偶然の産物が裏メニューになり、仙台・宮城の新名物へ
筆者が住む宮城県北部でも、中華料理店のメニューで「仙台マーボー焼そば」を見かけるようになったのはいつからだろう。……というか、私、食べたことあったっけ? 本当に宮城のご当地グルメなの?? 仙台マーボー焼そばに失礼なことばかりを考えながら調べてみると、どうやら「仙台マーボー焼そば推進委員会」なる組織があるらしい。
仙台マーボー焼そば推進委員会委員長の大柳憲太郎さんが代表を務める『中国菜館 まんみ 泉中央店』は、1972年の創業。麺、飯、点心など40種類を超えるメニューを揃え、昔から仙台市民に親しまれてきた。ホルモンラーメン、塩スーラータン麺など、ここでしか味わえないオリジナルラーメンも人気を博す。
「当時では珍しかったジャージャー麺や、具材としては考えられなかったホルモンを使ったラーメンを味わってほしいと、私の父が始めた店です。職人気質の父は、食材をそのまま使うことはほとんどなく、何かしらの手を加えてオリジナルの味に仕上げていました」と、2代目の大柳さん。
それでは、大柳さんが仙台マーボー焼そば推進委員会委員長を務めるまでには、どのような経緯があったのか?
「1972年の開業間もない頃、うちは五目焼きそばが好評をいただき、看板メニューになっていました。ある日、ふだんより注文が入らなかった五目焼きそばの麺が残り、それでまかないを作ろうということになったんです。
たまたまその時、注文の入ったマーボー豆腐を作って余ったため、五目焼きそばの麺にかけて食べていたところ、店内にいたお客さんの目に止まり、『旨そうだから作ってよ』と言われた。それがメニューになったというわけです。ただ、五目焼きそばの人気の影に隠れた“知る人ぞ知る”的なメニューで、出るのは1日1~2食でしたね」
ところが、2013年にあるテレビ番組で「仙台市民のソウルフード」と取り上げられ、『まんみ』のみならず仙台市内の中華料理店に問い合わせが殺到する。
かねてから「若い世代に、ラーメン以外の中華料理を食べてもらうためにはどうしたらいいのか」と考えていた大柳さんは、仙台マーボー焼そばを一過性のものにせず、仙台の新たな名物料理として育てていくことを宮城県中華飲食生活衛生同業組合に提案した。
「というわけで委員会を立ち上げることになり、言い出しっぺの私が初代委員長になっただけです(笑)。
新名物にしようとは決めましたが、〇〇を具材に使わないとダメとか、委員会で専用調味料を開発するとか、そんな面倒なことはしないで、すでにある味をブラッシュアップするなり、大事にしていきましょうと話し合いました」
仙台マーボー焼そば推進委員会が定めたルールは、以下の3つ。
1.麻婆を使い、具は豆腐に限定しない
2.麺は焼くか揚げたものとする
3.宮城県中華飲食生活衛生同業組合の認定人(2022年6月現在、1名)が認定したものとする
委員会発足から9年たった現在は、認定店が40店舗を超え、提供店は100店舗以上。エリアも仙台市内にとどまらず県内全域に広がっている。