週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。
著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返しながら作り上げた自信作のオリジナルレシピを、詳細なイラストと臨場感あふれる筆致で紹介しています。本稿では3月3日号で通算1600話を突破した膨大なエピソードのなかから、毎週1つを取り上げ、その料理にまつわる四方山話をお届けします。
長引くコロナ禍で、自炊をする人が増えているいま、「クッキングパパ」を参考に料理を作って食べて楽しんでみませんか。第39回は「ヒジキのフルコース」です。
ヒジキならではの磯の香りを味わうポイントは?
ヒジキは海藻の一種で、鉄分やカルシウム、食物繊維が豊富な栄養食品。クッキングパパ 第9巻「COOK. 86 磯の香り ヒジキのフルコース」では、食卓の“名脇役”ヒジキを引き立たせる4品を紹介しています。作中では、連夜の接待でお疲れの常務が「なんとも体が安心する味」と評しています。
まずは、ヒジキの戻し方から。
乾燥ヒジキは、水で戻すと8~10倍にも増えるので、できあがりの分量を考慮します。水に浸してかきまぜながら、汚れや砂をふるい、ヒジキを網杓子ですくいます。さらに、新しい水に20分ほどつけて柔らかくなったら、ザルにとって軽く洗い、風味と香りを残すようしっかり水気を切ります。
荒岩流レシピは「ヒジキのり巻き」&「ヒジキサラダ」で手軽に栄養補給
定番の炒め煮から、作ります。鍋は、中華鍋がベスト。鉄製の中華鍋は熱伝導率が高いうえ、底が丸いので煮汁がまんべんなく全体に回り、吹きこぼれの心配もありません。
充分に熱した中華鍋に油を回し入れたら、ヒジキ、食べやすく切った糸こんにゃく、厚揚げの小間切れを一度に強火で2、3分炒めます。中火にして醤油、酒、砂糖で味付けをしたら、火を弱め焦げ付かぬよう時々かきまぜながら、10~30分煮込んでできあがり。具材の組み合わせを変えると、飽きずに楽しむことができます。
次は、ヒジキの炒め煮を使って、ねぎやらっきょうと一緒に巻いた海苔巻き。お酒のつまみにも◎。
ヒジキはマヨネーズとの相性も良いので、サラダのトッピングにもおススメ。サラダで使う際は、戻したヒジキに熱湯をかけ、さらに冷水にとってしっかり水気を切ってから。手軽に栄養補給ができるうえ、レモン汁をかければ鉄分の吸収率がアップ!
「ヒジキの海賊汁」は、水で戻していない洗浄のみのヒジキを水から煮て、豆腐や油揚げ、ネギを入れてみそ汁にします。朝食の時短メニューとしても助かります。
なぜ11月20日が「いいかんぶつの日」?
11月20日は「いいかんぶつの日」です。ヒジキのほかに昆布や鰹節といった海産物、干ししいたけや切り干し大根、高野豆腐といった農産物が、かんぶつ(干物・乾物)です。天日干しでうま味が凝縮され、日持ちするほか、食材を切らした時のお助けの一品としても欠かせない日本の伝統食品です。
スーパーや食品会社でつくる「日本かんぶつ協会」のホームページによると、「いいかんぶつの日」を定めた由来について、「『干物』の『干』が『十』と『一』、『乾』が『十』『日』『十』『乞』でそれぞれ成り立っているのを組み合わせて『11月20日にかんぶつを乞う』と読むことができるため」と記しています。
ちょっと強引な気もしますが、これを機会に、常備菜としてのかんぶつの良さを見直して、ふだんの食卓に積極的に取り入れていきたいですね。
文/中島幸恵、漫画/うえやまとち
◆『クッキングパパ』とは?
福岡市博多を舞台に、商社の営業課に所属するサラリーマン、荒岩一味が家族や同僚、友人らに得意な料理の腕前を披露、食を通じて周囲の人々に笑顔とパワーを与える物語。作中ある料理のレシピは、定番料理からオリジナルメニュー、地元九州の郷土料理まで多岐にわたり、詳細なイラストとポイントを押さえた簡潔な説明はいま、すぐ作りたくなると好評を博している。 週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で1985年から連載している人気シリーズで、2022年10月現在、単行本は163巻。