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蕎麦屋のメインと言えばもちろん蕎麦。けれども蕎麦より前に楽しみたい一品料理からも目が離せない!定番から、創意が光るオリジナルメニューまで……蕎麦前が旨いお店を集めました。

粋な江戸っ子文化 蕎麦前という楽しみ

蕎麦前で飲(や)る。魅力的な響きである。ご存知のように江戸っ子の粋な蕎麦の楽しみ方として生まれたのが蕎麦前だ。注文を受けてから蕎麦を打っていた江戸時代の蕎麦屋では、蕎麦が出てくるまでに時間がかかる。

そこで江戸っ子はちょっとしたつまみで酒を飲みつつ蕎麦を待った。さっと飲んでさっと蕎麦を食べたら去る。その潔さが江戸っ子たちの粋だった。いやあ、かっこいい。

この「粋」に憧れて、蕎麦屋で酒を飲んでいるとなんだか大人になったような気がしてくる。しかし「粋」にはルールがつきもの。私なぞはついつい飲みたい酒が多くあり長居してしまうが、「蕎麦屋で長っ尻は野暮」なんて言葉もある。実際はどうなのか。

今回取材した店の店主たちに聞くと、皆口を揃えて「決まりはない」と言う。メインの蕎麦をおいしく食べて欲しいのはもちろんだが、それを除けば、好きに飲んでもらうのが一番。自由でいいと。良かった!!

板わさ、蕎麦味噌、天ぬき、玉子焼き、鴨に焼鳥、さらに季節の惣菜たち。選り取りみどりの料理たちから好きなものを選び、好きな酒と楽しむ。今日はどんな組み合わせで飲ろうかと考えるだけでワクワクする。

『さ和長』 @広尾

メニューに並ぶ一品料理は50種類以上。築80年〜90年にもなる趣深い建物の中は庶民的でくつろげる一方、料理はどれもレベルが高い。

玉子焼 1000円、板わさ 700円、焼き味噌 1000円、鴨焼き 1500円

『さ和長』玉子焼 1000円 板わさ 700円 焼き味噌 1000円 鴨焼き 1500円 焼き付きの板わさは香ばしく酒に合う!

それもそのはず、料理を手がけるのは日本料理で修業を積んだ職人。玉子焼きはふわっとしているのに中はシルキー、蕎麦味噌は甘みと塩気のバランスが良くまろやか、鴨焼きは香ばしさの中に柚子皮が清涼感を加えている。それぞれが丁寧に、手間暇かけて作られた味がするのだ。これらをつまみに飲む喜びよ……。さあ今日はあなたも蕎麦前を楽しもう!

【蕎麦前の作法1】

「日本酒はどんな食材にも合う」とは店長の大原さんの言。同店では飲みはじめに最適な「武勇」のスパークリングから季節のひやおろしまでと、取り揃えが豊富。何を飲もうか迷った時には、とりあえず日本酒を飲んでみるべし

『さ和長』

[住所]東京都港区南麻布5-15-11
[電話]03-3447-0557
[営業時間]11時半〜14時、17時半〜21時半(土・日は〜21時)
[休日]祝
[交通]地下鉄日比谷線広尾駅1番出口から徒歩1分
※年末は28日まで営業(年越し蕎麦のテイクアウトあり[要予約])。年始は4日〜

『おそばの甲賀』 @西麻布

旬の味で満たされる蕎麦前コース

季節を楽しむのも江戸の粋というものだ。コンクリートジャングルで暮らしていると、つい四季の移ろいが目に入らなくなってしまうが、同店にくれば季節感を存分に味わうことができる。

例えば4品から成る蕎麦前コース。この日は今の時期、特に香り良く柔らかい春菊のおひたしや板わさでお酒を飲み始め、お腹が動き始めたところに旨みと塩辛さがまた酒に合うカラスミ蕎麦、お次にエビの天吸いのあつあつツユをずっと啜り、歯切れ良いマグロの山かけでちょうど酒を飲み切ったころにコースが終了。

蕎麦前コース 3300円

『おそばの甲賀』蕎麦前コース 3300円 前菜3種盛り (奥)カラスミ蕎麦 蕎麦前コースの4皿

そして最後にはまさに旬を迎える牡蠣の蕎麦をいただく。ぷりぷりの身にまとった衣はさくっと香ばしく、しっとりツユを吸ってもそれがまた旨い。店主の甲賀さんは「四季に沿った食材を使うことでお客さんに満足してもらいたい」と言う。

その粋な心遣いで、コースのうち3品は季節ごとに食材が変わり蕎麦もまた同様に変化する。その心意気に、その味に、今宵は胸がいっぱいで帰宅できそうだ。

【蕎麦前の作法2】

「やっぱり一番食べてほしいのは蕎麦」と店主の甲賀さん。蕎麦前コース以外にも魅力的なメニューを前に、つい食べ過ぎてしまいそうになるがそこは我慢! 〆の蕎麦のために余力を残しながら蕎麦前を楽しもう

『おそばの甲賀』

[住所]東京都港区西麻布2-14-5
[電話]03-3797-6860
[営業時間]11時半〜14時半(14時LO)、17時〜20時半(20時LO)
[休日]火・水
[交通]地下鉄日比谷線ほか六本木1C出口から徒歩10分
※年末は31日まで営業(年越し蕎麦のテイクアウトあり)、年始は5日〜

『そば季寄 武蔵屋』 @代々木上原

昔ながらの蕎麦屋を居心地よく進化

蕎麦前で個人的に欠かせないのは、居心地の良さ。特にひとりの時は周りが騒がしくてもゆっくり酒を飲めないし、かと言って上品すぎるとそわそわしてしまって落ち着かないのだ。そんな方に朗報。ひとり蕎麦前飲みに最適な店が代々木上原にあった。

創業70年になり「昔ながらの蕎麦屋」と自らを称する同店だ。メニューにはよく親しんだ家庭的な料理が並び、それにもほっとするのだが、何より何を頼んでも旨いという安心感がいい。

牡蠣フライ 880円、お造り三点盛り 2310円、焼き鳥(タレ) 990円、茄子の揚げびたし 550円

『そば季寄 武蔵屋』(左奥から時計回りに)牡蠣フライ 880円 お造り三点盛り 2310円 焼き鳥(タレ) 990円 茄子の揚げびたし 550円 奇をてらわず、丁寧に作られた料理たち

季節限定の茄子の揚げびたしは優しいダシが染みてジューシー、刺身はその日の朝に豊洲から仕入れているだけあり新鮮そのもの。カキフライもカリッと食感はもちろん身がプリッと濃厚、焼鳥などは塩麹でしっとり柔らかく味はよく染みていて皮目は香ばしい。

しかも、混在時でなければ、ベテラン女将がそれらの料理を出す順番まで、実に良い塩梅で調整してくれる。身も心もまかせ切って酒と料理に浸ることができるのだ。どうやらまた通いたい店を発見してしまった。

【蕎麦前の作法3】

「蕎麦前をゆっくりいただきたい方はお声がけください」と話す店主の成田さん。通常はお料理が出来次第提供しているが、調整も可能とのこと。のんびり蕎麦前を楽しむなら店とのコミュニケーションも大事だ

『そば季寄 武蔵屋』

[住所]東京都渋谷区上原1-22-3 むさしビル1階
[電話]03-5478-0766
[営業時間]11時半〜15時、17時〜21時半(21時LO)
[休日]日
[交通]小田急線代々木上原駅東口から徒歩2分
※年末は31日まで営業(年越し蕎麦のテイクアウトあり[要予約])。年始は6日〜

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おとなの週末Web編集部
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