ティモンディ前田裕太の“おとな”入門

【ティモンディ前田裕太の“おとな”入門】第26回 「旅」編(2)「大人になる=できるようになることが増える」ではない、と思い知ったスイスへの旅

ティモンディ前田裕太

お笑いコンビ「ティモンディ」前田裕太さんの、「目指せ、理想の大人」をメインテーマに掲げた連載コラム。30代に突入した前田さんが「大人」を目指して過ごす日々を、食・趣味・仕事など様々な視点で綴ってくださいます。連載は、第1…

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お笑いコンビ「ティモンディ」前田裕太さんの、「目指せ、理想の大人」をメインテーマに掲げた連載コラム。30代に突入した前田さんが「大人」を目指して過ごす日々を、食・趣味・仕事など様々な視点で綴ってくださいます。連載は、第1・3木曜日に更新です。「(理想の)大人ってなんだろう?」を一緒に考えながら、前田さんの成長を見守りましょう!
数年前、スイスに行った前田さん。しかしいざ振り返ると、移動中の辛かった思い出が強く記憶に残っているようで… 「年齢を重ねれば重ねるほど、できるようになることが増えるわけではない」ということを考えたお話です。

海外なんて…と食わず嫌いしていたけれど

スイスへ行ったことがある。

2019年、相方の高岸がファウストボールという競技の日本代表に選ばれ、世界大会に行くことになった。

その開催地が、スイスだったのだ。

ファウストボールと言われてもよく分からない人が大半だろうけれど、私もそのうちの一人だった。

どんな競技なのか高岸に聞くと「絆を育めるスポーツ」という、全てのスポーツに言えるような答えしか返ってこなかった。

よく分からなかったので独自に調べてみると、どうやらワンバウンドありのバレーボールのようなものらしいが、屋外で行われ、コート内の人数も5人であるらしい。ただその歴史は古く、世界最古のスポーツという説もあるのだ。

まだ我々にテレビの仕事が何もない時、私がネタを作っている間、高岸はせっせとファウストボールの練習会に参加していて、あっという間に日本代表に選出されるまでになっていたらしい。

まあ変な話なのだけれど、ここは本題ではないので割愛させていただきたい。

私はというと、ファウストボールというスポーツとはなんら関係もないのだけれど、相方の日本代表としての姿を見に行くという口実で一緒にスイスへ行くことにした。

面白そうだし。

大学生だった頃、海外を見てきた連中が「世界見てきた方がいいよ〜価値観が変わるよ〜」だなんて口にしていたことに対して、何を言っているんだ、と斜に構えて聞いていた。

まずは日本を知ってからだろ、お前のあやふやな価値観なんて、何を見たところで変わるだろ、と悪態をつきながら、ほぼダサい奴らだと思っていた。

そんな偏見も、年齢を重ねるにつれて薄くなっていく。

もしかしたら少しは世界が変わるのかも、そんな素敵な体験が出来るのではないか、だなんて頭の中の私が囁いてきた。

今までは興味すらなかった国外も、魅力を感じたいと期待している自分がいるのは、歳をとると丸くなる、というけれど、それを実感した瞬間だった。

長距離移動がこんなにも辛いとは…

ただ、いざスイスへ出発してみると、しんどい、辛いと思うことが多かった。

特に、飛行機を12時間以上乗り継いで、スイスに到着したのだけれど、その移動が堪えた。

身体もガチガチ。

身動きも満足にとれない環境で精神的にも辛かった。

もちろん、機内では映画も見られる環境だったのだけれど、密室で外に出られない環境、というものが精神的に私を追い詰めた。

ちょっと外の空気を、だなんて窓を開ければ、風圧で機内から外へ吹っ飛ばされるし、そもそも窓も開かない。

家から外へ一歩も出ない日だってあるのに。

機内もそんな日と何も変わらないように思えるけれど、外へ出られるけれど出ない、というのと、出られない、というのでは精神的に雲泥の差が出るのが不思議なものだ。

大学生の頃は、長時間の移動なんてへっちゃらで、新宿から愛媛への10時間以上の夜行バス移動も屁でもなかったのに。

飛行機だって、車だって、長時間の移動は比較的経験してきたけれど、ここまでの辛さを感じなかったのは、きっと気分が悪くなれば途中下車もできるし、パーキングエリアで休憩をすることができたからだろう。目的地に到着するまでこの環境で居続けなければならないという事実がより私を苦しめたのだ。

なんだか、歳をとればとるほど、肉体的、精神的な負荷に耐えられなくなってきているような気がする。

「大人になる=できることが増える」ではない

積み重ねてきた経験が人を成長させてくれるし、大人になればなるほど人として進化していくものだと思っていた。

人は歳を重ねるほど大人になり、成長していく。

それが、違ったのだ。

このしんどい思いを帰りもしなければならないのか、と、帰りのしんどさまで考えてしまい、余計に行きの機内では辛く感じてしまった。

今から引き返せないかなあ、と何度思ったことか。

何も知らなかった若い年齢の時であれば、勢いで乗り越えてしまえたのだろうけれど、色々なことを知れば知るほど、余計なことまで想像が及んでしまい、苦痛というものに耐え難くなってくる。

大人になっていくことは、良いことばかりだと思っていたけれど、そうではない部分を痛感した。

スイスに着いたら、言葉が通じないという非日常の空間の中で、素晴らしい建築物や景色を楽しませてもらった。

確かに楽しかった。

けれど、これを数年前に経験していれば、もっと苦痛も少なく済んだに違いない。

旅は、若ければ若いほどいい。

特に海外は。

思い立ったら、なるべく早く行った方がいい。

そう感じさせられるスイスへの旅だった。

前田裕太(まえだ ゆうた)
1992年8月25日生まれ、神奈川県出身。愛媛県の名門、済美高校野球部の同期である高岸宏行とのお笑いコンビ「ティモンディ」のツッコミ担当。趣味はサッカー観戦、読書。テレビ番組で画力を披露したり、複数メディアでコラムを執筆するなど、マルチな活動で注目を浴びている。

ティモンディ
高岸宏行・前田裕太によるお笑いコンビ。コンビ結成は2015年、グレープカンパニー所属。高岸のポジティブなキャラクターや、二人の野球経験と身体能力などがバラエティ番組で引っ張りだこに。コンビの野球経験をいかしたYouTubeチャンネル『ティモンディチャンネル』の登録者数は約28万人。

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