まさに“ハリネズミ”の人付き合い
そうした袋小路に自分で自分を追い詰めた結果、この間、まだあまり仲良くない後輩と一緒の空間にいた時に、何か話をしなければと思い、咄嗟に、「彼女いるんだって?!見せてみろ!お前のこと好きなんて、どうせ物好きな変人なんだろう!」と鬼ハラスメントムーブを発揮してしまうということがあった。
我ながら、最悪なファーストタッチだった。
「あなた頭おかしいんですか」とツッコんで笑ってくれたので、よかった…ボケとして捉えてくれた…とホッとしたけれど、普通に嫌われても仕方ないことを言ってしまった。
仲良くなりたいのに、近づこうとすると相手に棘を向けてしまう。
一般的には、ハリネズミのジレンマとは相手を傷つけたり傷つけられることを恐れて近づけない、という意味で使われるけれど、本物のハリネズミ達は、きっとこの私の気持ちの方が、ハリネズミのジレンマだと同調してくれるに違いない。
傷つけたい訳ではないのだ。
何より、本心ではそんな思ってもいないことなのに、なんだか話の口実にそんなことを無理に口にしなければならないのは正直、疲れる。
本当は、別に後輩に彼女がいたって嫉妬もしないし、顔も知らない女性のことを悪く言うのも気がひけるというのに。
読者諸兄姉は、そんなこと言わなければいいのに、と思うだろう。
そんなことは分かっている。
もっと他にもふざけたことを言える余地はたくさんあるのかもしれないけれど、何か、ワイワイ騒げるようなこと言わないと!と思い、咄嗟に口に出てしまったのだ。
普通の会話を普通にしてみたこともあるけれど、その会話の最中に、あれ、こいつ普通のことしか言わねぇな、とか思われてるんじゃないか、と不安になる。
病気なのだろう。
先輩である自分が、楽しそうにしていなければ、後輩も気を遣ってしまう可能性がある、と思い、無理にはしゃいでしまったりもする。
良かれと思って、反射的にしてしまうのだ。
先輩と一緒にいれば、無理をしてそんなことを言ったりしたりしないのだけれど、同じように、後輩の子達とも、あまり変な気を遣わずに接していければいいなあ、と思う。
前田裕太(まえだ ゆうた)
1992年8月25日生まれ、神奈川県出身。愛媛県の名門、済美高校野球部の同期である高岸宏行とのお笑いコンビ「ティモンディ」のツッコミ担当。趣味はサッカー観戦、読書。テレビ番組で画力を披露したり、複数メディアでコラムを執筆するなど、マルチな活動で注目を浴びている。
ティモンディ
高岸宏行・前田裕太によるお笑いコンビ。コンビ結成は2015年、グレープカンパニー所属。高岸のポジティブなキャラクターや、二人の野球経験と身体能力などがバラエティ番組で引っ張りだこに。コンビの野球経験をいかしたYouTubeチャンネル『ティモンディチャンネル』の登録者数は約25万人。