明治期の札幌の街をつくった「札幌軟石」の故郷、石山エリア 一方、簾舞から札幌中心部方面に15分ほど行くと、同じ南区内に石山(いしやま)エリアがあります。 エリア内にある公園「石山緑地」は、札幌軟石の産出地だった巨大な石切…
画像ギャラリー民間調査会社による47都道府県魅力度ランキングで13年連続1位に輝く「北海道」。
観光地として圧倒的な人気を誇り、豊富な海の幸や新鮮な牛乳やチーズなどの酪農製品、札幌ラーメンなどのご当地グルメ、雄大な自然、スキーなどのアウトドア…とにかく”非日常的“な魅力がいっぱいです。
そんな北海道には、漢字の一般的な読み方から想像するのが難しい地名がいくつもあります。
九州の2倍強という広い大地ゆえ、馴染みのないエリアだと道産子でも読めないものも少なくありません。「おとなの週末Web」では北海道の難読地名を取り上げながらその周辺の観光スポットやグルメも紹介していきます。読み方を学びながら束の間の旅気分を味わってみませんか?
今回は札幌市南区の地名「簾舞」、何と読むでしょう?
答えは…
答えは「みすまい」と読む地名です。
簾舞は札幌市南区にある地名で、中心部から車で約40分。南区は、札幌市の面積の6割を占め、なんと、東京23区とほぼ同じ大きさです。ほとんどが山林で自然豊かなエリアです。
札幌の奥座敷・定山渓(じょうざんけい)温泉
簾舞から国道230号を西へ車で約15分。札幌の奥座敷、定山渓温泉に到着します。定山渓温泉の開湯は慶応2(1866)年と古く、修験僧の定山が豊平川の上流に湯治場をつくったのが始まりとされています。
人気の観光地で、連休に訪れると渋滞にはまることも。温泉街の中を豊平川が流れ、ゴールデンウイーク前後には鯉のぼりが空を泳いでいる姿を見ることができます。関東から連休中に友人が来た時に案内したところ、その雄大な姿に感動していたようでした。足湯につかりながら、渓谷の豊かな自然を眺めると、心が洗われます。
紅葉を愛でる空中散歩、札幌国際スキー場
定山渓温泉から約30分北上すると、札幌国際スキー場に到着。実は紅葉シーズンのみ、紅葉のゴンドラとして特別営業しているんです。
標高の違いから紅葉の色づきも違い、ゴンドラからは、黄色やオレンジ、赤のグラデーションが眼下に広がる様子を見られました。子どもたちも窓ガラスに張り付いて景色を楽しんでいました。
訪れたときは晴れていて、山頂からは小樽湾や日本海が望めました!山頂のカフェではソフトクリームも味わえます。大パノラマと濃厚なソフトクリームを堪能できる幸せなひとときでした。もちろん冬にはスキーを楽しめ、大勢のスキー客で賑わいます。
明治期の札幌の街をつくった「札幌軟石」の故郷、石山エリア
一方、簾舞から札幌中心部方面に15分ほど行くと、同じ南区内に石山(いしやま)エリアがあります。
エリア内にある公園「石山緑地」は、札幌軟石の産出地だった巨大な石切り場跡を公園に再生したものです。園内にはアーティスティックなデザインのオブジェが多く、見る人を楽しませてくれます。
石山はその名の通り、かつて建材に最適とされた「札幌軟石」の産出地でした。札幌軟石は4万年前に支笏湖ができた時の火山活動で流れ出た火砕流の堆積物が固まった際にできた石材で、市内にはこの石材を使った開拓期の石造りの建物が多く残っています。
明治時代の札幌市内は木造の家が多く、冬は寒さをしのぐために家の中で火を焚き、火災が発生しやすかったそうです。そこで、開拓使が発見したのが、加工しやすく質の良い札幌軟石。札幌軟石で造られた建物は保温性が高く、野菜や果物の保管、酒の醸造所などに利用されました。また、耐火性にも優れていることから、電話局や郵便局などの公共施設にも使われました。
明治初期に現在の南区で発見され、その後、札幌近郊に軟石造りの建物が数多く建てられました。また、軟石を運搬する道や馬車鉄道も整備され、現在の幹線道路や路面電車に発展しており、都市の基盤整備とも深いつながりがあります。
今も札幌市内や近郊には札幌軟石の倉庫や石蔵などが残り、おしゃれなカフェなどに活用されています。
ちなみに私は以前から地理が好きで、地理の楽しさを伝える活動をしています。街歩きイベントでこのあたりを巡りましたが、札幌の街を造った建物のふるさとに参加者の皆さんも興味津々の様子でした。
そのほか、南区には「滝野すずらん丘陵公園」や野外美術館のある「札幌芸術の森」など、市民の憩いの場所がたくさんあります。一足早い秋を楽しみに、自然とレジャーを満喫しに足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
文・写真/森順子
森 順子
元テレビ北海道アナウンサー。現在は教育サービスの会社を運営しながら地理の楽しさを普及する活動も行っている。地理女net代表/札幌国際大学短期大学部講師/札幌観光大使
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