当者)
「しろくま」アイスのこだわりとは?
ということで、丸永製菓関東工場に再び潜入してきました。白熊製造ラインに入ってまずびっくりしたことは、これだけオートメーション化されている時代に、手作業でアイスの具材を丁寧に手作業でトッピングしています。
具材が輸送中にカップの中で踊らないように練乳で具材を動かないように固定されているのも目から鱗です。
広報担当者によると、「南九州でカキ氷メニューとして根付いていた「白熊」を元に商品化したしろくまアイスですが、出来立てのかき氷はスプーン通りが良くたべやすいです。ただ単に、ミルク味のかき氷の上に小豆やいろいろなフルーツがトッピングされたしろくまアイスを作るだけではなく、食べやすさにもこだわり、氷に空気を混ぜ込みながら冷却することでなめらかな舌触りを実現させました」とのこと。
確かに、凍っているのにスプーン通りが良いです。
九州名物が全国区になったきっかけとは?
「発売当初、九州を中心に販売していましたが、90年代全国のコンビニエンスストアに採用されたことをきっかけに販路が拡大。それに伴い、全国の販売拠点の整備をしました。2001年には札幌。2002年には東京・名古屋。2004年大阪・広島。2005年には仙台、と順次営業所を開設しましたが、全国展開の波に乗り、福岡・久留米工場だけでは生産が追い付かなくなり、2003年には栃木県に関東工場が竣工。中部以東の東日本地区への生産拠点を確保しました」(広報担当者)
つまり、今回お邪魔している丸永製菓関東工場ができたことにより、しろくまアイスが全国区になり、ロングセラー商品にさせたということになります。
エックス線検査による異物混入防止など厳しい規格をパスしたことで、輸出のハードルが高いと言われているアメリカとの取引が開始にも繋がりました。関東工場は今後もリニューアルを行い、生産体制を強化する予定だそうです。
なぜ、永渕(ながふち)製菓ではなく、丸永製菓?
ちなみに丸永製菓は1933年に永渕製菓所として創業しました。1956年に丸永製菓と名称変更をするわけですが、いったい何故「まるなが」という社名になったのでしょうか?
「私たちは◯(まる)に永で丸永製菓。丸は円を表し、途切れない永遠の永をとって丸永。つまり『永遠に途切れることなく繁栄していく』という願いも込めております」と広報担当者が笑顔で教えてくれました。
最後に…。アイスの新商品は3年以内で結果を出さなければ、終売になっていたが、コンビニエンスストアの影響が強い近年では、2週間で店頭から無くなる新商品もあります。そんな中で50年以上も売れ続けるロングセラー商品に触れ、改めて愛されるアイスを作り続けられることが難しいかということに気づかされました。
文・写真/シズリーナ荒井、写真提供/丸永製菓(アイス製造ライン)
シズリーナ荒井
初めてアイスを食べたのは“1歳1ヵ月”(証拠映像資料有り)。人生で52,000個以上ものアイスを食べた記録を保持するアイスマニアであり、日本一アイスを愛するスーパーアイスマン。
どうしたらより美味しくアイスクリームを食べられるかを真剣に考え、氷菓子(アイス、ソフトクリーム、ジェラート、かき氷)の研究を開始。氷菓子は原材料が同じでありながら製品温度が異なることで感じ取れる味が違うことを発見!
食べ方をデザインする“イートデザイナー”として市販アイスのアレンジレシピや企業同士の商品コラボを手がけており、“かけ合わせグルメ”「雪見カレーヌードル」の考案者として、SNSで話題に!
年間4,000種類以上のアイスクリームをテイスティング。アイス現場のすべてを知りつくすアイスジャーナリストとして活躍中!2021年6月には著書『コンビニ&スーパーのアイスが極上スイーツに! 魔法のアイスレシピ』(KADOKAWA)を出版。
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