クッキングパパの読んで美味しいレシピの話

実は30年前から「今 話題」 天然酵母パンの今昔と「クッキングパパ」直伝手作りのコツ

1993年発売のクッキングパパ 第31巻「COOK.302 ホンモノの味 天然酵母パン」より。当時から天然酵母パンは「今 話題」と記されていた

高級食パンブームに「陰り」 専門店乱立で価格と商品価値がミスマッチ? いまや、日本人の主食はご飯からパンへとシフトしています。 なかでも、二斤1000円を超える高級食パンは、“手ごろなぜいたく”がウケて数年前からブームと…

週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。

著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返しながら作り上げた自信作のオリジナルレシピを、詳細なイラストと臨場感あふれる筆致で紹介しています。本稿では3月3日号で通算1600話を突破した膨大なエピソードのなかから、毎週1つを取り上げ、その料理にまつわる四方山話をお届けします。

長引くコロナ禍で、自炊をする人が増えているいま、「クッキングパパ」を参考に料理を作って食べて楽しんでみませんか。第22回は「天然酵母パン」です。

パン作りの“キーマン” 天然酵母とイーストは何が違う?

クッキングパパ 第31巻「COOK.302 ホンモノの味 天然酵母パン」で取り上げる天然酵母とは、リンゴやレーズンなどのフルーツや野菜、米などの穀物に付着している多種多様な微生物です。

一方、パンやピザ生地作りには、市販されている「(ドライ、生)イースト」を使うのが一般的です。イーストは、「パン酵母」とも呼ばれ、パン作りに適した単種の微生物を純粋培養したもの。入手しやすいうえ、パン生地を発酵させるスピードも安定して速いので、プロから家庭まで幅広く使われています。

天然酵母は、複数の微生物が発酵して放つ芳醇な香りが特徴です。ただ、初めて自分で天然酵母を採取してパン種として発酵させてパン作りとなると、腰が重いかもしれません。

作中では半世紀にわたり、天然酵母パンのパン種を製造、各地にパン作りを広めてきた「東光寺」(奈良県桜井市)の「楽健寺天然酵母パン種」が使われています。フルーティーな香りのパン種は購入が可能です。

手に入れたスターターのパン種は生きていますから、世話やりをお忘れなく。酵母菌のエサとなるニンジン、リンゴをすりおろし、ご飯、塩、砂糖を与えましょう。パン種からプクプク泡が出て瓶いっぱいに膨らんでいれば、発酵・増殖が成功した目安です。上手に世話をすれば元気に生き続けますから、毎日、焼き立てパンを楽しめます。

また、お子さんの夏休みの自由研究を兼ねて、身近な食材から天然酵母を取り出し、発酵させて自家製種を作ってみるのも“ミクロ世界のふしぎ”を観察できておススメです。

天然酵母はじっくり、気長に発酵 夏場は万全の暑さ対策を

いよいよ、大切に育てたパン種でパンを作りましょう。パン種が、材料の水や小麦粉や砂糖や塩と結びつくと、発酵が進んで炭酸ガスを出し、生地が膨らみ、弾力のある香り豊かなパンができあがります。

その際、じっくり時間をかけてしっかりと発酵することです。特に天然酵母の場合、イーストを使うよりも余計に時間がかかります。ここはもう、「気楽に気長におおらかに」待ちましょう。

夏場の注意点は気温が高いゆえ、発酵が短時間に進み過ぎてしまうことです。そうなると、強い酸味などの異臭を放ち、焼いても膨らみません。予防策として、水や小麦粉、道具も冷やしてから生地を捏ねて、風通しの良い涼しい場所でじっくり、時間をかけて発酵させてから焼き上げます。

手作りの天然酵母パンはちょっと硬めで素朴な見た目ですが、噛めば噛むほどじわっと広がる小麦本来の風味がたまりません。

高級食パンブームに「陰り」 専門店乱立で価格と商品価値がミスマッチ?

こちらが荒岩流天然酵母パンレシピ。ライ麦やレーズン、クルミなどを好みで追加するのもいい!

いまや、日本人の主食はご飯からパンへとシフトしています。

なかでも、二斤1000円を超える高級食パンは、“手ごろなぜいたく”がウケて数年前からブームとなり、高級食パンを販売する専門店が各地に相次いで進出したほか、大手ハンバーガーチェーン店も参入するなど競合が激化しました。

ただ、毎日食べる主食に高価格を捻出し続けられず、価格に見合った商品価値が見い出せないといった消費者離れを起こし、2022年、ブームにかげりが見られています。

追い打ちをかけるように、ロシアによるウクライナ侵攻や急激に進む円安の影響で小麦価格は高騰、やむなく値上げせざるを得ない状況となっています。閉店が増える一方、新規の出店は、頭打ちとなっているようです。

今回の天然酵母パンですが、1990年代前半、クッキングパパで初めて取り上げられた頃は、特に健康志向の強い人々の間で関心を集めました。その後、まるでゆっくり発酵するかのように社会に浸透し、多くの人の手で作られるようになりました。派手なブームはないものの、天然酵母パンのホンモノ志向に、いま一度、目を向けてみてはいかがでしょう。

文/中島幸恵、漫画/うえやまとち

◆『クッキングパパ』とは?

福岡市博多を舞台に、商社の営業課に所属するサラリーマン、荒岩一味が家族や同僚、友人らに得意な料理の腕前を披露、食を通じて周囲の人々に笑顔とパワーを与える物語。作中ある料理のレシピは、定番料理からオリジナルメニュー、地元九州の郷土料理まで多岐にわたり、詳細なイラストとポイントを押さえた簡潔な説明はいま、すぐ作りたくなると好評を博している。

週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で1985年から連載している人気シリーズで、2022年4月現在、単行本は161巻。

※「おとなの週末Web」の記事では本稿紹介の漫画、クッキングパパ 「COOK.302 ホンモノの味 天然酵母パン」を一話丸ごと読むことができます。

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