悪魔の囁きの正体は…
体調が悪くならなかったとしても、悪くなったことにして約束を反故にしたことさえある。
ろくな人間じゃないなと自分でも思うけれど、実はそこまで罪悪感がある訳でもない。家の悪魔が悪いのだ。
言いくるめるのが上手いったらなんの。
私の思う理想の大人は、この家の悪魔と上手く関係を築けるか、もしくは退治することができるほどの意志が必要だと思う。
家の悪魔は、私を人付き合いから遠ざけようと必死だ。
「後輩なんだから断ったって文句言われないっしょ」
「一度断って疎遠になるなら友達とは言えないべ」
とあれやこれや言葉を重ねて、家でダラダラ過ごさせようとしてくる。どうにかして、この悪魔を滅せなければいけない。
そう思っていた。けれど、どうだろうか。
これって、単に疲れているだけな気がしてきた。
疲労が溜まっているから、約束を遂行するよりも、回復に努めよ、と内なる自分が声を発しているだけのような気がする。
自分が悪魔だと決めつけていた、その声は、きっと、外出するよりも家で休養を取れ、と自身にSOSのダイレクトメッセージを直接送り届けてくれていただけではないだろうか。
家の悪魔ではなく、メーデー。救難信号だったのだ。
大人は、自分の救難信号に耳を傾けられる人間のことを指す。
約束をしていたとしても無理はせず、適度に断ることもしながら、自分を一番にすることができる人間でありたいと思う。
とりあえず今日の予定はキャンセルしよう。
前田裕太(まえだ ゆうた)
1992年8月25日生まれ、神奈川県出身。愛媛県の名門、済美高校野球部の同期である高岸宏行とのお笑いコンビ「ティモンディ」のツッコミ担当。趣味はサッカー観戦、読書。テレビ番組で画力を披露したり、複数メディアでコラムを執筆するなど、マルチな活動で注目を浴びている。
ティモンディ
高岸宏行・前田裕太によるお笑いコンビ。コンビ結成は2015年、グレープカンパニー所属。高岸のポジティブなキャラクターや、二人の野球経験と身体能力などがバラエティ番組で引っ張りだこに。コンビの野球経験をいかしたYouTubeチャンネル『ティモンディチャンネル』の登録者数は約25万人。